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日本の市場で行き詰まった人に「セカ就」という選択肢

   今回も「セカ就!」する人の一例をお伝えします。これまでは、大学卒業したての若者の話でしたが、今回の登場人物は脂の乗ったサラリーマンです。

   彼は、日本の市場に限界を感じています。日々下がる自社の売上。工場の閉鎖が相次ぐ取引先。ジリジリ下がる給料……。10年以上続けていた「社畜」仕事は忙しく、身体にも負担はかかっているけど嫌いではない。

責任の重さと給料のバランスが取れない現状を打破

日本よ、コレが「アジアの平均点」だ!(台北にて)
日本よ、コレが「アジアの平均点」だ!(台北にて)

   経験値も上がり、権限も増え、やれることの範囲はどんどん広くなっています。しかし、給料はその責任の重さとバランスがとれなくなっているし、業務時間は「過労死ライン」を遙かに上回っています。

   経済がどんどん縮小していく下りエスカレーターの日本で、このまま仕事をしていていいのか……。そんな彼の前に現れたのが「アジア海外就職」です。

   取引先の工場が移転していく先はアジア。国民一人当たりのGDPや国民の賃金はうなぎ登り。日本とは真逆の上りエスカレーターです。普通に仕事をしていれば成功できるのではないか。そんな衝動が彼を動かします。

   ただ、ここに一つ落とし穴があります。「普通に」仕事をするためのハードルは、日本とアジアでは基準が違うのです。契約を締結しても、ちっとも守らない取引先。どんなに単純な仕事でも、信じられないくらい低レベルなミスをする従業員。日本では考えられないくらい理不尽にねじ曲がった政府の規制。

   仕事を進めようと思い、一歩進めば壁にぶつかり、一歩進めば毒の沼地に足を取られる。「普通に」仕事を進めるのは至難の業なのです。

   とはいえ、上りエスカレーターにあるというのは事実です。日々給料が上がる若者だらけの市場は、「新しいモノが欲しい」という欲望に満ちあふれています。ここに、彼らの欲しがる製品を投入できれば、莫大な量の商品を売ることができます。

   例えば、インドネシアでは日本車のシェアは90%を超えています。実際、「世界最凶」といわれる渋滞に巻き込まれると、周りは日本車だらけであることに気付きます。

日本の「普通」を維持できればアジアで評価される

   そんなビッグディールを目指して、日本を含む様々な国の企業が参入し、参入企業相手の仕事も日々増大していきます。

   日本レベルの「普通」を達成するのは難しいけれど、障害を乗り越えて「普通」を達成すればチャンスをつかめる市場でもあります。顧客の知りたい情報を的確に説明したり、取引先が満足する品質と納期を提供したり、現地人スタッフが効率的に働けるような仕組みを作る事ができれば、自ずと責任ある役職に就くことができるようになります。

   日本の会社では「平均点」かもしれませんが、市場全体が伸びている中では、平均点を維持することができれば高く評価される可能性が高いです。きっと、給料の額もその評価についてくることでしょう。

   自分のキャリアデザインを考えるとき、このようなメリット、デメリットを考え、自分は日本で働き続けるべきか、新興国に乗り出していくべきかを考えてみるのはいかがでしょうか?

   日本で培ったハイレベルの知識と、アジアで「普通」の仕事がこなせる胆力があれば、きっと大きな仕事を成し遂げることができると思います。(森山たつを)

※新刊「セカ就! 世界で働くという選択肢」(朝日出版社刊)では、世界で働く人たちの実態をリアルな小説にまとめました。第5章は日本の超大手メーカーで仕事の先行きに疑問を感じ、「日本が揺れたあの日」をきっかけにセカ就!を目指す37歳男性のお話です。興味のある方はご一読いただけたらと思います。