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再就職に悩む「うつ病経験者」 積極採用する会社も現れたが

   うつ病を克服して就活や再就職を目指す人たちにとって「朗報」かもしれない。医療系の情報サービス会社が「うつ病経験者募集」との求人を出したのだ。

   ネット上にはしばしば「うつ病だったことを就職面接で打ち明けるべきか」という相談が書き込まれている。企業側から「歓迎」のサインを出してくれれば心強いだろう。

期待の社長は「メンタルヘルスに強い医師」

病気を克服した人は差別せず仕事に復帰できてしかるべきだろう
病気を克服した人は差別せず仕事に復帰できてしかるべきだろう

   この会社は2011年6月に設立された「iCARE」(東京・港)。電子カルテをクラウドで提供するといった、医療関連の情報サービスをネット上で手掛ける。共同最高経営責任者(CEO)は、内科・心療内科医とMBAを取得した人材サービス業務経験者が務める。2013年8月29日、同社のフェイスブックに、

「募集:うつ病経験のあるWEBエンジニアの方大募集」

と掲載された。「弊社代表が医師でありメンタルヘルス領域に強みを持っているため、今回雇用するエンジニアもうつ病等精神疾患経験者の方を積極的に採用したい」との理由だ。

   求める人物像として「一緒に楽しく仕事ができそうであることが第一」とし、ウェブのアプリケーション開発をはじめエンジニアとしての業務経験を条件としている。ここでも改めて「過去精神疾患(うつ病等)を経験されている方」と繰り返した。

   この「求人票」は、フェイスブック内で多くシェアされた。「新しい働くカタチかな?」「こういうのいいなぁ」といった肯定的なコメントも付いている。

   共同CEOの飯盛崇氏は、日経情報ストラテジーのインタビューに「当社の理念やサービスに直結する取り組みとして踏み切った」と語った。9月29日にはフェイスブックが更新され、採用が内定したとの報告があった。

病気を克服して仕事に復帰できた人も

   うつ病に苦しみながら、克服して就職し、さらに病気の経験を生かす――。ネット上にはこのような体験談が載っている。

   IT企業在職中に3か月の休職を余儀なくされた佐藤真佐志さんは、現在は独立してセミナーや講演、コンサルティング活動に忙しい日々だ。

   日経BP「メンタルヘルスとリワーク」2011年9月6日付のインタビューで佐藤さんは、休職後に復帰した当時を振り返って、出世競争など気にせず「誰にもこびない、評価なんか気にしない」という意識に変化したという。

   さらに自身の病気体験を踏まえて産業カウンセラーの資格を取った。人脈も会社勤務時代とは様変わりし、その後の独立に道をつけた。

   うつ病の社会復帰支援を手掛ける「リヴァ」(東京・豊島)に勤務する松浦秀俊さんは、学生時代に「双極性障害2型」、いわゆる躁うつ病と診断されたという。病気の影響で仕事が長続きせずに「8年間で現在が5社目」だ。

   前職を退職した際、リヴァのサービスを受けた縁もあり、同社に入社したという。現在は広報担当で、自らのうつ病体験と「社会復帰支援サービスを受けて支障なく仕事に携わることができた」という経緯を交えて、会社の「広告塔」となって事業をアピールする。

採用面接では「病歴」を明かすべきか

   とは言え、うつ病で一度仕事をやめ、再就職を目指す人にとっては病歴を打ち明けるかどうかは悩みどころのようだ。

   インターネットのQ&Aサイトでは、うつ病経験者の質問者が就活の悩みを打ち明けていた。前職をやめた理由を問われて「うつ病で仕事を続けることができなくなった」と答えると、「またうつ病をぶり返してしまうのかが不安」と言う面接官が8割だったとして、「隠した方がいいのか」と相談している。

   回答者たちは「完治していれば、申告する必要はない」「自身に不利に働く可能性がある事柄を伝えても、何の得にもなりません」という声があがった。

   しかし、反対に採用担当に携わる人物からは「仮に当社にご応募頂いたと仮定しましたら、正直におっしゃって頂きたい」と書いた。判断は難しそうだ。

   2018年には改正雇用促進法が施行され、企業に精神障害者の雇用が義務化される。それまでに企業側の精神障害者受け入れの仕組みがどれだけ整うかが注目される。