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外国人留学生にスルーされる日本企業 彼らが感じている「大きな違和感」とは

   「ユニクロ」のファーストリテイリングや楽天をはじめ、グローバル化を念頭に外国人を積極採用する企業が増えてきた。民間の調査によると、日本で学ぶ外国人留学生を採用したいと希望する割合は、2014年度には5割にまで達する見込みだ。

   ところが、外国人留学生の側は日本での就職を望まなくなってきた。すれ違いが起きている背景に、何があるのか。

高度な日本語力を求める企業が7割以上

留学生とのミスマッチは解消するか。
留学生とのミスマッチは解消するか。

   人材コンサルティングを手掛けるディスコは、全国の企業を対象に「外国人社員の採用に関する企業調査」を実施し、2013年10月2日に結果を発表した。回答を寄せた539社のうち、従業員数1000人以上の企業は123社だ。

   2013年度に外国人留学生を採用した企業は、全体の35.2%だが、2014年度に採用する予定と答えたのは48.4%と、半数近くに上った。特に従業員1000人以上の企業では69.0%と顕著になっている。

   2013年採用者の配属先は、「日本での勤務」が8割、また「日本勤務だが将来は海外を予定」が21.1%だった。一方で海外勤務は2.1%にとどまった。また外国人留学生に求める資質のトップは文系、理系とも「日本語力」で、「異文化対応力」「コミュニケーション力」がこれに続く。期待される日本語力は「ネイティブレベル」「ビジネスレベル」を合わせると、文系で75.9%、理系が73.5%と極めて高い。実は採用による社内での問題として挙げられた項目で「言葉の壁による意思疎通面でのトラブル」が50.5%と高かった。日常業務を考えた際に、言語力は採用を左右するポイントになっているといえそうだ。

   「リクナビ」や「マイナビ」を見ると、外国人採用をアピールする企業が多いのが分かる。すでに世界展開しているところはもちろん、今後のグローバル化に備えて人材を確保したい会社もある。商社やメーカー、食品、医療、石油化学とあらゆる業種がこぞって求人を出している。東日本高速道路(NEXCO東日本)などは、一見すると国内事業で完結していそうな印象だが、マイナビに掲載された求人情報によると、同社には海外で道路事業に参画したり、技術支援したりする海外事業部があり、そういった場で活躍できる外国人留学生を採用したいとのことだ。

   リクナビでは、各社に勤務する外国人の体験記が読める。損保会社に勤める中国出身の女性は、日本語は流ちょうながら顧客から「病人への気遣いが足りない」と指摘されたことが勉強になったと語っていた。

日本人の就活生と等しく扱う企業も

   日本企業の外国人留学生に対する求人は旺盛だ。ところが留学生側は、是が非でも日本で就職したいとまでは思っていない。

   独立行政法人の労働政策研究・研修機構は2013年3月29日、「留学生の就職活動」というリポートを公表した。その中に「外国人留学生の卒業後の進路希望」に関する分析がある。2005年度から2年おきに統計を取っているが、「日本での就職希望」と答えた割合は2007年度に61.3%となったものの、2009年度は56.9%、2011年度は52.2%と低落傾向なのだ。

   ひとつの理由として、「日本企業の新卒採用試験が将来の日本企業の管理職候補者となる資質等が課題であり、これらが外国人留学生の日本企業に就職・勤務する上での大きな違和感につながっているとの指摘がある」という。また、留学生が希望しているのは「海外業務」が最も多く、2011年度で46.8%に達している。一方でディスコの調査では、日本企業の8割が採用した外国人の配属先を日本国内としていた。自分の希望がくみ取られにくい点も、日本での就職を選択肢から外す原因になっている可能性がある。

   留学生向けの「特別枠」は設定せず、日本人の就活生と等しく扱う企業も少なくない。ウェブサイトからエントリーする際も「英語ページ」などではなく、一般学生向けと同じページに誘導する大手企業は何社もあった。入社後、業務に支障が出ないような高い日本語力を求めるだけに、ある意味で当然の処置かもしれないが、外国人にとっては日本語ネイティブと同じ土俵で就活を勝ち抜かねばならず、ハンディがあるのは事実だろう。

   企業にとっても、外国人留学生は日本人学生と職に対する考え方が違う点を認識した方がよさそうだ。国によっては転職が当たり前で、キャリアアップにつながる好条件を打診されれば別の会社に移る人が出てくるかもしれない。日本人には少ない「離職リスク」にあらかじめ備えておくのも大切だろう。