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日本人は「世界で1番、ムダに学歴が高い」? 「東大卒・35歳以上で年収280万円」が生まれる理由

   経済協力開発機構(OECD)の発表によると、日本人は仕事で必要とされる学歴よりも自分の学歴が高いという人が3割にのぼり、OECDの平均値を大きく上回るという。

   せっかくの高学歴でも職場で求められる能力と直結しないのは不幸だ。「一流大学卒」が低年収にあえいでいる事例も散見される。

企業は潜在力を求めて採用する

学歴と仕事は関係あるか?
学歴と仕事は関係あるか?

   OECDの「国際成人力調査」で、日本人の全体回答者5000人のうち8割にあたる人がこの項目の調査対象となり、仕事に必要な学歴より自分の学歴のほうが高い「オーバークオリフィケーション」の人が31.1%に達したと、2013年10月24日付の朝日新聞朝刊が報じた。この数字は参加23か国・地域の中で最も高い。日本に続くのは英国の30.2%、韓国21.2%、米国19.7%だった。

   なぜこのようなことが起きているのか。記事では労働政策研究・研修機構統括研究員、濱口桂一郎氏の説明を引用している。日本では就職後に仕事を覚えるのが一般的で、企業は潜在力を求めるためオーバークオリフィケーションの人が多くなるというわけだ。一方で就職のシステムから漏れると、それなりの能力があっても発揮する場が与えられない社会構造だとも指摘する。

   学んだ知識を仕事に活用できないのは確かに損失だろう。逆に、業務内容で求められているスキルが、大学や大学院で身に着けたものと必ずしも一致しないのも問題だ。例えば「マイナビニュース」は2013年8月14日、会員500人に実施したアンケートで、「学歴と仕事は関係あると思うか」と質問したところ「はい」と答えた割合は37.8%にとどまった。「いいえ」とした6割以上の理由を読むと、オーバークオリフィケーションの問題が浮かび上がってくる。

   例えば高学歴でも「組織で足を引っ張っているような例を知っている」、「世間知らずでお客様に嫌われ仕事が全くできない人が多い」、また、仕事ができる先輩よりダメな自分の方が学歴だけは上だと落ち込む人もいる。

   「勉強した分野と全く違う職種に就くこともある」と、ミスマッチも起きている。仕事の実務面で重要だとされる「要領と人あたりの良さ」「お金を稼ぐセンス」は、学歴とは別物という指摘も見られた。

学歴生かせない仕事への転職は「パワハラ」が原因

   高学歴を仕事に生かせない、学歴効果が表れない――そんな人たちを「SPA!」2013年7月2・9日号で特集していた。名だたる名門校を卒業しながらも低収入にあえぐ35歳以上の人たちを取り上げたのだ。

   東大卒業後、就職先が見つからずに5年間ニートで過ごし、現在はシステム会社勤務で年収280万円の男性、京大大学院を出て国家公務員になりながら、「女湯のぞき」の疑いで現行犯逮捕、その後クビになっていまはバイト生活というエピソードもある。

   一方で、上司のパワハラに耐えられずに会社を辞め「人生がおかしくなった」という早大卒の男性。音響機器メーカーに就職したものの深夜までかかる残業を押し付けられ、手柄は横取りされて心身を病んでしまったそうだ。現在はビル管理会社だという。ストレスはないが年収が高いとはいえず、学生時代の友人とは「恥ずかしくて合わせる顔がない」と嘆いた。別の早大卒の男性は、鉄道会社子会社に入ったものの「72時間連続労働」を強制されたうえ、「早稲田出てるのに使えねぇな」といじめられてうつ病になったそうだ。

   誌面に登場したすべての事例がそうだとは限らないが、中には高学歴が現在の仕事内容とは無縁の人もいる。資格を得て独立を目指す人の場合は知力を生かせるだろうが、独立して自力で稼ぐまでには時間がかかる。先述の濱口氏の指摘にあった、一度就職システムから外れた人は、その後に能力を発揮する場が与えられないという厳しい現実が、重くのしかかってくる。