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「休めない」社員を、いかに休ませるか あの手この手の制度が登場中

   あなたの職場には、「休みます」と言える雰囲気があるだろうか。昨今の景気回復で残業が増え、休むどころの話ではない、という人もいるかもしれない。

   日本人の有休取得率は50%未満。周囲に迷惑がかかる、上司が休まないなどの理由から「休めない」社員たちを、いかに休ませるか。「ダラダラ仕事」をやめて生産性を上げようと、独自の取り組みを行う企業も出てきている。

「何かあったときのため」有休を半分以上残す日本人

休み、取りなさいよ…
休み、取りなさいよ…

   内閣府は2007年、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を掲げた。官民一体となって、長時間労働を見直そうというものだ。残業代などの人件費をカットしたい企業側の思惑もあり、「メリハリを付けた働き方」の重要性は広く知られつつある。

   一方で、日本人はどんどん休まなくなっている。厚生労働省の就労条件総合調査によると、日本人の年次有給休暇の取得率は、1996年の54.1%から、昨2013年には47.1%へと低下してしまった。

   なぜ「休まない」のか。労働政策研究・研修機構が、正社員3000人を対象にアンケートをとったところ、年次有給休暇を取り残す理由のトップは「病気や急な用事のために残しておく必要があるから」で64.6%。次いで、「休むと職場の他の人に迷惑をかけるから」(60.2%)、「仕事量が多すぎて休んでいる余裕がないから」(52.7%)、「休みの間仕事を引き継いでくれる人がいないから」(46.9%)、「職場の周囲の人が取らないので年休が取りにくいから」(42.2%)、「上司がいい顔をしないから」(33.3%)などとなっている(「年次有給休暇の取得に関する調査」、方法は郵送アンケート、2011年6月公表)。

   トップの「病気や急な用事のために残しておきたい」以外は、個人の問題というより、職場の体制、雰囲気の問題だ。それに、急な用事に備えたいからといって、半分以上も年休を残すのは「残し過ぎ」かもしれない。「休まないのが美徳」との考え方は根強いようだ。

人員を増やし、無駄な作業を洗い出し…

   だが、適度な休暇を取らなければ、疲労の蓄積で作業効率が落ちる。メリハリある働き方で業績を上げてもらうには、「休まない」社員をいかに休ませるかが重要だ、との考え方が広がりつつある。

   中には、パートを含む全社員が「25年連続、有休取得率100%」を実現した企業もある。北海道帯広市に本社工場を置くお菓子メーカー、六花亭だ。同社のモットーは「仕事も遊びも一生懸命」。観光庁の「企業の活力を引き出す30社の事例(2008年度)」にも取り上げられた。それによると、「社員を積極的に休ませる」との方針を掲げた当初は、現場の戸惑いもあったという。一時的には残業も増えたが、人員を増やし、無駄な作業を洗い出すことで「有休取得率100%」を達成できた。六花亭には、他にも、社員6人以上が集まれば、「社内旅行補助金」として旅行費用の80%(年間20万円まで)が支給される制度もある。社員旅行でコミュニケーションを円滑にしてもらおうとの意図もあるようだ。

   休暇を「自己啓発」に使えば、お金がもらえる企業もある。採用代行を手がけるツナグ・ソリューションズ(本社・東京)には、「勉強休暇」として、自己啓発を目的に年1回、最高連続5日間まで休める仕組みがある。勉強費として、最高10万円が支給されるという。

   こうした取り組みを見ていると、社員が「休みたい」と声を上げるというより、経営層がトップダウンで制度を作り、利用を促すことで、社員の意識が少しずつ変わっていくようだ。(KH)