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キリギリス社員を撲滅せよ

   メールの返信や、手間のかかる仕事、上司への報告などを、つい、先延ばしにしてしまう人は多いだろう。小さな「先延ばし」が、積もり積もって重大なミスにつながったり、「あの人はどうも、ダラダラしている」と、評価を落としたりすることにもなりかねない。最近では、全社をあげて、「先延ばしをやめよう」とスローガンを掲げる企業もある。

「先延ばし」は、つかの間の「快感」

メール返信は即、でしょ
メール返信は即、でしょ

   ウォール・ストリート・ジャーナル日本版の記事、「先延ばし癖を直すには気分転換の技術に目を向けよ」(2014年1月9日配信)によると、物事を何かと先延ばしにする人は、困難な仕事を前にして不安に駆られると、「フェイスブックのサイトを見たり昼寝をしたり、何か他のことをして気分を紛らわそうとする」ことが多いという。身に覚えのある人もいるかもしれない。

   こうした「先延ばし」には、心理学的な効果もある。プレジデント・オンラインのコラム、「なぜ、『明日からやろう』と毎日毎日思うのか?」(2014年9月29日配信)によれば、どんな人でも、面倒な仕事や、怒られるかもしれない報告などには、何らかのストレスを感じてしまう。こうしたストレスが一定レベルを超え、心理的負担が大きくなると、私たちは「先送り」して、緊張を緩和しようとする。つまり、先延ばしには、ストレスを減らす効果があるのだ。

   が、先のウォール・ストリート・ジャーナルの記事によれば、先延ばしグセのある人は、目の前の仕事から逃げて、つかの間の「快感を味わうための妥協」を繰り返していることになる。カナダのカールトン大学のティモシー・ピッチェル准教授によると、先延ばしを繰り返す人は、締め切りを前にして土壇場で慌てることになり、「もっと苦しむことになる」と言う。アリとキリギリスの寓話のように、嫌な仕事でも後回しにせず、さっさと取りかかった方が、結局は自分にとってプラスなのだ。

「メールは即レス」

   全社をあげて、「先延ばしグセ」を改めようとする企業もある。大手ポータルサイト、ヤフー(本社・東京)だ。日本経済新聞の記事、「ヤフー副社長が明かす、社員を『爆速』にする方法」(2014年9月6日配信)によると、同社では2年前から「爆速」のスローガンを掲げ、社員の意識改革を図っている。

   改革にあたって、ヤフーでは、目標の達成度合いを測る「KPI(重要業績評価指標)」の仕組みを、大きく変えたという。今までは、サイトの閲覧回数を表す「PV(ページビュー)」を四半期単位で評価していたのを、「1日単位」で評価するようにしたそうだ。副社長の川邊健太郎氏は、「KPIが1か月単位だと、『1か月の間に何とかしよう......』と、夏休みの宿題にも似た状態に陥ってしまう」と語る。これが1日単位になれば、毎日15時頃には、「今日の目標を達成するために何とかしなくては」と考えるようになり、「仕事にスピードとリズムが生まれる」。確かに、1日単位で目標を設定すれば、「先延ばし」はできなくなるだろう。

   川邊氏自身も、「爆速」たるために、メールの「即レス」を心がけているという。いわく、ソフトバンクの孫正義社長は、ヤフーの前社長に井上雅博氏を選んだ際、その理由を、「あいつが一番メールの返事が早いから」と言ったそうだ。孫氏自身も、メールの返事が「ものすごく早い」とか。やはり、ずば抜けて仕事ができる人は、「先延ばし」とは無縁なのかもしれない。(KH)