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「保育士」残酷物語 児童の親も「辛くなる」給与水準

   新年度(2015年)4月1日から、政府の「子ども・子育て支援新制度」が始まり、待機児童の解消などが謳われています。が、「保育園を作っても、保育士が集まらない」という話を、よく耳にします。

   以前、このコラムでは「介護士や保育士が、キャバクラ嬢になる理由」(2014年11月7日配信)として、保育士の待遇の問題を取り上げました。今回は、ツイッターで皆さんから寄せられた「リアルな声」をご紹介しながら、「保育の人材が集まらない」という問題について、もう一度、考えてみます。

「他に割のいい仕事はいくらでもある」という人も

せんせい、どこ?
せんせい、どこ?

   静岡新聞のニュースサイト、「アットエス」では、保育士不足の問題を、3回にわたって取り上げていました(「育む社会へ」2015年3月26日~28日)。記事によると、ある私立保育所に勤める保育士(27)の毎月の手取りは13万円台。40代後半の先輩は、勤続10年で、20年以上の経験があるのに、彼女の月給と約1万円しか変わらないそうです。「保育士を続けたいが、他に割のいい仕事はいくらでもある」と語る場面も。こうした内容を、ツイッターで紹介したところ、2000以上もRTされ、沢山の反応を頂きました。

   「ウチはかみさんが来年、職場復帰してもパートなので10万円以下。それと私のタクシーの歩合給と合わせて、なんとかチビすけを育て上げねばならない。そんな家庭もあります」という人もいれば、「まさに低賃金が理由で退職した保育士の知り合いが沢山います」という人も。「私の子供が行っている保育園は、0歳児クラスの担任が、今日で全員、退職か異動です。お給料を知ってるけど辛いです」という方もいました。

潜在保育士、20代の不満は「賃金」がトップ

   筆者が以前、書いた記事、「68万人の潜在保育士『子どもが好きだからこそ働けない』?」(エコノミックニュース、2013年9月13日)では、保育士資格をもちながら、保育士として働いていない「潜在保育士」について取り上げました。記事では、厚労省の調査(2011年)を引用したのですが、潜在保育士に聞いた「就業への不安要素(職場環境)」のトップは、「勤務時間」(40.3%)、「人間関係」(28.2%)、「雇用条件」(27.3%)です。しかし、20代に限ってみると「賃金」(35%)がトップ、次いで「勤務時間」「人間関係」(それぞれ30%)と、順位が入れ替わります。

   子供の命を預かる責任感、サービス残業などの重労働、それに見合う賃金が貰えない現実。特に、若い女性の場合、「自分の可能性は他にもある」と考えるケースが多いことは、想像に難くありません。他の産業(事務職や、それこそ「キャバ嬢」など)に、人材が流れてしまうのです。

   ツイッターでは、お子さんが保育士をされている(と思われる)方から、「賃金の低さ、拘束時間の長さ、預ける親との関係。保育士を持つ親として転職を助言したいくらいです」という声もありました。一方、子供を通わせている方からは、「子供の先生たちが辞めていかざるを得ない状況は、自分の子の将来にとっても悲しいものです」という声も。

   内閣府の資料(「子ども・子育て支援新制度について」2015年3月)を見ると、「保育の受け皿を増やす」意気込みは伝わってくるものの、保育士の待遇改善については、ほとんど記述がありません(職員処遇の改善「プラス3%」などと軽く触れている程度です)。最近は多くの産業で、女性の待遇を改善し、積極的に採用する動きがあります。保育業界は、待遇をよほど良くしない限り、人材が集まらないままでしょう。

   「人件費を上げるとコストに跳ね返るのでは」というご意見もありましたが、保育士は「労働集約型」の仕事ですから、どうしたって人件費がかかります。それを単なる「コスト」と見なしていると、いつまでも保育士不足は解消されません。お給料を上げて、かつ、同一労働同一賃金で、柔軟な働き方ができるのなら、保育士は魅力的な仕事だと思うのですが、いかがでしょうか。(北条かや)