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日勤、準夜勤、深夜勤の正循環シフト 歓迎派VS反対派、それぞれの言い分

   病院や製造業の現場など、24時間体制の職場では、1日を8時間ごとに分けた「3交代勤務」が用いられていることが多い。深夜に働いたと思えば翌週は早朝に出勤など、不規則な生活が強いられる体制だが、少しでも疲れにくいシフトの組み方として「正循環シフト」なるものが注目されている。

   実際に取り入れた現場では、「疲れが残りにくくなった」という声が上がっているようだが、一方で反対意見も少なくない。

「人間の生体リズムに合ったシフト」

メリットも多いけど・・・
メリットも多いけど・・・

   「正循環シフト」に注目が集まるきっかけとなったのは、「NHKニュース おはよう日本」の特集だ(2015年8月20日放送)。

   正循環とは、例えば8時から16時までの「日勤」、16時から24時までの「準夜勤」、24時から翌朝8時までの「深夜勤」の3交代制の現場で、日勤が続いた後は準夜勤、その次は深夜勤と、開始時間が日を追うごとに後ろ倒しになるようなシフトの組み方を指す。勤務と勤務の間が半日以上開くため、疲労を回復しやすいという。

   神奈川県立がんセンターでは、従来は看護師の勤務体制は深夜勤、準夜勤、日勤という順番のシフト(逆循環)だったが、11年から「正循環」を選べるようになった。

   正循環を選択した看護師は、それまでは車で帰宅途中に睡魔に襲われ、何度か路肩に乗り上げそうになったり、対向車線にはみ出しかけてしまったりということがあったそうだが、正循環にしてから体調が改善。

「休息の時間をしっかり取って深夜勤に入れるということは、疲労度ももちろん違いますし、8時間の勤務を終えた後も続けて家事ができたりっていうように、自分の体が楽になった」

と語っていた。

   番組の中で、労働科学研究所の佐々木司氏は、

「人間の生体リズムは24時間より長いんです。ですから例えば日勤から準夜勤、準夜勤から深夜勤に行くような、時計を遅らせるようなシフトが体に優しいんです」

と指摘した。

正循環の方が心臓発作のリスクが低くなる?

   さらに学術誌「サイコソマティック・メディシン Vol.45, No,5」(1983年10月)に掲載された海外の研究では、45人の警察官を逆循環と正循環のシフトで4週間ずつ勤務させ、血液中の心臓発作に関わる成分を調べたところ、正循環シフトで勤務していた人の方がリスクが少ないことを示唆する結果が出たという。

   一方で、現在3交代勤務の現場で主流なのは逆循環シフトだ。連休が取りやすいことで多く用いられているが、前出の神奈川県立がんセンターでは、1999年以降、他の病院で医療事故が相次いだことをきっかけに、現場の疲労が原因の一つと見て正循環に目を付けたそうだ。

   現在センターの病棟では8人が正循環を選択。体調が整ったことで、患者へのケアの質が上がったと感じている人もいるという。

   看護師で作る団体が2013年に公表したガイドライン(日本看護協会『夜勤・交代制勤務に関するガイドライン』)では正循環が推進されているほか、鉄鋼業など製造分野でも導入され始めている、という紹介で特集は締めくくられた。

「仕事前一睡もできない」報告も

   番組を見ていた人からは、ツイッターで

「前倒しのシフトより正循環のシフトの働き方の方が疲労回復しやすいと思うよ」
「今朝、NHKで看護師が正循環のシフトで働くのが珍しいとかやってたが、どう考えても逆循環勤務とか無いわ・・・。連休がとれるメリットよりデメリットの方が多すぎるだろう。あぶねぇよ」
「正循環シフト、私もやらせていただきたい」

など、正循環を推奨する声が上がった。

   一方で、実際に自身の職場で正循環が採用されている人からは、

「やっぱり正循環の入りは寝られない~ 一睡もできず」
「深夜明けで明日日勤なのですが、昼間爆睡してしまい最悪の睡眠サイクルです。誰?深・日・準の正循環が良いって言ったの!」
「深夜帰ってから寝すぎて明日日勤なのに夜中、目がギンギン」

と、睡眠の質が下がったという報告もみられた。

   まだまだ多くの検証が必要なようだ。(MM)