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就職「通年採用」の評判 学生にとって「天国」なのか

   経団連の指針では、来(2016)年から、面接の「解禁時期」が「4年生の8月」から「6月」へと早まる見通し。ここ数年で、コロコロと変わるスケジュールに混乱する現場からは、「そろそろ新卒一括採用の仕組み自体を、見直したほうがよいのでは」との意見も、目立ってきている。

   「経済同友会」の小林喜光・代表幹事は15年11月12日、記者会見で「必要な時に必要な人を採るのは、世界の常識」と発言。続けて、現在の「新卒一括採用」ではない「通年採用へのステップとして、もっと知恵が出ないものか」とコメントした。

「一括採用」へ怒りの声

通年採用って、どうよ?
通年採用って、どうよ?

   ツイッターでは、学生らしきアカウントが、「就活めんどくさいなぁ。新卒一括採用がイヤ。入るのは1社なのに、複数社同時期に面接して、いくつも内定をとるシステムのどこに合理性があるんだか・・・。しかも、かなりの金も時間もかかる。もったいねぇ!」とか、「面接に手応えないし、落ちてるわwwww日本の新卒一括採用っていうクソシステム」など、怒りのつぶやきをしているのが見つかる。こうした若手の声は、定期的に盛り上がるようだ。

   企業のなかには、採用改革を進める向きもある。楽天では、15年1月から、開発職の採用で「新卒採用の枠組み」を廃止し、新卒・中途採用の「通年採用」を開始することを決定した。多様な価値観を持つエンジニアを、世界各国から採用するためだ。楽天は「これにより、より多くの優秀なエンジニアが集まることを期待しています」とコメントしている。

   通年採用で、競争が激化する可能性もある。ツイッターでは、「新卒一括採用を非難しまくる人には是非その良さを考えてみてほしい。構造問題とは別にして。僕はアメリカのような実力実績主義にぶちこまれるのは正直怖い」という、若者からの投稿もあった。

「良い面は残して欲しい」の声も

   朝日新聞では15年4月16日、「(耕論)新卒一括採用の死角」と題した特集を組んでいた。記事では、脳科学者の茂木健一郎さんと、人材コンサルタントの常見陽平さんにインタビューしている。

   茂木さんは、ハッキリと「日本も欧米のように通年採用にシフトすべき」と主張。「『何か面白いことを将来やりそうだな』と感じる発想力が豊かな学生ほど、(略)新卒一括採用の枠内に入りづらい傾向にある」としたうえで、「画一的な人事採用システムを取っていることによって、日本社会は重大な機会損失をしている」と指摘した。

   一方、常見さんは、「日本にイノベーション(技術革新)が起きないのは、画一的な雇用制度が原因という批判があるが、日本経済の競争力を高めているのは、スティーブ・ジョブズ氏のような天才ではなく、名も無き普通の人たち」とコメント。大手企業の新卒一括採用では、様々な性格の人材がそろう。新卒一括採用は、こうした「名も無き普通の人たち」が、コツコツ競争力を高めるのに必要な「個性尊重の仕組み」でもあると指摘した。

   当の就活生たちは・・・と、ツイッターを検索してみると、大人世代の意見も目立った。「おじさんもほんのわずかでいいから、新卒一括採用の恩恵とやらに与りたかったよ・・・」と、切なげなつぶやきもあれば、「子どもの将来を考えると、新卒一括採用の良い面は残して欲しいと切に願います」と、こちらも「切実な願い」のツイートが。議論はまだまだ、続きそうだ。(KH)