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アパレル業界に「給料アップ」の機運 それでも「冷ややかな声も」のナゼ

   長時間の立ち仕事での接客、土日に休めない・・・そんな印象も強いアパレル業界。そんな業界の販売員の「待遇」を改善しようとの試みが一部で始まっており、メディアでも紹介された。

   改善の動きを受け、ネットでは関係者からの歓喜の声が殺到・・・というわけでも、ないようだ。現場で働く人たちの思いとは?

「人材の流出」が懸案に

土日の休みが・・・
土日の休みが・・・

   日本経済新聞(2016年2月4日、電子版)によると、アパレルメーカー大手のTSIホールディングス(本社・東京)は2016年3月期以降、初任給の引き上げなどを進める。三陽商会も、有期雇用などの従業員を「正社員に登用する制度」を拡充予定。業界では、人手不足が慢性化しており、待遇改善で従業員のモチベーションをアップさせる意図がある。

   記事では、ファッション業界について、「若い女性を中心に非正規で大量採用し、人材の流出を繰り返してきた経緯」があると指摘。最近は、土日に休めないなどの労働条件から人手不足が深刻化しており、業界全体で「優秀な販売員の育成やノウハウの継承」が課題となっているという。

   また、4月には、アパレルや百貨店各社が発起人となった社団法人「ファッション販売員協会」も発足予定。「販売スキルを測る資格認証制度」などを創設し、加盟各社に、従業員の待遇を改善する際の「物差し」に活用してもらう計画であることも紹介した。

   ツイッターでは、日経記事でも指摘された「人材の流出」の多さを示すように、業界を辞めていく人々の姿が描かれている。

「アパレルで働いてる知人たちが、みんな辞めて行く。『俺は給料が安くてもやりたい仕事がしたい』という威勢は30歳手前で切れるようだ」 「本当にアパレル業界は悲惨だよね。私の知ってるアパレル関係者、高い技術を持ってても、みーんな離職していったよ。バブル崩壊後リストラされたり、給料でなかったり・・・悲しすぎる」

アパレル販売員の給料水準は

   さらに、実際に販売員をしているとみられるアカウントからは、

「改めて、アパレル業界会社員の給料の低さにテンションも下がる」
「アパレル立ちっぱなしやし、給料安い」

など、厳しい現状がうかがえるつぶやきも目立った。

   実際、アパレル販売員の給料水準は、どのくらいなのか。ファッション業界の就職支援を手がけるファインズ東京(本社・東京)によると、アパレル業界で、「20代後半の平均年収は300~400万円」。職種別では、マーケティングや流通管理などを手がける「MD(マーチャンダイザー)」で約380万円、「PR」や「営業」が約340万円に対し、「販売員」は300万円前後だった。

   同社では、「他の業界と比べると(アパレル業界の)給与はあまり良い方ではないかもしれない」と前置きしつつ、「職種やブランドによっては高収入を望めるチャンスは多分にある」と分析している(コラム「アパレル業界って給与はどれくらい?」2014年12月28日)。

「待遇改善もいいが・・・」

   今回の「待遇改善ニュース」、販売員らは、どのように受け止めているのか。ツイッターでは、実際に働いているとみられる人から、「ぜひ進めてほしい。販売店員の待遇は正社員とはいえ決して良くない」と、歓迎する声もあったが、やや冷めた意見の方が目立つ印象だ。

   「そうですか・・・」とか、「待遇改善もいいが、併せて教育環境、職場環境の改善の方が重要だと思う」など、「他にも改善して欲しい点がある」と言いたげなつぶやきも多かった。

   もちろん、「お客さんと楽しく話してると、キツいのも吹っ飛ぶね! やっぱりアパレル販売員、やりがい感じる。好きやなぁ」など、ポジティブに働く人の声もある。

   今回の「待遇改善」の動きは、関係者が「やりがい」を持ち続けることができる職場作りにつながるのか。そして、「人材流出」に歯止めをかけることができるのか。今後の動向に注目が集まる。(KH)