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「金価格はV字回復後も上昇」 世界局面を読めば当然...

   今も記憶に残る2009年。前年にリーマンショックが起きると、アメリカをはじめとする世界的な金融緩和によって莫大なマネーが金市場に注ぎ込まれ、2011年、中東情勢が不安定化した「アラブの春」や欧州の「ソブリンリスク」をフォローの風に、9月に金価格は史上最高値の1オンス1923ドルに到達。

市場は「先食い」で動く

   2012年も金価格は高水準を維持した。ところが2013年、金は大きく売られ、1年で26%もの下げを記録した。5月、アメリカがそれまで続けていた空前の規模の量的緩和策を終了しようと米当局が言い始めたからだ。

   実際に終了したのは2014 年11月だったが、「やめようか」と口にしただけで大きく下げた。金市場は、先食いによって動く。その後も金価格は下落し、直近の安値は2015年12月3日の1045ドル。原因は、同月16日に発表されたアメリカの利上げだ。ここでも発表に先行して金は下げた。

   ところが今年2016年に入ると金価格は上昇、年初来高値を次々と更新した。

   5月には1300ドル台、わずか5か月で250ドルものV字回復を果たした。さらに6月、英国の国民投票の結果は「EU離脱」だった。ここでもあっさりと5月の高値を抜いた。

   アメリカが描く追加利上げのシナリオは、保有していても利息を生まない金価格にはネガティブだ。しかし、中国の海洋進出やIS、北朝鮮の動きなど地政学的リスクは山ほどある。

先行き不透明な局面で上昇する

   世界経済の先行きが不透明な局面では、不確実性を嫌う世界中のマネーが金市場に流れ込む。今秋、11月8日のアメリカ大統領選で民主党から共和党に政権交代となれば、金価格の急騰につながる。

   最近、リスクオン(選好)とリスクオフ(回避)という言葉を目にすることが多い。投資家のリスクに対する姿勢を表すものだ。

   リスクオンでは、ドルや円などの低金利通貨や安全資産とされる金は売られ、資源国通貨や発展途上国の通貨、株や原油などが買われる。

   反対に、リスクオフでは、資源国通貨や発展途上国の通貨、株や原油などが売られ、ドルや円、金が買われる。

   リスクオフといわれる局面は今後も頻発しそうだ。金が買われ、金価格は中長期的に上昇すると思っていていいのではないか。2016年9月5日午前8時現在、金価格は1322.67ドル。(阿吽堂)