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【33】必要なのは「いいかげん読み」 英語上達の近道は「辞書を引かない」こと!(井津川倫子)

   先日、会合で「カズオ・イシグロの『日の名残り』を英語で読み始めた」と話したところ、「え~、すごい!どうやったら英語で小説なんて読めるの!」と、派手に驚かれました。

   いやいや、驚いたのは私です。その場にいたのは、通訳資格保持者や留学経験者といった「英語の達人」ばかりだったからです。実力ではあきらかに劣る私が、なぜ英語で小説を読むことができるのか。違いは「辞書の使い方」にありました。

  • 辞書は引かない!
    辞書は引かない!
  • 辞書は引かない!

秘策その16 辞書なしで英語を読むことに慣れよう

   最初に告白をすると、私はカズオ・イシグロの本を英語で読んではいますが、「100%理解」はしていません。知らない単語は飛ばし読みをして、大まかなストーリーを追っているだけです。

   それでも、イシグロ作品の醍醐味である「静謐な英語」の雰囲気はつかめますし、ストーリー展開に感動もします。もっと細部まで読み込みたくなったら、日本語の翻訳本を読み直せばいいや、と割り切っています。

   私が英語の小説や新聞、雑誌のような長文を読むことにあまり抵抗を感じないのは、「いいかげん読み」ができるからです。具体的にいうと、知らない単語を飛ばして読む「飛ばし読み」ができるからです。

   この点だけは、飛ばし読みをしても気にならない(罪の意識を感じない)いいかげんな性格のおかげだと思っています。

   意外なことに、英語が得意な「英語の達人」ほど、新聞や小説、雑誌といった「生きた英語」を読むのが苦手だったりします。

   超難関の通訳資格や英検1級を保有している人や海外の大学院を卒業するなど、難しい単語をたくさん知っている人たちです。

   彼らの話を聞いてみるといくつかの共通点に気がつきました。知らない単語が一つでもあったら必ず辞書を引きたくなる。知らない単語を放置したまま先に読み進むなんて、気持ち悪くてできない。教科書やテキストの英語を「丁寧に読み解く」ことに慣れていて、辞書を手放せない。「精読は得意だが速読はちょっと苦手」というのです。

   確かに、いちいち辞書を引きながら小説や新聞記事を読むと膨大な時間がかかりますし、手間を考えたらヤル気が起きません。私なら英語そのものがキライになりそうです。

「生きた英語」を楽しむための分岐点はココ!

   私は、英語上達の秘訣は「英語の楽しさ」を体験することだと思っています。

   学問としての英語ではなく、世界共通言語としての英語の魅力を知ると英語を学ぶモチベーションが上がります。小説や新聞、ウェブサイトや雑誌といった「生きた英語」に触れることです。

   「生きた英語」を楽しむには、「いいかげん読み」が効果を発揮します。知らない単語に出会っても気にせずに、そのまま読み続ける方法です。「いいかげん読み」ができると、結果として速読力が身につきます。

   私の場合は、TOEIC L&Rを受験することで「いいかげん読み=速読力」が鍛えられました。

   TOEIC試験問題の特徴は、「大量の英文」を読まされることです。他の資格試験と比較をしても、TOEICの文章量は群を抜いています。リーディングパートだけでも、A4用紙で換算したら10枚以上になるはず。1時間ちょっとでこれだけ大量の英文を読んで解答するには、尋常じゃないスピードを身につけなければ太刀打ちできません。

   私は、英文を早く読むために「辞書を引かない」にこだわりました。

   知らない単語に出会っても辞書を引かずに読み進む。知らない単語は文脈から意味を推測して、文章全体の大意をつかむ訓練をしました。

   もちろん、まったく辞書を使わないわけではありません。

   全体を読み終えた後に、何回も出てくる単語やカギとなるような単語だけ辞書を引いて意味を覚えました。

   TOEICで鍛えた「いいかげん読み=速読力」は、仕事のうえでも、とても役に立っています。気楽に海外ニュースに触れることができるので、世界の最新情報をゲットできるからです。

   じつは、この「気楽さ」がポイント。「ざっくり大意がわかればいい」と割り切れるかどうかが、「生きた英語」を楽しむ分かれ道でしょうか。

   受験英語の「英文読解」が得意だった人ほど「速読」は苦手なようです。逆に、英語が苦手だった人は「速読」が得意になる可能性を秘めています。みなさんもいったん辞書を置いて、「いいかげんに」英語に触れてみてはいかがでしょうか? (井津川倫子)

今週のニュースな英語

~ マクロン仏大統領もびっくり? 31歳のイケメン首相が誕生へ ~

   オーストリアで総選挙(国民議会)の投票が行われ、保守系の国民党主セバスティアン・クルツ氏(31)が世界で最年少の首相に就任する可能性が高くなりました。

   端正な顔立ちのクルツ氏は国内でカリスマ的な人気を誇っていますが、ソフトな外見に似合わず移民排斥を強く訴えていることから、オーストリアの右傾化が注目を浴びています。オーストリアはあのヒトラーが生まれた国だからです(ヒトラーはドイツ生まれではありません!)。

   クルツ氏が所属する国民党は「conservative」(保守系)です。私たちが、ファッションや思想に関して「あの人は『コンサバ』だよね」と使う「コンサバ」は、「conservative」からきています。

   他にも、「liberal」(リベラル、自由主義)や「far‐right」(極右)「far‐left」(極左)など、政治用語は意外と世界共通だったり、わかりやすかったりします。「飛ばし読み」をしてもなんとなく意味がわかるのではないでしょうか?