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自動ブレーキ、駐車支援、ペダル踏み間違い、車間距離維持...... 「ハイテクカー」所有者の4人に1人がヒヤリ体験

   衝突を防ぐブレーキや、ペダルの踏み間違い時に加速しない装置、自動的にハンドルが回り駐車できる仕組みなど、最先端のシステムでドライバーの運転技術をサポートする「先進安全自動車」(ハイテクカー)を買う人が増えている。

   ところが、その先進技術がアダになり、事故を起こすケースが少なくない。国民生活センターが調査した結果、ハイテクカーのドライバーの4人に1人が「想定外の出来事」を経験していることがわかった。

  • 前方の障害物がある程度大きい必要がある(国民生活センターの動画より)
    前方の障害物がある程度大きい必要がある(国民生活センターの動画より)
  • 前方の障害物がある程度大きい必要がある(国民生活センターの動画より)
  • 衝突被害軽減ブレーキの動作の様子。先行車の後部の形をはっきり認識する必要があるペダルの踏み間違い時に停止する様子。(同)

正しい使い方を知らず事故が続発

   国民生活センターによると、各自動車メーカーによって名前や仕組みに違いがあるが、先進安全装置には主に次の4つがある。

   (1)衝突被害軽減ブレーキ。

   先行車や歩行者などクルマ周辺の障害物を検知、追突や衝突の恐れがある場合は音や警光灯で運転者にブレーキ操作を促す。それでも運転者がブレーキを踏まない場合、自動的にブレーキが作動する。

   (2)ペダル踏み間違い時加速抑制装置。

   アクセルとブレーキを踏み間違えて、前方の障害物と衝突する恐れがある時に、急加速や急発進を抑える。

   (3)定速走行・車間距離制御・車線維持装置。

   定速走行・車間距離制御装置は、先行車を認識すると自動的に速度調整を行い、一定の車間距離を維持したまま追従走行する。車線維持装置は、車線からはみ出しそうになると、音や警告灯で知らせる。また、走行車線の中央部分を維持するようハンドル操作をアシストする装置もある。

   (4)駐車支援システム。

   駐車枠内にきちんと駐車するよう自動的にハンドル操作する。

   ところが、正しい使い方を理解していない人が多く、同センターに寄せられた事故の相談は年々増加。2012年以来、142件にのぼっている。そのうち8割が衝突被害軽減ブレーキによるもので、たとえば、こんな事故のケースがある。

「衝突被害軽減ブレーキ付きのクルマを買ったのに、追突事故を起こした」(静岡県、30歳代男性)
「前方に何もない道路で、突然、衝突被害軽減ブレーキが作動し急停車した。ディーラーに検査してもらうと、道路わきの電柱に反応したことがわかった」(滋賀県、60歳代女性)
「交差点の信号が青になったので発進した際、ペダルを踏み間違えたため加速抑制装置が作動、交差点の真ん中で立ち往生してしまった」(大阪府、40歳代男性)
「駐車支援システムで駐車場に止めようとしたら、クルマの前方右側が人家の壁にぶつかり損傷した」(30歳代男性)

   いずれも、2015~17年に寄せられた事例だ。

自動ブレーキは急な人や自転車の飛び出しには弱い

   こうした事故が相次いでいるため、国民生活センターではインターネットで19~79歳の「ハイテクカー」の所有者2000人に、「想定外の出来事」があったかどうか聞いた。

   すると、「急加速した」「急停止した」「減速・加速しなかった」「他車にぶつかりそうになった」「車線を逸脱した」などのヒヤリとした経験がある人が25%、4人に1人もいた。さらに、そのうちの25%がクルマを損傷した。

   「運転する際の注意事項を理解しているか」聞くと、「理解している人」が83%、「理解していない人」は17%だった。購入時にちゃんと説明を聞かず、使用説明書も読まない人が意外に多いようだ。

   同センターでは、2017年9~12月に各メーカーからクルマの提供を受け、テストコースで先進安全装置が実際に作動するか実験を繰り返し、動画に撮影した。その結果、必ずしも機能しない場合があることがわかった。100%安全ではないのだ。

   また、それぞれのシステムには次のような「弱点」があった。

   (1)衝突被害軽減ブレーキ。

   人や自転車の急な飛び出しには作動しない場合がある。特に子どもや背の低い人、動物、暗闇にいる歩行者は気づきにくい。

   また、先行車の後部の形がはっきりしないタイプ(タイヤが見えにくい・極端に車高が低いか高いなど)は検知しにくい。また、悪天候で視界が悪い時やカーブを走っている時は機能しにくい。

   フロントガラスが汚れ、水滴がついている場合や、前方から強い光が当てられた時は、道路わきにある物などを障害物と誤って検知する場合もある。

   (2)ペダル踏み間違い時加速抑制装置。

   前方の障害物を認識するにはある程度の大きさが必要だ。背が低い・幅が狭い・針金やロープなど細い場合は検知しにくくなる。

   (3)定速走行・車間距離制御・車線維持装置。

   いずれも急カーブや急こう配、悪天候の時は使用しないこと。定速走行・車間距離制御装置は、先行車が急に割り込んできた時やオートバイ、後部の形がはっきりしないタイプは機能しにくい。

   車線維持装置は車線のレーンマーカーが不明瞭な時や、幅が狭い時、前方から強い光を浴びている時は、機能しにくい。

   (4)駐車支援システム。

   砂利など整備されていない駐車場、傾斜・段差のある場所、すべりやすい路面、マンションなどの機械式駐車場では使ってはいけない。

   そもそも駐車支援システムは、自動的に障害物を回避することができないため、ドライバーは周囲の状態を確認する必要がある。

   駐車の枠内に障害物(壁の出っ張りや消火器など)がある場合は、自分でハンドル操作をする。

   国民生活センターは、

「先進安全装置の機能には限界があり、性能や作動する時の条件は車種によって違います。購入時にしっかり正しい使い方を理解しないで、装置を過信すると、装置が適切に作動せず、思わぬ事故につながる危険があります。また、自動車メーカーや販売ディーラーは、ドライバーにわかりやすく説明することを要望します」

と語っている。