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働く女性に朗報!「子連れ出勤OK」タマホームのチャレンジ 子どもが遊び回る職場をルポ

   子どもを保育園や学童保育などに預けられず、仕事を休まざるを得なくなった時、職場に連れて行くことができれば、と思う親は多いのではないだろうか――。

   そんな社員のために住宅建設・設計大手のタマホームは、2018年4月から「子ども同伴」の勤務制度を全国の本社・支店でスタートさせた。

   とはいえ、子どもが職場にいても仕事に差し障りはないのだろうか、気になるところ。J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部記者が、子どもが遊び回る職場をルポした。

  • 職場のキッズスペースで絵本を読んだりしている遠藤あさひちゃん
    職場のキッズスペースで絵本を読んだりしている遠藤あさひちゃん
  • 職場のキッズスペースで絵本を読んだりしている遠藤あさひちゃん

「職場が和み、雰囲気が明るくなった」

   職場に子どもを連れてきてもいい対象者は、2歳から小学校卒業までの子どもで、(1)認可保育園に入れず、待機児童になってしまった場合(2)子どもの学校などの長期休暇や特別休暇に、子どもの預け先を確保できないなどの緊急時(3)事前に上司に連絡のうえ、許可を得る――などの条件をクリアした場合。

   J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じたタマホーム経営企画部広報・IR課(当時)の佐々木美紀さんによると、「新卒で入社した社員が出産適齢期に入り、育休中の人や復帰した人の声を聞くと、子育てをしながら昇格を目指して意欲的に働きたい社員が予想以上に多いことがわかりました。当社の『ハッピーライフのためにハッピーホームを提供する』というモットーのもと、子どもは社会が育てるという考えから、子連れ同伴の導入を決めました」という。

   本格導入を前に、2017年12月から10の支店で試験的に導入し、社員の意見を聞いた。すると、「子どもを連れてきた社員が仕事に集中できず、周囲に気を使う」「客との商談に支障が出る」などの反対意見があったものの、「職場が和み、雰囲気が明るくなった」「商談中に客の子どもと一緒に遊び、客にも喜ばれた」「社員が育児を理由に退職することを防げる」などと、半数以上の人が賛成だったという。

   佐々木さんはこう語る。

「『業務に支障が出なかった』と回答した人が多く、想定より子どもが大人しく過ごしていようです。当社は住宅展示場という性質上、お子様連れのお客様が多く来場されます。打ち合わせ中に過ごすキッズスペースが各店にそろっているので、社員の子どもも使う環境がそろっています。同時に、社員の多くが店内に子どもがいる状況や見守りに慣れているため、子連れ出勤を受け入れやすいかったことがあるでしょう」

商談中の客の子どもと一緒にアニメを見る

   会社ウォッチ編集部記者は、子連れ出勤の様子を取材するために2018年4月20日、宮城県大崎市古川穂波にあるタマホーム古川支店を訪ねた。東北新幹線古川駅からクルマで10分ほどの国道4号沿いにある。

タマホーム・古川支店(宮城県大崎市)
タマホーム・古川支店(宮城県大崎市)

   広い住宅展示場の敷地内にモデルハウスが2棟建っており、その中心に建っている2階建ての大きな建物が支店だ。中に入ると広々としてオープンオフィスになっており、その片隅に親と同伴出勤してきた子どものためにキッズスペースがある=1ページの写真参照

   広さは3畳ほど。大きなソファーに玩具、ぬいぐるみなどを入れたオモチャ箱や絵本が並ぶ本棚がある。しかし、子どもはいない。店内のどこかで遊び回っているのか?

   オフィスの向こうから小さな女の子が駆けてきた。「あさちゃん、何しているの?」と社員の一人が声をかける。総務課の遠藤なつみさん(32)の長女あさひちゃん(3)だ。

   あさひちゃんは母親を探していたようで、「あさちゃん、いい子にして」と遠藤さんが娘を抱きしめながら、キッズルームを指さした。

   遠藤さんの話では、職場に連れて来たのはこの日で4回目。保育園が休みの日でも出勤しなくてはならない時や、残業の予定があり、保育園に迎えに行けないことがわかっている日などに連れてくる。「預け先がない時や、実家の親に頼れない時はとても助かります」と遠藤さん。4回目なので、あさひちゃんも社員とすっかり顔なじみになり、手のあいた時に一緒に遊んでもらうこともある。

   2階は浴室やトイレのショールームにもなっており、そこにもキッズスペースがある。ケーブルテレビが置いてあるので、あさひちゃんは「アンパンマン」などのアニメを見ることもできる。モデルハウスを見に来る客は家族連れが多いので、客の子どもと一緒にアニメを見たり、遊んだりすることができるのも利点だ。

   支店長の白土友章さんはこう語った。

「職場に子どもがいると、アットホームな感じになり、みんなが和みます。そのいい雰囲気がお客様にも伝わり、安心した家づくりを任せてもらううえで、当社のメリットにもなると考えています」

社員みんなで子どもに声かけをすることが大切

   従業員の福祉だけでなく、会社のイメージづくりにも役立っているというわけだ。しかし、子どもが職場にいることで、母親やほかの社員の仕事の邪魔になるなど、マイナス面はないのだろうか。白土さんはこう説明した。

「確かに母親を追いかけ、ベッタリつかれたりすると困ります。その問題を解消するために、社員みんなで子どもに声かけをするようにしています」

   確かに自由に職場の中を歩いている、あさひちゃんの様子を見ていると、「あさちゃん、何しているの?」「どこに行くの?」「ママに甘えておかしいよ」などと、通りすがりの社員たちが盛んに声をかけている。その声に、あさひちゃんもうれしそうにニコニコしている。

   もちろん、安全面には気を遣う。カッターナイフやハサミなどの刃物は机の上に置かず、引き出しにしまうことを徹底しているし、ぶつかっても大丈夫なように机の角は緩衝材で覆っている。また、子どもが屋外に出たのがわかるよう、ドアにベルをつけてある。 記者があさひちゃんに「ママの職場に来ると、楽しい?」と聞くと、「うん」とうなずいた。