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お気楽? いやいや大変 在宅ワークは「自分の時間」ゼロです!

   「働き方改革」によって企業が社員の自宅勤務を推進したり、フリーランス・ブームが起こったりしている影響もあり、在宅ワーカーが増えている。

   しかし、在宅ワークは自由すぎて集中力を保つのが難しいという。インターネットの働き方サイトでも、よく「どうしたらメリハリをつけて効率よく仕事ができるか」と話題になる。J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部は、在宅で働く4人のフリーランスを取材、集中力を保つコツを聞いた。

  • 在宅ワーカーにはゆったり働けるイメージがあるが……
    在宅ワーカーにはゆったり働けるイメージがあるが……
  • 在宅ワーカーにはゆったり働けるイメージがあるが……

在宅ワークでストレスがひどく......

   在宅ワーカーというと、混雑の激しい通勤時間や嫌な職場の人間関係がなくなり、ストレスもたまらず、たっぷり仕事の時間をとれると思われがちだが、じつは「まったく逆だ。在宅のほうが疲れる」という人は少なくない。

   神奈川県の編集・ライター業の女性Aさん(40歳、子供3人)はこう語る。

「在宅ワーク前は、都心まで通勤に往復3時間かけていましたが、在宅ワークを始めてからのほうがストレスはひどくなりました。会社員時代は自分の自由時間が結構取れたのに、在宅ワークは朝保育園に送ってから5分後には仕事を開始、仕事が終わったら5分後にはお迎えに行き、子どもが帰宅するので自分の時間がまったくなくなりました」

   会社員の時は、通勤時間中にスマホで人と連絡を取り合ったり、夕飯の献立を考えたり、読書したりできた。また昼休みもあるし、同僚と息抜きの会話ができた。しかし、在宅ワークは常に仕事か家事に追われる。在宅ワークを始めてからの半年間は、それまでの人生で一番ストレスを感じたという。これではいけないと思い、対策を講じた。それは......

「『在宅ワークだから時間あるよね』と、会社員時代は夫と分担していた家事や育児が私に偏りがちになったので、夫を意識改革、手伝わせることにしました。夫もたまに在宅ワークをすることがあり、『在宅で仕事すると、あっという間で何もできないね』と実感して理解するようになりました」

と、まずは夫の理解を得ることだった。

   家事は朝集中的に短時間で終わらせる。その間に夫が子どもを保育園へ送る。仕事を始める時、気持ちのスイッチの切り替えるため、10分でいいから自分の時間を持つ。コーヒーを飲んだり、スマホを見たり......。よほど集中しないとできない仕事の時は、外でコーヒーを飲んで切り替え、そのまま喫茶店で仕事することもあるという。

   在宅ワーク1年目は、ほとんど毎日昼食ナシか夕方の中途半端な時間に食べていたが、きちんと昼食と昼休みの時間を確保するようにした。仕事の時間は9時半~16時半と決めた。それ以降に仕事の連絡がきたら、子どもたちが寝た後に対応する。途中で対応すると必ずストレスになる。つまり、仕事とそれ以外の時間のメリハリをしっかりつけるのだ。仕事場も最初は狭い書斎でやっていたが、現在は広いダイニングテーブルで行なう。開放感があるからだ。

   Aさんはこう語る。

「やむを得ず夜中に仕事することもありますが、その時は割り切って、翌日を休みにしたり、早めに寝たりして調整します。真夜中に『仕事嫌だな~』と思うとつらくなり、在宅ワークが続けられなくなります」

どんなに忙しくても夜は仕事をしない

   東京都の脚本家の男性Bさん(36歳、妻と2人暮らし)も、在宅ワーク約10年の経験から、仕事と自由時間をキッチリ分けることの大切さと強調する。

「どんなに忙しくても、ダラダラ遅くまで仕事を続けず、19時には必ず打ち切り、好きな映画やテレビを見ます。それが集中力を高めて、ストレスをためないコツ。在宅は、仕事を続けると際限なくやることになりますから」

   しかし、きつい締め切りに追われたらどうするのか――。「残業」せざるを得ないではないかと聞くと、「そうならないよう、計画的に早め早めに仕事をこなし、急な注文に備えておきます」という。よくプロデューサーから「3日後までに仕上げてくれ」などと突然の依頼が入るからだ。

   それに応じないと、他の脚本家に仕事を奪われる。かといって、無理をし続けると体がもたない。

   そこで、Bさんは体力づくりのためにエアロバイクを購入、自宅の仕事場兼居間で、毎日30分~1時間自転車を漕ぐ。自転車ならテレビを見ながらできるので、ストレス解消にもなり、一石二鳥。ほかにも気分転換の方法をいろいろ持っている。

「家の中ばかりだと飽きるので、図書館や喫茶店にパソコンを持ち込み、気分を変えます。妻が外で働いているので、料理は私が作ることが多い。ファミレスの厨房のバイト経験があるので、オムレツや肉野菜炒めなら作れます。また、猫を飼っており、じゃれて遊ぶとリラックスできます」

   女性の場合は、きちんとメイクをして、通勤してもおかしくない服装に着替えると、シャキッとする人がいる。会社員からフリーのライターに転身した東京都の女性Cさん(35歳、子供1人)はこう語る。

「仕事のオンオフのメリハリをつけるために、化粧と身ぎれいな服装は欠かせません。家には鬼の上司も仲のよい同僚もいませんから、緊張感を持って仕事をするのが、会社員時代に思っていた以上に難しいのです。また、自宅での『勤務時間』は10時~18時と決め、その間は絶対に家事はしないことにしました。勤務時間中に家事をするなんて、ありえないことですから」

   Cさんが化粧をする理由はもう一つある。自宅に近い駅ビルにひと月1万2000円で、シェアオフィスを借りている。ふだんは自宅で作業するが、集中したい時や仕事が行き詰った時は、すぐにそこに行き作業する。

「他のフリーランスの人々も仕事をしているし、何よりテレビや冷蔵庫などの誘惑がありません。宅急便も来ないので気が散らずに仕事がはかどります」

在宅ワークの天敵は家事

   もっともスッピン、パジャマ同然の格好で仕事をする女性もいる。東京都のライターDさん(40歳、子供2人)は、昼に配信するインターネットニュースの記事を書いている。

   Dさんは「私の場合は、午前中に原稿を出すノルマがあるので、夫に保育園の送りを頼み、顔も洗わずに仕事をしますよ。キレイでい続けたいなら通勤すべきでしょう」と笑った。

   ただし、仕事を始める前に、洗濯機を回す、食器は下げる、リビングは片づける......と、ある程度小ぎれいな環境を整える。しかし、洗濯を干す、食器を洗う、掃除機をかける...は、昼ごはんを食べた後にまとめてすることにしている。「どんなに気になっても、仕事を終えるまでは手をつけません。一度始めたらエンドレスになるのが家事だからです」とDさんはいう。

   じつは、Cさんが10時~18時の「勤務時間中」に家事を一切しないと決めている理由もそこにあった。いったん家事を始めると、仕事が手につかなくなるからだ。在宅ワーカーにとって一番の課題は、いかにして家事の達人になるかだといえそうだ。