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戦争にテロ...... 怖い怖い地政学リスク 株価急落で泣かないための心構え(小田切尚登)

   トランプ氏が米大統領になって以降、国際政治の動きが加速している。日本では何と言っても北朝鮮そして中国の動向が気になるところだが、世界ではそれ以外にも色んな問題が山積している。欧州ではBREXIT(英国の欧州連合からの離脱)やイタリア問題などがあるし、中東はイランやイスラエルを中心に今も目が離せない。

   地理的条件が国家に与える影響を分析することを地政学と呼ぶ。地政学は株式相場にどのように影響を与えるであろうか?

   今回はこの極めて重要であるが、あまり分析されていないテーマについて考えてみたい。

  • ああぁ…… 株価急落
    ああぁ…… 株価急落
  • ああぁ…… 株価急落

地政学と株価動向の関係

   戦争やテロが起きると、その直後に株式相場が下がることが多い。これは当然ことであろう。世界情勢の変動は、市場の不確実性を増すことになるからだ。

   あるいは地政学的事象によって、我々は世界の不確実性を再認識する、と言ってもいいだろう。投資家は不安を感じたらとりあえず株を売っておく、というようなリスク回避の行動を取りがちである。そのため株価は押し下げられる。

   しかし、たいていの場合、その後の短期間に株価はV字回復する。戦争やテロの惨禍を受けても、人々の努力によって再建が進み、正常な経済活動が再開するためだ。

   短期的な地政学的な変動は中長期的な企業収益にはあまり影響することがないということである。なかには、株価がすぐには回復せず何年にもわたり低迷するような例もあるが、それは世界大戦あるいは世界恐慌と呼べるような超弩級のケースに限られるとみられる。

   実際に株価がどのように反応したかについて近年の代表的な地政学的な6つの事象を例にして見てみよう。

   英国の欧州連合(EU)離脱(2016年)、米リーマン・ブラザーズの経営破たん(2008年)、9.11米国同時多発テロ(2001年)、アジア通貨危機(1997年)、湾岸戦争(1991年)、ブラックマンデー(1987年)である。

   このうち直後の株式市場にマイナスの影響が出なかった事例が2つあった。湾岸戦争とリーマン・ショックである。湾岸戦争の場合は、米国の参戦によりむしろ事態が早めに収拾するという見方が当時支配的だったためだと考えられる。また、リーマン・ブラザーズ経営破たんのすぐ後はほとんど反応がなかったが、当時はリーマンの破たんが金融危機の火ダネになるとはまだ思われていなかったためであろう。

   そして、事件後1か月、3か月、6か月が経つと、直後には大きく下げた相場も回復していくというのが一般的な展開である。英国のEU離脱、9.11米国同時多発テロ、アジア経済危機は、その後に当初の下げを相殺して余りあるだけの大幅な上昇を記録した。

   唯一、リーマン・ショックに端を発する金融危機は数年にわたり世界経済を停滞させる大事件となった。

トランプ米大統領「自分のおかげで株価が上がった」

株価下落を検証する
株価下落を検証する

   これを踏まえて、我々はどういう行動をとるべきであろうか――。

   まずは短気変動に一喜一憂しないこと。「狼狽売り」は避けるべきだ。世界情勢の不安定化で相場が下がったとしても、遠くない将来に相場が戻ってくる可能性が高い。むしろ下がったときは絶好の買い場だととらえることも可能であり、果敢に攻めていくという選択肢もある。

   次に、分散投資をしておくこと。地政学リスクが表面化した時、株価と逆に価格が上がる傾向を示す投資商品がある。債券や金などである。こういうものをバランスよくもっていれば慌てることも少なくなるだろう。

   トランプ氏が米大統領に選ばれたのは2016年12月。その後、世界情勢が混沌としていくなか、日本も米国もヨーロッパも株価は非常に順調である。大統領の破天荒とも思えるさまざまな行動に対し、投資家は落ち着いた反応を示してきた。

   トランプ氏は「自分のおかげで株価が上がった」と自画自賛しているようだ。しかし、これは「株価は自分の力で動く」と宣言したようなものである。今後下がった場合にどう説明するか見ものである。(小田切尚登)