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ウロウロ、キョロキョロ「あっ、万引き!」AIカメラが事前に検知、店員に通報

   カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した是枝裕和監督の映画「万引き家族」が2018年6月8日から公開された。万引きで生活をする家族の物語だ。「盗まれたのは絆だった」という美しい宣伝文句がウリだが、商品を盗まれる店側はたまったものではない。

   そんななか、AI(人工知能)を搭載したカメラが万引きにつながる怪しい行動をとる客を検知し、店員に知らせるシステムが開発され、6月下旬から全国の小売店向けに提供を開始する。

  • 「AIガードマン」の仕組み(NTT東日本・アースアイズのプレスリリースより)
    「AIガードマン」の仕組み(NTT東日本・アースアイズのプレスリリースより)
  • 「AIガードマン」の仕組み(NTT東日本・アースアイズのプレスリリースより)

不審行動を「白」「イエロー」「レッドカード」の3段階で警告

   この万引き防止システムの名称は、「AIガードマン」。NTT東日本と防犯を中心とするITベンチャー「アースアイズ」が共同で開発した。万引き被害は、小売業の売上高の約1%、年間約4000億円に達する推計されており、両社は今後3年間で全国の1万店舗への導入を目指している。

   「AIガードマン」は、AIを搭載したカメラが店内を常に監視、客がキョロキョロ、ウロウロするなど不審な行動をとると、すぐに検知し、店員のスマートフォンに知らせる。

   その際、怪しい客がいる場所も知らせるため、店員が現場に駆け付け、「いらっしゃいませ! 何かお探しでしょうか?」と声かけをして、客に万引きを思いとどまらせることを狙っている。

   また、店員が客の万引き行為をいちいち警戒する必要がなくなるため、その分の保安要員や時間などが浮くことにもつながる。

   それにしても、どうやって万引きをしそうかどうか、怪しい行動を判断するのだろうか。ただ、キョロキョロ、ウロウロするだけでは、商品を探す客なら誰でもやりそうだが...... J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じた「アースアイズ」の広報担当者はこう説明した。

「じつは、当社代表の山内三郎が、以前から小売店舗の万引き防止セキュリティー事業を行なっており、山内自身も実際に万引き摘発Gメンを経験しています。ですから、万引きをする際の動きの膨大なデータを蓄積しており、『AIガードマン』に生かされているのです」

   具体的には、キョロキョロ、ウロウロする回数や動きの強さ、また背後を気にしたり、店員のいる方角を見やったりするなどの、不自然な行動が要注意になる。

   一か所に立ち止まったり、しゃがみ込んだりする行動も怪しい。客がこうした行動を始めると、まず画面の客の画像に白枠が出る。さらに不審行動が続くと黄色い枠、そして最後に赤い枠が出て、店員への警報となる。サッカーのイエローカード、レッドカードと同じ仕組みだ。

ビックカメラで実験すると、思わぬ売上促進効果が

   本当に万引きをするかどうかは、かなり正確、かつ厳密に判断するそうだ。広報担当者は、こう説明する。

「当社のショールームが東京・東銀座にありますが、『AIガードマン』の顧客向けに万引き行動を検知するデモンストレーションを行なっています。ただ、キョロキョロ、ウロウロするだけではダメで、お客様が相当本気になって、『万引きするぞ!』という行動をとらないと検知しません」

   また、NTT東日本の広報担当者によると、製品化する前に、実際にドラッグストア・チェーンの「キリン堂」やビックカメラ有楽町店などの店内にシステムを設置。実証実験を繰り返した。すると、キリン堂では「客の見守り時間を短縮できたので、確保した時間を接客サービスに増やすことができた」という本来の目的どおりの効果があった。

   一方、ビックカメラでは思わぬ「副産物」の効果もあり、広報担当者は、

「警報が鳴って、店員が怪しいと思われるお客様のところに駆けつけたところ、販売員を探して迷っていたそうです。『何かお探しでしょうか?』と声かけすることになっていますから、結果的にお困りのお客様への早期対応につながり、販売機会を逃さないことにも役立ったそうです。これからは、システムの提供にはこういう副次的な効果も強調していきたいと思います」

と語った。

   ちなみに、価格はAI内臓カメラの初期費用が1台あたり23万8000円、クラウドサービス利用料がカメラ1台当たり、月額4000円、また録画した動画を保存するためのオンラインストレージ利用料(ギガ数に応じて値段は異なる)が、10ギガまでの場合で月額500円(いずれも、税別)となっている。