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仰天、日本は「一夫多妻社会」? 未婚男性増のウラに「バツありオットセイ男」!(前編)

   未婚化が進み、少子高齢化に拍車をかけていることが社会問題になっている。

   しかし、そもそもなぜ結婚しない男女が増えているのだろうか――。これまでは未婚の男女の意識にばかりスポットが当たってきたが、結婚経験者の実態を調べると、なんと事実上の「一夫多妻制」がひそかに進行していたのだ!?

  • 未婚化の裏にはバツあり男性の影が(写真はイメージ)
    未婚化の裏にはバツあり男性の影が(写真はイメージ)
  • 未婚化の裏にはバツあり男性の影が(写真はイメージ)

何回も結婚できる「勝ち組」オトコが複数の妻を独り占め

   これは驚くべき実態だ。何回も結婚できる「勝ち組」オトコが複数の妻を得る一方、一度も結婚できない「負け組」オトコがあぶれる「結婚格差」が広がっているというのだ。日本は、強くてモテるオスが多くのメスを独占するオットセイのような社会になっているというのか――。

   J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部は、この男性の結婚格差を指摘するレポートを発表したニッセイ基礎研究所生活研究部研究員の天野馨南子(あまの・かなこ)さんを取材した。

   レポートは「初婚・再婚別にみた『年の差婚の今』上・下-未婚少子化データ考-平成ニッポンの夫婦の姿/変わりゆく2人のカタチ」(2018年5月14、28日発表)。

   国の統計では、50歳までの時点で一度も結婚したことのない男女を「生涯未婚者」と呼ぶ。図表1を見てほしい。その男女の割合(生涯未婚率)は年々急上昇して、ついに2015年には男性で23.4%、女性では14.1%に達した。じつに男性の4人に1人、女性の7人に1人が該当する。男性の未婚者は女性の1.7倍も多いのだ。

50歳時点で1度も結婚歴がない男女の割合(%)
50歳時点で1度も結婚歴がない男女の割合(%)

   こうした未婚者の増加が、少子化の大きな原因の一つとして問題になっているわけだが、天野さんは一つの疑問に突き当たった。天野さんが語る。

「自然の摂理でこの世に生まれてくる男女は毎年ほぼ同数なのに、どうして50歳の時点で、男性の方が女性の2倍近くも結婚歴のない人が多いのでしょう。 男性は出産を担わないので、結婚を考える年齢が遅くなるからという仮説を立てるとします。もしそれが正しければ、50歳を超える年齢で、子どもが生める若い女性と結婚し、男性の生涯結婚率が一気に女性に追いつくはずです」

   ところが、国勢調査のデータを調べると、男性は全年齢で女性よりも未婚(婚歴なし)率が高い。たとえば、25歳~49歳の各年齢では平均9.9%~12.8%も男性のほうが高くなる。男女同数なのに、なぜあぶれる男性がどの年齢でも1割近くも出てくるのか?

   天野さんは、

「この謎の回答はじつは難しくありません。未婚者割合の男女格差は、一夫多妻制の国では普通だからです。3~4人の妻を持つ男性がいるので、男性は未婚者だらけになります。日本では一夫多妻制は認められていませんが、離婚・再婚は認められています。1人の男性が離婚をし、初婚の女性と2度結婚したとすれば、タイムラグはあっても2人の妻を持つことになり、事実上の(タイムラグ式)一夫多妻制が生じることになります」

と説明する。

男女とも「再婚者」が結婚マーケットのキーマンに

   もちろん、その逆もある。1人の女性が離婚をし、初婚男性と2回結婚すれば、タイムラグ式の一妻多夫制が生じる。そこで天野さんは、「再婚男性+初婚女性の結婚(タイムラグ式一夫多妻制が発生)」「再婚女性+初婚男性の結婚(タイムラグ式一妻多夫制が発生)」とで、いったい、どちらが多いのか役所に届け出た結婚のカタチの件数推移から調べた(厚生労働省・人口動態統計調査)。

   「再婚男性+初婚女性の結婚」のほうが、その男女逆パターンよりも多ければ、タイムラグ式一夫多妻制結婚が優勢、つまり男性の未婚化が女性の未婚化よりも進む社会である証明になる=図表2参照

初婚・再婚の夫婦の組み合わせ別、婚姻届総数に占める割合(2015年)
初婚・再婚の夫婦の組み合わせ別、婚姻届総数に占める割合(2015年)

   その結果、最新年データではA:夫婦とも初婚(74.5%)、B:夫再婚・妻初婚(9.7%)、C:夫初婚・妻再婚(6.9%)、D:夫婦とも再婚(9.0%)の4つのタイプに分かれた。

   このBとCの差が長年継続していることが積み重なって、タイムラグ式一夫多妻制による50歳時点での婚歴なし男女の割合格差を生んでいたのだ=図表3参照

再婚のタイプ別 年次推移(組)
再婚のタイプ別 年次推移(組)

   この結果について、天野さんはこう説明する。

「結婚はあくまでも個人の希望ありきの問題です。ですので、あくまでも結婚を希望する方の中では、になりますが、再婚して初婚の女性を何度も得る男性は希望の実現者といえるでしょう。一方、再婚男性に初婚女性を何度も奪われることにより、お相手の数が減って結婚が難しくなっている男性は、非実現者となります。
これまで未婚の問題を考える際、いつも未婚者の意識調査が実施されてきましたが、じつは再婚者の存在も背景にはあるのです。ですから結婚というマーケットの中で、再婚・既婚者がどのようなプレイヤーを演じるかを調べることもとても大切なのです」

バツあり男は7歳下「幼な妻」、バツあり女は4歳下「幼な夫」と

   現在、3組に1組が離婚する。その一方、初婚同士の結婚は全体の4分の3で、4組に1組は再婚者が含まれる結婚だ。天野さんは「離婚というとネガティブなイメージがありますが、再婚を再スタートと考えると、皆さんとてもポジティブです。実際に再婚者たちをみると、男女ともかなり年下の相手を選ぶ傾向が強くみられ、初婚者に比べて非常に積極的に見えます」という。

   図表4をみると、初婚同士のカップルでは、夫のほうが年上なのが55%、同い年が21%、妻のほうが年上なのが24%だ。ところが、夫が再婚・妻が初婚のケースだと、夫のほうが年上の割合は80%に上昇する。

   しかも、カップルの年齢差を詳細に調べると、夫が7歳以上の割合が44%と、ほぼ半数が「幼な妻」を獲得する特殊な状態だ。これは犯罪的ともいえそうで、あぶれる男性が出るのも無理はない。一方、妻が再婚・夫が初婚のケースでも、「姉さん女房」の割合は44%に達し(夫が年上は43%)、妻が4歳以上の割合が26%といちばん多く、ほぼ4分の1になった。

初婚・再婚組み合わせ別 年上・年下・同年齢の状況5初婚・再婚の夫婦の組み合わせ別、婚姻届総数に占める割合:2015年
初婚・再婚組み合わせ別 年上・年下・同年齢の状況5初婚・再婚の夫婦の組み合わせ別、婚姻届総数に占める割合:2015年

   どうして離婚を経験すると、男女ともかなり年下の相手を選ぶ傾向が強まるのだろうか。天野さんはこう推測する。

「男女とも年下のパートナーに向かう行動は同じですが、初婚での年の差パターンからの選択の変化を見る限り、理由は正反対だと思います。離婚という経験が糧となり、男女とも次の結婚ではパートナーに対して、求めすぎない、どちらかといえば庇護してあげたいという結婚に向かうように見えます。
しかし、女性の場合は、初婚時代には年上夫から庇護される結婚生活に何らかの理由で傷つき、今度は自分がリードするか、あるいは対等の関係を目指して年下の男性と結婚を選択する傾向が強まるようです。
一方、男性は、同級生のような価値観が対等となる初婚時代の妻と何らかの理由でうまくいかなかったので、今度ははるか年下の妻を庇護する立場のほうが楽だと思うようです。日本には、男性上位の結婚観がいまだに根強くありますが、男性の場合はその意識がさらに強くなり、女性は逆にそこから脱却したい、そんな再婚者の行動が選択パターンの変化からはうかがえます」

   こうした「年の差結婚」の増加が、未婚の進行にどんな影響を与えるのだろうか。後編は、天野馨南子さんへのインタビューを紹介する。

プロフィール
天野馨南子(あまの・かなこ)
ニッセイ基礎研究所・生活研究部研究員
1995年日本生命保険入社、99年ニッセイ基礎研究所に出向。内閣府の「地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査」企画・分析会議委員、愛媛県法人会と松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバーなどを歴任。真の日本の女性活躍推進・少子化対策のあり方を考察・提言を発信している。