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急成長する「共有経済」 シェアする人多いのは主婦じゃなかった?

   カーシェアやライドシェア、民泊サービス、また中古品をインターネットで個人売買するフリマアプリなど、個人が所有する「モノ」や「スキル」を他人と共有するシェアリング・エコノミー(共有経済)が広がっている。

   いったいどういう人にシェア志向が高いのか――。メルカリなどで子供服やおもちゃを売り買いするイメージから、女性、特に主婦層がよく利用するのでは、と思われがちだが、じつは......

  • シェアリング・エコノミー、広がる!(写真は、全国的な広がりをみせる自転車シェア)
    シェアリング・エコノミー、広がる!(写真は、全国的な広がりをみせる自転車シェア)
  • シェアリング・エコノミー、広がる!(写真は、全国的な広がりをみせる自転車シェア)

60歳代オッサンが20歳代女性並みに利用する?

   ニッセイ基礎研究所の主任研究員の久我尚子さんが2018年8月8日に発表した「拡大するシェアリング、シェア志向が強いのは誰?」によると、シェアリング・エコノミーの国内市場の規模は、2015年に398億円だったのが、2021年には約3倍の1071億円(予測)にまで広がる勢いにある。

   調査では、「中古品でも、気にしないで買う」「ネットを通じて個人からものを買うことに抵抗がない」「ものは買うより、できるだけレンタルやシェアですませたい」「買い物はできるだけインターネットですませたい」といったシェアに関する質問を用意して、それらへの合致度が高い人をシェア志向が強い消費者としている。

   その結果、年代や性別の違いを見ると、中古・シェア志向は若いほど強く、どの年代でも男性のほうが女性を上回っている=図表1のグラフ参照。久我さんはレポートで、「若い人や男性は、店舗で買うよりネットでの購入を好む傾向があり、ネットでの個人間の売買にも抵抗が弱い傾向があります。さらに、若い人は、安いものを求めて日頃からネットで情報を収集しているという特徴があります」と指摘している。

   グラフを見ると、60歳代男性の中古・シェア志向の度合いが、20歳代女性とほぼ同じレベルにある。若い女性は買い物にフリマアプリを使う人が多いが、60歳代男性でフリマアプリを使う人が、それほど多いとは思えない。これはどういうことか。

年代別にみた「中古・シェア」志向の強さ(図表1)
年代別にみた「中古・シェア」志向の強さ(図表1)

   J-CAST会社ウォッチ編集部の取材に、久我さんはこう答えた。

「このレポートのシェア志向は、フリマアプリだけを指しているのではありません。カーシェアやライドシェア(相乗り)、オークション、フリマアプリ、民泊、家事・育児の分担、クラウドファンディングなどのすべてを合わせたシェア志向と見ています。個別に見ると、オークションは男性が好み、フリマアプリは女性、民泊は男性など違いがあると思いますが、シェア志向は総合して見ています」

公務員は節約意識から中古品でも気にしない

   職業別にみると、男女ともにシェア志向が最も強いのが学生。次が意外にも、公務員という結果だった=図表2参照。その理由について久我さんは、こう語る。

「どちらも中古品を気にしない傾向が強いですが、ニュアンスが少し違います。学生はネットの購買を好み、ネットの口コミなど多くの情報を見たうえで、中古品でも気にしないで手に入れようとします。一方、公務員は堅実、慎重な消費態度、つまり節約意識から中古品でも気にしないという違いがあります。また、公務員は貯蓄意識が高く、安全や環境に配慮する意識が高いという特徴があります」
職業別にみた「中古・シェア」志向の強さ(図表2)
職業別にみた「中古・シェア」志向の強さ(図表2)

   一方、女性では「無職・専業主婦」のシェア志向の弱さが目立つ=図表2参照。しかし、メルカリなどのフリマアプリでは、主婦が子供服やおもちゃなど家庭の不用品を売り買いするケースがよく見られる。このギャップを、どうみればいいのだろうか。 久我さんは、

「専業主婦は、家計の節約からできるだけレンタルやシェアで済ませたいという意識が強いのですが、女性全体と比べて、ネットでの個人間売買に対する不信感が強い傾向があります。それがネックになっていたのですが、逆に言えば、専業主婦層に利用が広がるフリマアプリは、信頼性や安全性をうまく訴えることに成功しているといえるでしょう」

と説明した。

年収1100万円「オトコのこだわり」がスゴイ

   年収別に比較すると、おもしろい特徴が見つかった。男女ともシェア志向のひとつ目のピークが年収200~400万円未満。つまり年収300万円前後にある。女性はその後、年収が上がるにつれてシェア志向がどんどん弱くなるが、男性は1000~1200万円未満の高所得層にふたつ目のピークがくる=図表3参照

年収別にみた「中古・シェア」志向の強さ(図表3)
年収別にみた「中古・シェア」志向の強さ(図表3)

   ひとつ目のピークは、男性は20~30歳代、女性は30歳前後にあたり、男女ともに非正規雇用の人が比較的多いから、主に経済的な理由から中古品やシェアを利用しているとみられる。しかし、男性の年収1100万円前後にふたつ目のピークがあるのはどういうわけだろうか。

   久我さんはこう語った。

「この年収の男性は40~50歳代で、正規雇用の人が多いです。この層は、自分の価値観やライフスタイルを重視して、商品を選ぶ傾向が強いです。『多少高くても品質の良いものを買いたい』『普及品より値段が少し張っても個性的なものが欲しい』といったこだわりのある消費態度が強い傾向があります」

   また、この層の男性はネット購買を好み、ネットでの個人間売買に抵抗が少ない。しかも、消費行動の調査では、「価格が品質に見合っているかどうかをよく検討する」というコストパフォーマンス意識が高いので、中古品やシェアを大いに利用している可能性があるという。

   ただし、年収1200万円以上になると、シェア志向は次第に下がっていく。

   久我さんは「それ以上の年収になると、もうコスパを意識しなくてもいい経済的な余裕が生まれるのかもしれません」と語った。(福田和郎)