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最低賃金改定で4割超の企業が給与体系を見直し 背景に人手不足

   今月(2018年10月)から順次、全国で最低賃金が改定されるが、それを受けて自社の給与体系を「見直した」「(見直しを)検討している」企業は44.0%にのぼることが、帝国データバンクの「最低賃金改定に関する企業の意識調査(2018年)」でわかった。

   政府主導による最低賃金の改定が続くなか、18年度の引き上げ額は、比較可能な2002 年度以降で最大。4 割超の企業が給与体系の見直しを実施(検討含む)していたことについて、同社は「最低賃金の引き上げが企業の給与体系に大きく影響したことがうかがえる」としている。

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企業の8割が賃上げ実施 採用時の最低時給、全国平均より高く

   2018年度の改定後の最低賃金は、全国平均で前年度から26円引き上げられ874円になった。地域別では都道府県ごとに24~27円引き上げられ、時給761~985円となる(別途、産業別最低賃金が定められる)。

   これを受けて、自社の給与体系を「見直した(検討している)」企業は44.0%。「見直していない(検討していない)」企業は40.0%となった。

   帝国データバンクが同様の調査をした16年9月時点と比べて、「見直した」企業の割合は9.0ポイント増え、最低賃金の改定が従来よりも給与体系を見直すきっかけとなっていることがうかがえる。

   採用時で最も低い時給は975円程度で、最低賃金の全体平均874円より101円高いこともわかった。業界別では「サービス」「建設」「不動産」、都道府県別では「東京都」「神奈川県」「大阪府」が1000円台だった。

「人材募集をしても低賃金だと応募がない」

   給与体系を見直した理由について、企業からは

「収益が以前より改善してきているので、社員に還元することを考えているほか、人材獲得・維持のためにも必要」(防水工事、北海道)
「人材募集をしても低賃金だと応募がない」(ガソリンスタンド、熊本県)
「最低賃金の引き上げに加え、消費税率引き上げが直近にあるうえ、社会保険料の見直しが控えているなか、社内においてはできる限り労に報いたい」(広告代理、大阪府)
「パートタイマー等の時給待遇者には同程度の引き上げを実施した。また、月給者については冬季賞与で加算する」(生鮮魚介卸売、宮城県)

といった声があがった。

   最低賃金のみならず、人手不足の中で人材の獲得、維持や将来の増税や社会保険の負担増を見据えて給与体系を見直している様子がうかがえる。

   また、今回の最低賃金の引き上げ額について、「妥当」かどうかを聞いたところ、「妥当」が43.8%で最多。「低い」の15.2%、「高い」の13.7%を大きく上回った。

   政府は最低賃金の引き上げで、収入増加による消費の活性化などを期待しているものの、消費回復への効果についての質問には、「効果がない」とする企業が54.6%で半数を超え、「効果がある」と考える企業は9.0%にとどまった。

   なお調査は、全国の2万3101社を対象に、9月13日~30日に実施。9746社(回答率42.2%)から回答を得た。10月15日の発表。