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「専業主婦」って罪な存在? 30代以下の女性で「罪悪感ある」7割

   「夫に養ってもらっているという引け目がある」「いいご身分ね、と働いている女友だちから嫌みをいわれた」――専業主婦の6割近くが罪悪感や、後ろめたさを感じていることがわかった。

   特に「罪悪感がある」と答えた人は30代以下の若い世代と、子どもがいない人に多く、ともに7割に達した。女性の活躍推進が叫ばれるなか、専業主婦が精神的に追い込まれている実態が浮き彫りになった形だ。

  • 年配の主婦ほど罪悪感は少ないが……(写真はイメージ)
    年配の主婦ほど罪悪感は少ないが……(写真はイメージ)
  • 年配の主婦ほど罪悪感は少ないが……(写真はイメージ)

「夢の専業主婦だね」と働くママ友が嫌み

   調査を行なったのは、主婦に特化した人材サービス「ビースタイル」の調査機関「しゅふJOB総研」で、2018年11月2日に発表した。

   それによると、「専業主婦である」ことに罪悪感や後ろめたさがあるかどうかを聞くと、「ある」(25.4%)と「少しはある」(31.2%)を合わせて、約6割の56.6%の人が何らかの引け目を感じていることが分かった。「ない」という人は41.7%だった。

   年代別にみると、若い世代になるほど後ろめたさを感じる人が多くなり、30代以下で7割近くの70.1%、40代で60.7%、50代以上では45.7%だった=図表(上)参照。また、子どもがいるかどうかで比較すると、子どもがいない人は7割近い69.6%が後ろめたさを感じているが、子どもがいる人では半数の54.2%にとどまっている=図表(下)参照

子の有無別の「主婦であることの後ろめたさ」の割合(しゅふJOB総研提供)
年代別の「主婦であることの後ろめたさ」の割合(しゅふJOB総研提供)
年代別の「主婦であることの後ろめたさ」の割合(しゅふJOB総研提供)
子の有無別の「主婦であることの後ろめたさ」の割合(しゅふJOB総研提供)

   いったいどういう理由でうしろめたさを感じるのだろうか。自由に記入する回答をみると、こんな声が――。

「子どもが幼稚園から小学校に上がった時、想像以上に共稼ぎの人が多く、親しくなった時に、『夢の専業主婦だね』と言われた。また、『毎日何しているの?』と詮索されることも。後で聞いた話だが、働くママたちで集まった時、『健康なのに働かないなんて』と言われていたようだ」(40代)
「子育てや家事、地域の活動など、それなりに忙しくしていたが、収入がないことに常に後ろめたさを感じていた。何かを買う時、子どものことであっても、必ず夫に聞かなくては悪いと思う」(30代)
「養ってもらっている事実、社会的な地位がない事実。育児は子どもによって雲泥の差があり、家事は人によってスキルも、やる・やらないというボーダーもバラバラなので、大変さも努力も理解されないこと」(40代)
「勤務していた時の同僚が昇進したり、ワーキングマザーとして活躍したりしている話を聞いた時、入社時は同じスタートラインだったのに、こんなに環境が違うのか、自分は何も成長できていないと感じる」(30代)
「子どももいなくて、何の存在意義がないと感じてしまう」(50代)

60代は「専業主婦であったことを誇りに思う」

   一方、後ろめたさなど感じないという人の声はこうだ――。

「3人の子育てと家事で手一杯。子育てに専念して何が悪いの? 保育園に入れて働くほうが、皆さんの税金を使っているので、後ろめたい気になるかと思う」(40代)
「子育て後に仕事に復帰し、同僚が小さい子を預けて仕事をしているのを見て、子育てを楽しむ時間がないことを可哀そうに思った」(50代)
「専業主婦は過酷な労働だ。企業戦士である夫の健康維持に努め、食事、睡眠など細やかに管理する。育児にしてもそうだ。三つ子の魂百までとしっかり抱きしめ、無添加の良質の食事を与えて、夫同様、もしくはそれ以上に気を使ってきた。達成感があり、専業主婦であったことを誇りに思う」(60代)
「時代がまだ共稼ぎが多くない時だったから、当たり前だと思った」(60代)

   J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じた「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長は、こう語る。

「女性の就業が促進される一方で、あえて働かない道を選んだり、働けなくなったりした主婦が、肩身の狭い思いをしている可能性があると思い、調査しました。子どもがいるかいないかで罪悪感に違いが出るのは、子育ては非常に負担が多い分、こどものいない人は家事をしているだけの生活と感じるからでしょう」

「専業主夫」という選択があってもいい

   世代間でも大きな差が出た。若い人ほど罪悪感が強いが、これは年々共稼ぎ世帯が増え、専業主婦世帯が少数派になっているからだという。独立行政法人労働研究所のデータによると、1980年には、専業主婦が約1100万世帯に対し、共稼ぎは約600万世帯で、専業主婦の方が2倍近く多かった。ところが、両者の数は1997年前後に逆転、2017年には専業主婦は約640万世帯、共稼ぎは1100万世帯と、逆に専業主婦が半分に激減している。

   川上さんはこう指摘する。

「つまり、現在の50代が30代以下だった1997年頃は、専業主婦と共稼ぎはほぼ半々で、専業主婦に対する抵抗感が少なかったのです。むしろ、それまでは専業主婦であることが当たり前だった時代が長かったので、主婦が働くことに対する考え方が、今とは全く異なっていました。現在は、共稼ぎが当たり前の時代に移っています。『働かない』専業主婦に対する罪悪感が次第に強まっていると考えられます」

   しかし、そもそも専業主婦であることは罪なのだろうか? 川上さんはこう力説した。

「回答の中に、『自分が収入を得ていないことで、買い物を躊躇する』というコメントがあります。しかし、『主婦であることに誇りを感じる』という声もあるように、主婦業そのものに価値があることも事実です。家庭の運営には収入を得ることが欠かせないのと同様、家事をすることも欠かせません。夫が家事に専念する『主夫』という選択もありえます。それぞれの夫婦が互いに収入と家事のバランスを取り合って、共同作業で支え合うことが大事だと思います」

   なお、調査は2018年5月23日~6月4日に、インタネットを通じて815人の専業主婦経験者を対象に実施した。

(福田和郎)