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【外国人に聞く!】世界で「異質」なニッポンとその自覚がない日本人 本当に必要な施策はなに?

   「令和」の時代を迎えて、いよいよ本格的に動き出す外国人の受け入れ拡大。外国人材は人手不足の解消への期待が大きいものの、実際に雇用を進めようとすると、企業には低くないハードルが待ちかまえているようだ。

   現在、日本でインド料理店と旅行代理店を経営するインド人のバット ロマシュさんは、幼い頃から日本で暮らしてきたこともあり、外国人として日本で働くこと、暮らすことの難しさや感じている「壁」も、逆に日本のいいところもわかっている。外国人から見た「日本」について、聞いた。

  • 「世界から見るとニッポンは個性が強く、異質なんです」と、バット ロマシュさんは語る
    「世界から見るとニッポンは個性が強く、異質なんです」と、バット ロマシュさんは語る
  • 「世界から見るとニッポンは個性が強く、異質なんです」と、バット ロマシュさんは語る

日本という「個性的」な国

   ―― 暮らしや働き方で、海外と比べて日本が改善したほうがよい点を教えてください。

バット ロマシュさん「日本という国は、世界的にみても個性が強く異質なんですよ。日本人にはわからないかもしれませんが、たとえば国連などでいろいろな国がある中で『Japan』って出てくると、アジアの先進国ですし、『おっ』となる。
しかも、日本は売りモノがいっぱいある国なんです。マナー文化であったり、世界で唯一の被爆国という史実があったり、平和国家であったり、いろいろある。結局、日本は個性が強く、その個性が好きな人が海外にはいっぱいいるんです。だから、日本が間口を広げて、『ぜひ、来てください』って言ったとき、本来であれば『来たい』という人には困らないと思うんですよね。
ですから、日本に来る外国人が、来日してから、より日本を好きになっていくという状態をどうつくるかということが大事なんだと思いますね」

   ―― やはり日本は暮らしにくいですか。

バットさん「改善してほしいと思うところはあります。たとえばベジタリアンには、日本は住みづらいですね。こんなことがありました。ベジタリアンにとって、居酒屋はすごく臭く感じるんですよ。肉のニオイがするんです。なので、居酒屋で野菜のメニューを頼めばいいかなって思ったんですが、そもそも、お店に入れないんです。
コンビニに行っても食べられるものが、おにぎりくらいしかありません。でも外国人には、おにぎりを食べる習慣がないですよ。結局何を食べるかというと、イチゴやクリームが入ったスイーツ・サンドイッチ。イスラム圏の人たちは、豚はエキスでもダメですからね。宗教的な、いろんな制約があって食べられないものはありますよね。
そんなことなので、うちのインド料理店のシェフも店でしか食事はしないんです。食べ物が限られると接する人も限られてきます。インド人シェフはインド人シェフとしか会わないみたいな。そうなると、日本人との交流がまったくなかったりするし、暮らしていくことが不安になる。日本の方も不安じゃないですか。外国人だけが『なにを固まって、やってるんだろう』みたいな。そういう意味でも、食べ物って大事だと思いますね」

言葉、文化、慣習...... 日本人が思っている以上に高いハードル

   ―― やはり日本語のハードルは高いですか。

バットさん「はい。たぶん、日本人が思っている以上に高いですよ。でも、単に言葉だけではないんです。日本には年間3000万人もの外国人旅行者が来ていますが、その7割ぐらいが中国や香港、台湾、韓国の方ですよね。英語圏の人は約3割。インド人は年間で10万人くらいしか来日していないです。つまり、ふだん自国の言葉で話す機会が少ないですから、それだけでストレスになります」

   ―― 日本語は、同じ言葉でも意味やニュアンスが違うことがありますから。慣習も、外国人にはわかりにくといいます。そのあたりもご苦労されたと思いますが。

バットさん「いまも、苦労しています(笑)。たとえば、温泉行ったときですけど、温泉出るときに小さいタオルと大きいタオルがあるじゃないですか。風呂場から上がって、着替えるときに小さいタオルで一度カラダを拭かなきゃいけないですよね。水がしたたり落ちないように。それを知らなくて、そのまま脱衣所に行ったら怒られました。
日本の文化は細かなところがありますよね。長く日本に住んでいても、わからないことって多いですよ。なぜかというと、ふだんはインド人の家庭で育ち、インド人の家族と暮らしているからなんですね。だから、そこは教えてもらわないとわかりません」

   ―― 外国人労働者が増えると、「治安が悪くなる」という日本人の声があります。どのように思われますか。

バットさん「外国人労働者も、日本の暮らしに不安ですよ。よく知らないんですから。なにされるか、なにが起こるか、わからない。だから、受け入れる日本人の気持ちもわからないわけではありません。でも、それは双方に不安があるからなんですよね。それを取り除くことが大切だと思います」

   ―― なにか、よい方策はありますか?

バットさん「たとえば、『江戸川インド人会』があります。インド人の会長さん(編集部注:ジャグモハン・チャンドラニさん)が西葛西にやって来るインド人の方々のサポートに取り組んでいて、いろいろと相談に乗ってくれたり、地域と交流する場を設けてくれたりしています。
これから日本語がおぼつかない外国人がいっぱい増えてきます。マナーや仕事のやり方などがわからなくて、馴染めなくて、ストレスだけが溜まって。ご指摘のように、外国人がなにか犯行に走るということは想定できます。そうなる前に、外国人がきちんと相談できる相手を見つけておくこと、相談できる機関を設けておくことが必要だと思いますし、国や行政がまずはそこに力を入れるべきだと思います。
世界では今、どこへ行っても移民受け入れが問題になっています。日本は、移民ではありませんが、外国人を積極的に受け入れようという、そこも異質な国なんです。日本が四方を海に囲まれている島国であることが、いかに恵まれているか。欧米みたいに、歩いて入国しちゃうなんていうことがないんですから。それは、いわば来日する外国人を選べることにもなります。
そうであれば、来日した彼らを、日本で暮らしやすくしてあげることで、しっかり働き、定着もすると思います。もともと治安がいいのですから、日本で働きたい、暮らしたいと思う外国人は少なくないと思いますよ」
西葛西駅周辺には多くのインド人が訪れる
西葛西駅周辺には多くのインド人が訪れる

(おわり)