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迷える人、必読! TDLのスゴイ「DNA」 働くあなたは試されている!

   彼女にミッキーマウスと一緒の写真を撮ってあげたい? そんな軽い気持ちでアルバイトを始めた高校生がディズニーランドの文化、キャストの先輩たちの姿勢、ウォルト・ディズニーの教えを学び変わっていきます。

   「ミーティングとは話し合いでなにかを決めること。評論家はいらないんだ」。東京ディズニーランドのアルバイトを通して、ヤンキー少年が社会人として成長し、さらに企業研修を教えるまでになった体験とはなんでしょうか――。

「新版 社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった」香取貴信著(あさ出版)
  • 東京ディズニーランドのスゴい「DNA」は脈々と……(写真はイメージ)
    東京ディズニーランドのスゴい「DNA」は脈々と……(写真はイメージ)
  • 東京ディズニーランドのスゴい「DNA」は脈々と……(写真はイメージ)

ルール違反でも見つからなければ関係ない!?

   サービス業に関わらず、スタッフを抱えている上司にとって、もっとも悩ましいのがルールの徹底ではないでしょうか。ここで、ルールの徹底を体験したエピソードを紹介します。 著者の香取貴信さんは、

「私がいた当時、 東京ディズニーランドには厳しいルールが存在しました。『身だしなみ』ひとつとっても、男性・女性それぞれに細かくルールが定められていました。たとえば、 髪の毛についても、染めてはいけない、 男性の髪の長さは耳にかかってはいけないなど、かたちにいたるまで、学校の校則のように決まっていたのです」

   がんじがらめの中で、香取さんは......。

「『ルールがあろうがなかろうが、見つからなければ関係ないでしょ』。新人の頃だったら髪の毛が耳にかかる前に床屋へ行っていたのですが、ちょっと伸ばしてみようかなあ、と甘い誘惑に負け、髪の毛を伸ばし始めたのです」

   髪を伸ばし始めて数日が経った頃、香取さんは「やばいかなあ?」と思いながら出勤してみると、意外にも誰からも注意されることなく、1日が過ぎていきます。「なんだ、けっこう大丈夫じゃないか!」という気持ちが芽生えてきました。

   数日が経ったある朝のこと、いつものように出動し現場に行くと、うしろから「お・は・よ・う! 香取さん」と声をかけてくる人物がいました。

   「あっ、おはようございます。町丸さん」。町丸さんは、次のように続けます。「男性の髪の長さはどこまでだった?」。「耳にかからないように、です」と香取さんは答えます。「香取さんの髪はいまどうですか?」。「耳にかかっています」。「どうする?」と町丸さん。

   「きょう、切ってきます」「どっちを?」「へっ!どっちって?」。町丸さんはハサミを取り出しました。選択肢は2つだよ。髪の毛を耳にかからないように切るか、耳を切ってしまうか。このままじゃ勤務できないよね。

   「えぇぇぇぇ~」。シャキシャキシャキシャキという音が響き渡ります。

仕事に必要なことがよくわかる本

   町丸さんは、香取さんの上司にあたる人です。そこでキツイ指導が待っていたのです。いまなら、パワハラになりそうなエピソードですが、これは数十年前の話。筆者がバイトをしていた有名なフライドチキンのお店でも似たようなことが行われていました。

   「おぉ~、けっこううまく切れたよ!でもちゃんと床屋に行ってきたほうがいいね。香取さん、ちょっと調子に乗っていたでしょ! 見つからないと思って!」と町丸さん。

「はっ、はい」

   香取さんは、しどろもどろです。

   「見つからないわけないじゃん!」。ディズニーでは、とくに身だしなみについてのルールは厳しく、守れていない場合は現場に出ることが許されないのです。

   本書を通じて、ディズニーランドでアルバイトを始めた著者が高校生時代に感じたこと、職場から学ぶ体験、緊張と失敗、戸惑い、感謝の気持がよくわかります。仕事を教える姿勢、サービスの考え方など、著者の試行錯誤から、読者に「気づき」を与えていきます。

   サービス業に関わらず、一生懸命な気持ちは相手に響くものです。たとえば、ベテラン社員の豊富な知識は魅力でも、新人の一生懸命な気持ちと姿勢で「買おう」と思ったことはありませんか。

   そこで働くキャストの一生懸命な思いが、ディズニーランドをつくっているのです。ゲストの「思い出」を大切にされるディズニーランドの姿勢が伝わってくる一冊です。(尾藤克之)