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【BuzzBiz2020】思いきり破壊してスッキリ! 「やってはいけないことを、より楽しく、よりFUNNYに!!」

   2019年5月、日本では初めてとなる「モノが壊せるサービス」が新登場した。「やってはいけないことがしたい」という人間の本能的な欲求を満たす空間創りを追求し、付随するさまざまなサービスやコラボ企画も始まっている。

   大学時代にこのビジネスチャンスに注目し、その後、仲間4人とこのビジネスを立ち上げた株式会社BrickWallの河東誠(かとうまこと)社長に、事業立ち上げの経緯や今後について話を聞いた。

  • バットで思いきり「モノ」を壊せる!(写真は、BrickWallの河東誠社長)
    バットで思いきり「モノ」を壊せる!(写真は、BrickWallの河東誠社長)
  • バットで思いきり「モノ」を壊せる!(写真は、BrickWallの河東誠社長)

将来必ず日本に上陸することが予見できた

―― BrickWallのサービス内容を教えてください。

河東誠社長「2019年5月、浅草(東京都台東区)にモノを壊すことができる空間、『REEAST ROOM(リーストルーム)』をオープンしました。食器や空きビンなどのワレモノや、電子レンジや扇風機などの家電を、バットやバール、ゴルフクラブなどを使って思いのままに壊すことができるというサービスを提供しています。
2008年にアメリカで始まり、今では世界各国でも展開されていますが、日本ではこのREEAST ROOMが初めてとなります。
サービスのコンセプトは『やってはいけないことを、より楽しく、よりFUNNYに!!』で、あくまでもエンターテイメントとして、友人や家族とワイワイ言いながら、やってはいけないことができる空間、という位置づけです。大勢で楽しみながら利用していただきたいので、REEAST ROOMも、大人数で利用すれば、安くなる料金体系になっています」

―― なぜ、このサービスを日本にも導入しようと思ったのでしょうか?

河東社長「大学4年生の時、ニュースアプリでシンガポールの同じサービスが紹介されているのを見て、『世の中にこんなにおもしろいサービスがあるんだ!』と、ワクワクしたのがきっかけです。日本でもこのサービスを導入できないかと思い、事業計画書を作ってみると、ビジネスモデルがきちんと作れて収益性もあり、ビジネスとして成り立つことがわかりました。同時に、国内外のマーケットを調査したところ、海外で爆発的に伸びている事業でしたが、日本ではまだ導入されておらず、将来は必ず日本に来ることが予見できました。
さらに、このサービスについて100人ほどにインタビューしたところ、『世の中から求められている』ことを、しっかり確認できたことが決め手となりました」

会社勤めしながら、起業資金を調達

―― どのような点にワクワクしたのでしょうか。

河東社長「本来、社会でモノを壊すことは、暴力的でやってはいけないこととされていますよね。でも、誰でも一度は、『やってはいけないことをしたい』と思ったことがあるはずです。社会的な制度や秩序が整備されていくほど、本能的な自我を表現したいという人は増えるのではないでしょうか。
そんな人間の本能的な欲求を楽しみながら、満たすことができるという点に魅かれました。何より『私だったらやってみたい』と。ならば、同じような人たちがたくさんいるのではないか。そんな思いが原点にあります」

―― 実際に事業を始めるまでには少し時間がかかっていますね。

河東社長「この事業の起業を考えたのが2016年で、当時はまだ大学生でした。インターンシップ先で知り合った仲間たちにこの事業の話を持ちかけ、4人のメンバーで起業を決めたものの、事業資金がまったくありませんでした。
そこで私は、すでに就職先が決まっていた会社に半年間勤め、資金を貯めながら、財務の知識を学びました。メンバーたちも、それぞれアルバイトなどで資金を貯め、資金のメドがついたので、2019年1月に会社を設立。5月にサービス開始にこぎ着けました」
「クラウドファンディングで集めた資金でアメリカを視察した」という河東社長
「クラウドファンディングで集めた資金でアメリカを視察した」という河東社長

―― 事業をスタートするにあたり、クラウドファンディングもされたそうですね。

河東社長「クラウドファンディングで集めた70万円ほどで、メンバー4人でアメリカに視察に行きました。同じサービスを展開している会社の社長に話をうかがって、ビジネスのコンセプトを再確認したり、事業を運営するうえでの安全対策を教えてもらったりするなど、多くの情報を得ることができました。
お客様につなぎの服やヘルメットの着用を義務付けるという点は、アメリカのサービスから学んだことです」

経済的に豊かになって母を海外旅行に連れていきたい

―― 起業に興味を持たれたのはいつ頃でしょうか。

河東社長「大学2年生になった頃には、自分でビジネスを立ち上げたいという目標を持つようになっていました。高校まではバスケットボールを真剣にやってきて、目標に向かって充実した日々を送っていたのですが、大学進学にあたって学費を自分で稼がなくてはならず、バスケットはあきらめることになりました。目標を失ってつらい日々でしたし、アルバイトを始めて稼ぐことの大変さを知りました。
私は母子家庭でしたので、高校までは母親が寝る暇を惜しんで働いたお金でバスケットをやらせてもらっていたんだと気が付きました。ダブルワークをしながら、兄と自分のためにすべてを捧げてくれていた母に、親孝行したい。そのためには、私自身が経済的に豊かになって、海外旅行に連れていってあげることができるような人間になりたいと思ったのです。
大学4年生の時には1年間休学して、インターンでベトナムのハノイで一からビジネスを構築するスタートアップも経験しました。帰国後は、起業スクールに入り、仲間やメンターたちと切磋琢磨しながら、起業のノウハウを学びました」
地下1階、アーティストとのコラボにも積極的に取り組む
地下1階、アーティストとのコラボにも積極的に取り組む

―― この事業の課題はありますか。

河東社長「おかげさまで、このサービスはお客様からも好評で、先日は1日で80名がいらっしゃいました。今後は、店舗を複数に増やすことを検討しており、そのためにも、まずは1号店であるこのお店の収益性をしっかりと構築していくことが求められます。私たちのサービスは、エンターテイメント性は非常に高いものの、購入頻度が低いという傾向にあります。今後の店舗展開に必要な資産を作っていくために、固定客をどのように作るのか、近郊地域のお客様をどのように取り込んでいくのかといった点が課題です」
モノを破壊しつくしてスッキリ!
モノを破壊しつくしてスッキリ!
  

―― 今後、どのような事業展開を考えていますか。

河東社長「今は、地下1階にモノを壊す部屋と自由に落書きができるスペース、1階に斧を投げるサービスとクロスボウを撃てるサービス、そしてカフェ&バーを併設しており、お酒を飲んだりおしゃべりしたりできる空間も提供しています。要望に応じて、コース料理も提供でき、会社のイベントや福利厚生でも使っていただけるようにしています。アメリカでは、チームビルディングの一環でこういったサービスを使っている会社もあるそうです。
今後は、原価で飲み物を提供する『原価バー』や、さまざまなアーティストとのコラボ、壊したモノを別のモノに生まれ変わらせる、アップサイクルグッズの販売なども考えています。目標としては、近いうちに都内に2号店をオープンさせ、将来的には全都道府県に1店舗はあるようなサービスを目指したいですね」

(聞き手 戸川明美)