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【日韓経済戦争】「安倍首相は韓国ドラマの熱狂的ファン!」韓国紙で読み解くその理由とは

   じつは、安倍晋三首相は韓国ドラマの熱狂的なファンだったはずなのに、どうして最近、米国ドラマばっかり見ているの~と、韓国紙がすねている。というより、皮肉を利かせているというべきか。

   それにしても、安倍首相が韓国ドラマの大ファンだったとは! 本当なら国家機密級の大スクープだが、いったいどういうことか。韓国紙で読み解くと――。

  • 韓国ドラマが好きだった? 安倍晋三首相
    韓国ドラマが好きだった? 安倍晋三首相
  • 韓国ドラマが好きだった? 安倍晋三首相

現在は米国ドラマ「ホームランド」にどっぷりハマる

   米国ドラマに最近ハマっているという安倍首相のつれない態度に悔しさをにじませるのは、中央日報(2020年1月13日付)の「韓国ドラマ『第5共和国』熱狂ファンの安倍首相、最近は米ドラマに夢中」という記事だ。

「映画・ドラマ鑑賞が趣味の安倍首相が、最近は米国ドラマにはまっていると、毎日新聞が1月13日報じた。山田孝男特別編集委員のコラム『風知草:お気に入りのドラマ』でだ。コラムによると、安倍首相が最近楽しんでいる米国ドラマはCIA(米中央情報局)女性要員を主人公にして米国の中東作戦を扱った『ホームランド』と、英国王室現代史の裏面を赤裸々に描いた『ザ・クラウン』だ。ネットフリックスで放映中の二つのドラマを安倍首相は主に就寝前に見ているという」

   「風知草」は「永田町を知り尽くしている」という山田孝男記者の名物政治コラム。毎週月曜日に掲載される。「風知草」によると、安倍首相はこの二つの米英ドラマを時折、就寝前に見ているそうだ。特に「ホームランド」は、CIAと米国の戦争の内幕を、巻き込まれる側の表情や息づかいも盛り込み、重層的に描いている。

   その中には、空爆でイスラム過激派幹部を暗殺する作戦も登場する。アジトと思われた標的は結婚式場で多くの民間人が死ぬ。民間人巻き添えを否定するアメリカ政府。流血を暴くSNS投稿と反米デモ......。ちょうど今年1月3日に米軍によるイランの司令官の暗殺事件があり、アメリカとイランの戦争危機があったばかりだ。

「いま、安倍首相はサウジアラビアなど中東3カ国を歴訪中だ。日本は国際政治へさらに分け入り、平和を探らねばならない」

と、山田記者はコラムを結びつつ、このドラマを安倍首相はどう見ただろうかと思いを馳せている。

全斗煥の血みどろ権力抗争劇「第5共和国」が好きなワケ

安倍首相は「第5共和国」のファンだったと報じる中央日報(2020年1月13日付)
安倍首相は「第5共和国」のファンだったと報じる中央日報(2020年1月13日付)

   ところで、中央日報が引用した「風知草」の記事には、安倍首相が韓国ドラマのファンであるという内容は1行も出てこない。しかし、中央日報はこう続けるのだ。

「安倍首相はかつて韓国の政治ドラマ『第5共和国』の熱狂ファンでもあった。俳優イ・ドクファが全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領を演じたこの全41部作のドラマは、日本でDVDが販売されている。東京の日本情報筋は『安倍首相は普段、渋谷区の私邸から首相官邸まで出退勤するが、時々執務室のある首相公邸で宿泊することがある。安倍首相はその時に集中的に映画やドラマを見ると聞いている』と伝えた。年末年始休暇には昭恵夫人と映画館に行ったりもする。『ゴルフで汗を流し、映画とドラマで緊張を解く』のが安倍首相のストレス解消法だ」

   「第5共和国」とは韓国MBC制作の大長編実話政治サスペンスドラマだ。1979年10月に朴正煕(パク・チョンヒ)大統領がKCIA(韓国中央情報部)部長に暗殺される。そして同年12月、全斗煥(チョン・ドゥファン)国軍保安司令官がクーデターで実権を握り、戒厳令を発する。民主化を要求する多くの市民を虐殺した光州事件などを経て、1980年に大統領に就任、「第5共和制」をスタートするまでの凄まじい権力抗争を描いている。

   なぜ、安倍首相がこんな血みどろの韓国ドラマを好んでいると、中央日報は書くのか。じつは、中央日報は2018年8月3日付でも「韓国ドラマ『第5共和国』を見たという安倍首相、政治手法も学んだ?」という見出しで韓国ドラマ好きと言われる背景をこう説明している。

「『第5共和国』の全41話の中には、軍事クーデターと光州事件のほか、学生活動家や社会運動家を一斉に検挙して軍隊で教育する三清(サムチョン)教育隊、政権の批判を許さない言論統廃合、民主党創党妨害事件などがエピソード別に描かれている。過去の韓国の言論統制シナリオ、政権に批判的な民間人の監視などが安倍首相の権力管理法と似ているのではという分析も一部で提起されている」

   中央日報が、全斗煥元大大統領の政権に批判的な民間人監視システムと、安倍首相の政治手法がよく似ている例として挙げているのが、元文部科学省事務次官・前川喜平氏のケースだ。前川氏は、加計学園の獣医学部新設問題で「首相官邸の圧力があった」と国会で証言、その後退職した。安倍首相は政権を裏切った前川氏を民間人になった後も許さなかった。文部科学省が、前川氏が中学校で講演した内容の録音データを提出するよう学校に要求している。

モリカケ問題で追及されるストレス解消を韓国ドラマに?

   つまり、全斗煥元大統領の独裁的な権力掌握法と言論統制、政権批判勢力の弾圧方法が、安倍首相の政治手法に合っているから熱心に見ているのではないかというわけだ。それにしても、そもそも安倍首相が「第5共和国」の熱心なファンだという根拠はどこから来たのか。

   中央日報の「元ネタ」と思われるのは、夕刊フジ・オンライン版(2017年8月1日付)に掲載された「永田町・霞が関インサイド:公邸泊まりが多い安倍首相、『首相動静』載らず密会にもってこい 『極秘会食』の後に韓国ドラマも見ていた」というタイトルの記事だ。筆者は『安倍政権365日の激闘』という著作もあるジャーナリストの歳川隆雄氏だ。

   記事が書かれた2017年は、安倍首相は1月から7月まで、森友学園と加計学園の「モリカケ」問題で、野党とメディアから激しい追及を受け続けた時期だ。歳川隆雄氏は、この期間に安倍首相が私邸に帰らず、官邸にばかり泊まり込んでいることに注目した。 そして、こう書いている。

「安倍首相は知己に『なぜ、オレはこんな目に遭わなければならんのだ。十分に説明しているじゃないか』と加計問題で追及されたことに、いらだちを隠さなかった。筆者は安倍首相が久しく公邸に泊まるケースに注目してきた。新聞各紙の政治面に前日の『首相動静』が掲載される。だが、首相が公にしたくない人物との面会の場合、公邸でひそかに会えば、『首相動静』に載らない。公邸泊まりは密会にはもってこいだ」
「では、安倍首相は公邸で何をしているのか。日本料理店『なだ万』から仕出し弁当を取り寄せて『極秘会食』する。それでも9時半には終わる。その後はどう過ごしているのか。テレビドラマだ。加計問題の真っただ中の4月から6月にかけて見ていたのは、韓国MBC制作の『第5共和国』だ。全斗煥がクーデターで実権を握り、戒厳令下の光州事件を経て大統領に就任するまでの権力奪取を描いている。安倍首相は、このドラマから何を学んだのだろうか」

と、歳川隆雄氏は結んでいる。

   たしかに連日、国会やメディアから激しく追及されていた安倍首相、深夜、官邸のベッド上で何を思いながら血なまぐさい韓国ドラマを見ていたのだろうか。

(福田和郎)