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結果を出す「職場の空気」をいかに作り出すか 成長企業に共通の3項目とは?

   平成の30年間(1989~2019)で時価総額を伸ばした上位10社についてつぶさにみると、それぞれの「職場環境データ」の中に共通して数値が高い項目があった。「風通しのよさ」「20代の成長環境」「社員の士気」といったもので、これらを職場にもたらすのが「OPENNESS(オープネス、開放性)」だ。

   変化の激しい時代を迎えて、企業にとっては「事業戦略」ともども「組織戦略」の重要性が増している。これまでは客観視できなかった「職場の空気」が可視化されつつあるとして、それをビジネスの新指標として活用を唱えるのが、本書「OPENNESS 職場の『空気』が結果を決める」だ。

「OPENNESS(オープネス) 職場の『空気』が結果を決める」(北野唯我著) ダイヤモンド社
  • 会社の数だけある「職場の空気」だが…
    会社の数だけある「職場の空気」だが…
  • 会社の数だけある「職場の空気」だが…

3つの要素で構成

   「オープネス」は、三つの要素で構成されている。「経営開放性」と「情報開放性」「自己開示性」だ。

   「経営開放性」は、「経営者が社員にどれだけ情報を開示しているか――。取締役らの顔を名前、思想などを、現場のメンバーが認知、理解している割合」。「情報開放性」は、「自分の仕事を意思決定するうえでの十分な情報が容易にアクセスできる状態にある(と感じている)割合」。そして「自己開示性」は、「従業員がありのままの自分の才能を自由に表現しても、他者から意図的な攻撃を受けないと信じている割合」だ。

   企業内部のこうした細部にわたることは、これまではブラックボックス的なもので、経営者の経歴などが有価証券報告書に記載されている程度だった。だが、変動性(Volatility)や不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexty)、曖昧性(Ambiguity)が強まるVUCA(ブ―カ)の時代になって、企業の内外から多角的な判断材料のニーズが高まったきたことを背景に、財務データのように「職場環境のデータ」も可視化されてきている。

   本書で使われているのは、その一つであるオープンワーク社のデータ。320万人の会社員から寄せられた840万件以上のクチコミに基づき、企業の年収、待遇から職場環境までを評価した。『転職の思考法』などの著作でも知られる本書の著者、北野唯我さんは同社とアドバイザー契約を結んでおり、オープネスの発見の手助けを得たという。

風通し、若手の成長、社員の士気

   平成30年間に時価総額を最も大きく伸ばした10社には、トヨタ自動車やホンダ、ソニー、任天堂などポジティブなイメージのある企業名が並ぶ。日本経済新聞(19年4月27日付)からの引用だ。記事は、時価総額を最も減らした企業が並記されたもので、本書ではこれらの企業について、オープンワークの職場環境データをあてはめて比較している。

   「最も減らした企業」の一つには、ソニーのライバル企業とされるメーカーの名前があるが、オープンワークのデータでみると、ソニーと比べ、オープネスがもたらす「風通しの良さ」「20代の成長環境」「社員の士気」で差が出ているのがわかる。

   「オープネス」を構成する3要素が高いということは、風通しが良く、若手の成長環境に優れ、そうしてことが相まって社員の士気が上がり、チームとしての会社が強化されるということだ。

   同紙のデータ分析では平成元年時点で上場している企業だけを対象にしたもので、平成の間に時価総額を大きく伸ばしたにもかかわらず、リストに含まれていない企業もある。ユニクロのファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、リクルートホールディングスなどだ。

   これら3社の職場環境データをみると、共通して高い項目は、10社のときにみた「風通しの良さ」「20代の成長環境」「社員の士気」の3項目に加え「人事評価の適正感」がある。

   本書では、事業の成功との相関関係などをみながら「組織戦略」の重要性を述べているが、本書のスタンスは決して事業に優先して組織戦略を練るよう促すものではないとしている。

   「『社会的に意味のあるサービスや製品の存在』がないと、企業は成り立たない。ただ、それでも職場環境のデータが重要であると述べる理由は『相対的な重要性が代わってきたから』である」と著者。今後かならずやってくる生産年齢人口の減少時代。「組織戦略」の重要性はますます高まるという。

「OPENNESS 職場の『空気』が結果を決める」
北野唯我著
ダイヤモンド社
税別1500円