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「暖冬」の影響、企業にジワリ...... アパレル、ホットフード&ドリンクに打撃

   東日本、西日本で1月の平均気温が1946年以降で1位の高温を記録するなど日本列島は記録的な暖冬を経験したが、この異変が企業の業績にジワリと痛手を与えている。

   東京商工リサーチ(TSR)が159社の上場企業を対象に行った暖冬をめぐる調査によると、90.5%に相当する144社が「マイナスの影響がある」と報告した。

   2019年10月の消費増税による消費マインド後退と合わせ、ダブルパンチとなった格好だが、今後にはさらに、新型コロナウイルスの感染拡大の状況しだいで消費がさらに冷え込む懸念がある。同社は、「今後ハアパレル関連のほか、外食を含むサービス業など、さまざまな業種でも影響が広がる可能性があり、上場企業の業績下振れが増える可能性も高まっている」と指摘している。

  • 暖冬が直撃……
    暖冬が直撃……
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雪不足でスタッドレスタイヤも不振

   調査によると、2020年2月25日時点で「暖冬」関連による影響や対応について情報開示した上場企業は159社だった。なかでもアパレル関連は、冬物衣料の販売不振となり業績の下方修正が相次いでいる。

   マイナスの影響を報告した144社を業種別でみると、トップは製造業で56社(構成比38.8%)と約4割を占めた。次いで、小売業(46社)、卸売業(26社)、運輸業(8社)と続いた。

   製造業56社を取り扱い品別でみると、1位は繊維製品(16社)、2位は化学(11社)だった。冬物衣料が振るわなかった影響で、その原料の化学製品を扱う企業の大半でも、売上高の不振や在庫の評価損の計上などで業績の下方修正につながった。

   また、降雪量の減少や暖かい日の増加でスタッドレスタイヤ、暖房機器関連が落ち込み、ゴム製品(6社)と金属製品(5社)の会社にも影響を及ぼした。

暖冬で業績を「上方修正」した会社はどこだ!?

   業績予想を修正(見込みを含む)したのは、159社中の30社。このうち28社が、暖冬が売上高や利益の減少を招くなど、業績にマイナスの影響を及ぼしたとしている。

   28社を業種別でみると、製造業の13社が最多。次いで、小売業(11社)、卸売業(4社)の順。28社のうち15社で、コートやダウンなど重衣料を中心とした冬物衣料の販売が大きく落ち込んだことによる、冬物商戦の苦戦が報告されている。

   また、5社がマイナスの影響を開示した食料品のうち、井村屋グループは業績予想を下方修正。冬場に需要が伸びる「肉まん・あんまん」などの点心販売が伸び悩んだ。

   温かいドリンク類の需要も低調で、サッポロホールディングスは、連結子会社のポッカサッポロフード&ビバレッジが販売するスープ商品「じっくりコトコト」シリーズが苦戦。名糖産業は、飲料用の粉末ココア販売が振るわなかったという。

   カイロ類も販売が苦戦。エステー、小林製薬、オカモトのメーカー3社だけでなく、カイロ用鉄粉を扱うパウダーテック(JASDAQ)も原料需要が伸び悩んだ。

   暖冬がプラスに作用し上方修正に動く企業も2社あった。岩盤や基礎工事などを手がける特殊土木大手の日特建設と、JASDAQに上場する電力小売りのグリムスだ。

   日特建設は降雪地での施工が順調で、業績を上方修正。グリムスは、暖冬による電力市場の安値推移が追い風となったほか、電力の調達価格の下落もあって、3月本決算で上方修正を見込んでいる。

   経済産業省が2月28日に発表した1月の商業動態統計速報によると、小売販売額は前年同月比0.4%減の11兆7890億円で、減少は4か月連続。自動車が伸び悩み全体を押し下げたほか、暖冬傾向で冬物衣料が百貨店やスーパーで振るわなかった。

   一方、新型コロナウイルスの感染拡大を背景にマスクや除菌製品が牽引する格好で医薬品・化粧品が伸びた。

   なお、TSRの調査は、国内の各証券取引所に株式上場する企業を対象に、2020年1月1日~2月25日の適時開示資料をもとに情報を収集し、調査した。2月26日の発表。