J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

売り上げを伸ばす決め手は「PR」 「いいね!」ゲットするスキルを磨け

   近年、インターネットは広告媒体としての評価がグングン高まり、2018年のネット広告費」は1兆7589億円となり、地上波のテレビ広告費の1兆7848億円に迫っていた(電通調べ)。19年はテレビを抜いたかもしれない。

   いまや会社が売り上げを伸ばす手段として欠かせないインターネットだが、本書「0(ゼロ)円PR」(日経BP)がフィーチャーするのは、PRツールとしての可能性だ。

   SNSの拡散にうまく乗ることでブームを引き寄せることができ、しかも広告のような費用は不要と、コストパフォーマンスは満点なのだ。著者の笹木郁乃さんは、自ら培ったPRスキルで数々の成功実績を重ねてきた専門家。まずは「広告」と「PR」の違いから。

「0円PR お金をかけずに顧客に愛されて売上を伸ばす方法」(笹木郁乃著) 日経BP
  • 商品・ブームのヒットを作るのはPR活動
    商品・ブームのヒットを作るのはPR活動
  • 商品・ブームのヒットを作るのはPR活動

「タピオカ」ブームをつくったのはネットだ!

   メーカーなどのマーケティングの担当者は、新製品が開発されるとさまざまに知恵を絞り会議を重ね、テレビや新聞、ネット向けに「広告」をつくって、そのプロモーションを行っている。広告費用は年々上がっているのだが、残念ながら広告の費用対効果は下がっているという。費やした広告料ほど、売り上げが上がらないことは珍しくないそうだ。

   しかし、その一方で現代のヒット商品の中には広告などほとんど打っていないにもかかわらず、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムやLINEなどのSNSを通じて爆発的な勢いで情報が拡散され、売り上げの増加につながっている商品やサービスが多くある。

   その好例は、さまざまな場所に続々と新しい店ができている「タピオカミルクティー」だ。たまたま買った人が「いいね!」にふさわしいと感じて、ハッシュタグ(#)付きで写真を投稿。これが拡散すれば、店側は広告費を使わずに情報が広まり、購買意欲をそそられた不特定多数の来店につながる。それが大ヒット、大ブームへと発展していった。

   広告は、会社が広告料を支払い、商品やサービスの情報を好きなように伝える。会社から消費者、利用者ら個人への「一方通行」の伝言板だ。これに対してPRは、第三者である消費者や利用者に「いいね!」と、推薦してもらう状況を作り出す活動。テレビなどのマスメディアの影響力が後退し、スマートフォンなどのパーソナルメディアが盛んに利用されるようになった現代では、PRが大きな可能性を秘める。

SNS時代に最終的に評価されるのは、こんな会社

   インターネットの普及、ITの進歩で日本では、それ以前と比べて、人が接する情報量は数百倍以上になっているという。発信されても見向きもされない情報がどんどん増えている状態だ。

   そうした状況下で、人の記憶に残る情報とはどんなものか。「それは企業が一方向に伝えてくるものではなく、自分の知り合いや、自分が好きな人がオススメしてくれるクチコミ情報」なのだ。

   そのクチコミに乗せるうえで忘れてはいけないのは、「SNS時代に最終的に評価されるのは、質のいい商品、サービスを提供する会社」であるということ。

「会社が大きいとか小さいとか、お金をどれだけ投入したかといったことは関係ない。フェイクレビューなど、途中で雑音が混じるのは難しいところだが、クチコミが力を持ったことで、広告が主流だった時代より圧倒的に、誠実な会社が評価されやすくなっている」

   こう述べる笹木さんは、山形大学工学部卒業後、トヨタグループの自動車部品メーカー、アイシン精機で研究開発職を務めたのちの2009年、25歳のときに、寝具ベンチャー、エアウィーヴの正社員となった変わり種。当時、同社はまったくの無名メーカーで、どうやって認知度を上げていくのかが課題だったが、ここで笹木さんが注目したのがコストのかからないPR活動だった。

小さな会社でも無名の個人でもデキる!

   エアウィーヴは、もとは釣り糸の製造機械を生産していた赤字の中小企業で、その立て直しを高岡本州社長が任されたのが始まり。くしゅくしゅっと絡まった糸をみて高岡社長が「いいクッション素材になるのではないか」とひらめき、マットレスパッドを開発した。

   笹木さんらのPR活動で、じわじわとエアウィーヴの評判が広がり、後にフィギュアスケートの浅田真央さんが愛用していることがわかって大ブレークした。それも、製品の品質の高さがあればこそと笹木さん。同社に5年間勤務し、この間の売上高は1億円から115億円に伸びた。

   笹木さんはその後、名古屋の愛知ドビーという鍋メーカーでPR担当を務めて2016年2月に独立。独立後は企業向けのPR指導など手がける一方、経営者やフリーランス、企業の広報担当者らにPRスキルを伝える3か月の長期講座「PR塾」を3年にわたり開催した。本書には、そのPR塾のエッセンスが詰め込まれている。

   本書では、提供する情報の掲載順位、各SNSの共通点や相違点、会社の規模に応じたプロモ―ションの進め方などについて詳述。「小さな会社でも無名の個人でも、コスト0円から始められる」と、笹木さんはとにかくトライしてみるよう、促している。

「0円PR お金をかけずに顧客に愛されて売上を伸ばす方法」
笹木郁乃著
日経BP
税別1600円