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「コロナ・ショック」からの反発、だから売る? 「相場を張る」のではなく、必要だから取るリスク

   新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界の株式市場は2020年2月に急落したものの、3月20日頃から反発しています。

   意外に戻りが早いことや「感染第2波」の懸念などもあり、個人投資家からは「今は、割高なのか?」とか「ここで、一たん売却して様子をみたほうがいいのか?」といった声が聞こえてきます。

  • 「コロナ相場」は上がったり下がったりするけれど……
    「コロナ相場」は上がったり下がったりするけれど……
  • 「コロナ相場」は上がったり下がったりするけれど……

投資信託を買うことは「ゴール」まで「価格変動」を受け入れること

   欧米主要国で、段階的に経済活動が再開されているものの、「コロナ」が完全に収束したわけでもなく、状況次第で市場は再び大きく変動する可能性が考えられます。

   しかし、こうした時に相場に一喜一憂するのではなく、資産運用を始めた時に決めた目的と時間軸に立ち返ることが大事であると考えます。

   ポイントは「相場を張る」のではなく、将来、いくらにしたいかの目標金額(ゴール達成=必要利回りの獲得)のために、「納得ずく」で価格変動への覚悟を持つことです。

   たとえば、10年後に資産を2倍にしたいという目標を立てたとします。この場合、必要利回りは年率7.2%です。元本保証の預貯金であれば、途中の変動なしに、直線で10年後のゴールまで到達します。

   一方、投資信託は元本保証ではないため、当然、途中で価格が上昇したり、下落したりします。そのため、投信を買うということは 「直線をあきらめて、曲線を受け入れて、後から振り返って笑う」ということと言えます。

   預貯金は直線なので事前に利回りが決まっていますが、投信は曲線であり、しかも事前にどんな曲線になるかはわかりません。これが預貯金と運用の大きな違いです。

   しかし、預貯金であっても、投信であっても、10年後に同じゴールに到達すれば、結果は同じことで、どちらも年率の利回りは7.2%となります。その意味で、投信を購入したあとの考え方がとても重要になります。

   それは、将来、いくらにしたいかの目標金額(ゴール達成=必要利回りの獲得)のために「納得ずく」で価格変動への「覚悟」を持つことです。

では、いつ売却するのか? それは「ゴール」が達成したとき

   次に資産運用をはじめてから、5年が経過した場合を考えてみます。価格が上下しながら5年後に100が150になったとします。下図1をみると、直前の大幅下落から急上昇していますので、「やれやれ、ようやく上昇してきたか」と、一たん売却したくなるかもしれません。

   しかし、10年間で設定した目標金額(ゴール)から見れば、まだ折り返し地点に過ぎません。短期的な価格変動で売買の判断を行なうのではなく、立てた目(ゴール)に対して検討すべきではないかと考えます。今回の「コロナ・ショック」からの反発でも、立てたゴールの途中であるならば同じことが言えます。

(下図1)5年後に「100」が「150」になった
(下図1)5年後に「100」が「150」になった

   たとえば価格が上下しながら、5年後に200になったとします。この場合、期間10年で立てたゴールに到達したわけですから、一たん、売却しても良いかもしれません=下図2参照

   ここで押さえておきたいことは、マーケットの短期的な見通しをもとに売却の判断をするのではないということです。これまでの価格変動に耐えることができたのは「相場を張ってきたわけではない」という強い考えがあったからです。

(下図2)5年でGOALを達成したら......
(下図2)5年でGOALを達成したら......

   つまり、長期的には「経済は右肩上がり」という考え方です。これは、人間の欲に限りがない以上、「経済は右肩上がりで成長する」、「であるなら、それを反映する株価は長期で右肩上がりになるはず」といった意志ある楽観論です。

   6月下旬にIMF(国際通貨基金)が最新の景気見通しを発表。2020年の世界経済の成長率を前年比マイナス4.9%としました。「コロナ」の影響で厳しい見通しが出されましたが、私たちの目的と時間軸にとって大事なのは、IMFが四半期ごとに発表する、2020年と2021年の成長率のスピードを議論するのではなく、お金が必要になって投信を解約するだろう、5年後、10年後、20年後に世界経済は縮小していく一方なのか、それともやはり拡大していくのか――。ただ、それだけだと思います。

   個人投資家が資産運用をスタートする時に、将来いくらにしたいかの目標金額(ゴール)を決めて、「ゴール達成=必要利回りの獲得」のために、自分にとって必要だから取るリスクと、「納得ずく」のリスクテイクができるならば、たとえ再び「コロナ」の影響で市場が大きく変動することがあったとしても、動揺することなくゆったり構えて前向きな資産運用ができるのではないかと考えます。(日興アセットマネジメント マーケティング部 山口亮二)