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【襲来!新型コロナウイルス】「都民は不要不急の都外移動を控えて」「必要ない。自由だ」東京都VS政府バトルの軍配はどっちに?

   新型コロナウイルスの感染対策をめぐり、東京都VS政府のバトルが起こっている。

   連日100人超えの新規感染者を出している東京都の小池百合子知事が、周囲の県への感染拡大を防ぐため、都民に「不要不急の都外への移動の自粛」を呼びかけたところ、菅義偉官房長官らが「必要ない。これまでどおり自由だ」と一蹴したのだ。

   いったい、なぜ対立するのか。ネットの声では「東京都のほうが正論だ」と圧倒的多くが都に軍配を上げているが......。

  • 「都外への移動は自粛を」と呼びかけた小池百合子都知事(2019年12月撮影)
    「都外への移動は自粛を」と呼びかけた小池百合子都知事(2019年12月撮影)
  • 「都外への移動は自粛を」と呼びかけた小池百合子都知事(2019年12月撮影)

都民が旅行を控えれば観光キャンペーンが盛り上がらない

   2020年7月7日付主要新聞(オンライン版)の報道を総合すると、小池都知事VS菅義偉官房長官・西村康稔経済再生相のバトルは、こうして始まった。

   東京都内で再び新型コロナウイルスの感染者が連日100人を超え、ついに131人に達した7月4日、小池都知事は記者会見を開き、「不要不急の他県への移動はご遠慮願いたい」と呼びかけた。さらに都知事選で再選を果たした翌日の7月6日にも依然として100人超えが続いているため、同じ呼びかけを行った。

   すると、小池知事の発言に対して当初は、「知事の責任で呼びかけをされるということだろう」と静観していた西村大臣が6日の報道番組で「相当感染が広がっているような印象を地方に与えている」と苦言。菅官房長官も7日の記者会見で「体調の悪い方などには移動は控えてほしいが、(政府としては)一律に移動自粛を要請する必要があるとは考えていない」と述べ、こうした見解を西村氏が小池氏に伝えたことを明らかにしたのだった。

   西村大臣は6日夜に小池都知事に電話で、「熱などの症状や違和感がある方はそもそも外出を控え、県をまたぐ移動も控えてもらう。そのことは基本的対処方針や通知で示しており、理解をいただきたい」と伝えたといい、「(小池都知事は)理解はしてもらったと思う」と記者団に述べた。

   ところが、小池都知事は少しも「理解」していなかったのだ。小池都知事は7日夜、都庁で記者団にこう説明した。

「4日にその旨(編集部注:都民に不要不急の都外への移動を控えること)を西村氏に申し上げ、6日の『ぶら下がり取材』でも同じことを申し上げた。その時は、そういう反応はされてなかったのでちょっと驚いている。(自粛の呼びかけについては)感染者が多く出ている東京なので、都民もよく分かっている。都外への移動には気をつけてくださいと、配慮をお願いしたところ」

と、改めて自粛を呼びかけたのだ。

   いったいなぜ、政府側は東京都に対してむき出しともいえる猛反発の姿勢を鮮明にし始めたのか。毎日新聞(7月7日付オンライン版)「小池知事と対立再燃? 県間移動、西村担当相『これまで通り自由』」が、こう伝える。

「政府は医療提供体制に余裕があることに加え、重症化しやすい高齢者の感染例が少ないことから、緊急事態宣言の再発令には慎重だ。感染拡大防止と経済活動との両立を目指す中で、小池氏の発言が『水を差した』ことに不満が高まっていた」

   産経新聞(7月7日付オンライン版)「東京都、休業再要請に現実味 小池氏が対象を限った効果的な対策を検討」は、政府側の思惑を、もっと具体的に説明する。

「東京都の経済規模は実質国内総生産(GDP)の20%、神奈川・埼玉・千葉の周辺3県を含めれば34%を占め、緊急事態宣言の首都圏再発令のダメージは大きい。一方、小池氏は都民に対し、不要不急の他県への移動を控えるよう呼びかけている。打撃を受けた観光業界を支援する政府の『Go To キャンペーン』は夏休みの観光需要が高まる8月に開始する予定だが、国内人口の1割を占める都民が旅行を控えれば盛り上がりを欠く」

   だから、小池知事に「余計なことをするな」と釘を刺したというわけだ。

   しかし、東京都の感染拡大は首都圏だけでなく、全国の府県に脅威を与えている。各地の知事が「なるべく東京に行かないで」「行くときは注意して」と呼びかけている。

全国各地の知事が県民に「東京に行かないで」

「自粛は必要ない」と小池知事を批判した菅義偉官房長官(2017年5月撮影)
「自粛は必要ない」と小池知事を批判した菅義偉官房長官(2017年5月撮影)

   朝日新聞(7月3日付オンライン版)「『期待裏切られた』感染拡大の東京、各県知事が自粛要請」などによると、埼玉県の大野元裕知事や、三重県の鈴木英敬知事、京都府の西脇隆俊知事、群馬県の山本太一知事らが不要不急の東京訪問を避け、やむを得ず東京に行く際には感染予防対策を徹底するよう呼びかけている。

   島根県に至っては対策本部会議を開き、県民が首都圏を訪問する際には新宿区歌舞伎町などの繁華街を絶対に避けるよう要請。会議後、丸山達也知事は「都は都民に向けてもっと具体的な感染防止の要請や注意を示すべきだが、その期待を裏切られた」と東京都を批判したのだった。

   こうした東京都VS政府のバトルに対し、ネット上では「東京都の言い分が正論だ。政府の対応は大人げない」と東京都に軍配を上げる声が圧倒的に多い。

「他県移動は自由とはいえ、感染が多い自治体の首長が周りに配慮して声明を出すことはよいことです。わざわざ国が否定する必要も意味もない。小池知事も不要不急の移動は控えようと呼びかけただけで、絶対に行くなとは言っていない。注意喚起してナイスだよ」
「小池さんが感染を抑え込もうと努力しているのは伝わってくる。西村大臣らはそれを邪魔しているようにしか見えない。Go Toキャンペーンが是が非でもしたいことしか考えておらず、無責任すぎる」
「率直に小池知事のほうが国民感覚だと思う。表向きには言わないが、田舎の友達によれば『東京の人とは接触したくない』というのがホンネ。全国各地の知事が『東京に行くときは注意して』と呼びかけているのが証拠」
「都民ですが、西村大臣の地元の兵庫県には遊びに行っていいってことですか? 西村大臣、危機感なさすぎですよ」
「小池都知事、国なんか向かなくていいよ。あなたは都民から選ばれた人なのだから、国の指針がおかしいと思ったら東京都のため、そして東京を支えてくれているそれ以外の地域のためのことを思い切ってやればいい」

九州豪雨を見て東京で今災害が起こったら...

Go Toキャンペーンを成功させたい(?)西村康稔経済再生大臣(2019年10月、政府インターネットテレビより)
Go Toキャンペーンを成功させたい(?)西村康稔経済再生大臣(2019年10月、政府インターネットテレビより)

   また、米国と比較する意見も。

「アメリカの州知事を見てごらん。トランプ大統領が経済を再開しろといっても、独自に州知事命令で再びロックダウンを始めた州が多い。都道府県知事にも権限が与えられているのだから、自信をもって感染防止の対応をしてほしい」

   また、九州豪雨を見て、危機感を募らせる意見があった。

「夜の街、若者が多いから、医療体制が逼迫していないから...と政府は言います。九州の豪雨の様子を見て、いま首都圏で災害が起こればどうなってしまうのかとゾッとする。市中感染が広がった中で避難所に人が集まればクラスターになるのは目に見えている。異常気象が常になっているのだから想定外はもはや想定外ではない。首都直下地震だっていつ起こるかわからない。経済ももちろん大切だが、打てる手は打たないと取り返しがつかなくなる」
「経済を優先するのが悪いみたいな言い方ですが、経済が回らないと被災地の復興もままならないし、コロナ対策も十分にできませんよ」

(福田和郎)