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【襲来!新型コロナウイルス】GoToキャンペーン「東京外し」は菅官房長官の小池都知事イジメか? コロナ対策そっちのけにネットの怒り沸騰!(2)

   政府は2020年7月16日、22日から開始する「GoToトラベル」キャンペーンの対象から東京都を外すと突然発表した。推進役の国土交通省の担当者たちさえ「寝耳に水」というあわただしさだった。

   折も折、同日に東京都の新型コロナウイルスの感染者は296人に達し、過去最多となった。医療界やネットの声では「延期すべきだ」という声が高まっている。

   突然の「東京外し」の裏には何が起こったのか? 主要メディアから読み解くと――。

  • 房総の小湊鉄道沿線の風景
    房総の小湊鉄道沿線の風景
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医療専門家「最低限、首都4都県を対象から外すべき」

   いずれにしろ、「東京外し」によって、GoToキャンペーンの恩恵を得られるかどうか、難しい線引きを迫られることになる。「東京除外」のポイントは、「東京都を発着地とする旅行と、都内居住者が都外に出る旅行は補助の対象外にする」ということだ。このため線引きがややこしくなった。

   朝日新聞(7月17日付)「『東京除外』どこまでセーフ? 線引き複雑」が取り上げるのは次のようなケースだ。

【補助対象になる】
◇横浜市に住む一家が、羽田空港発着の航空機を使って北海道のホテルに泊まるパッケージツアー(東京都を経由するが、東京都民ではなく、目的地も東京都以外だから)

【補助対象にならない】
◇東京都世田谷区に住む一家が千葉県にある成田空港発着の航空機を使い、沖縄県のホテルに3泊する(発着点は東京都以外だが、東京都民だから)
◇大阪市に住む大学生が新大阪―東京駅の新幹線を使い、新宿のホテルに宿泊する(東京都民ではないが、東京都が目的地だから)。

   ただし、最後の大阪の大学生の場合、横浜を宿泊地にして、東京都内の旅を楽しむという「抜け道」があり、補助対象になる。このように「穴」だけのザルの仕組みになりそうだ。

   朝日新聞はこう指摘する。

「このほか、旅行商品の購入者のうち、都民だけをどうやって補助の対象外にするかも(免許証の提示や住民票の提出など)、複雑な手続きが必要になりそうだ。そもそも、東京都民だけではなくても、仕事などで都内に毎日のように訪れている人は多い。それでも、都民以外は補助対象になるため、不公平感を感じる都民も出てきそうだ」

   今回の「東京除外」でGoToキャンペーンを強行することについて、医療の専門家はどう見ているのだろうか。時事通信(7月16日配信)「『東京だけ除外、中途半端』GoTo見直しに批判 専門家」は2人の専門家の厳しい見方を紹介している。

(図表1)GoToトラベルで割引になる泊りがけ旅行(国土交通省のホームページより)
(図表1)GoToトラベルで割引になる泊りがけ旅行(国土交通省のホームページより)
(図表2)GoToトラベルで割引になる日帰り旅行(国土交通省のホームページより)
(図表2)GoToトラベルで割引になる日帰り旅行(国土交通省のホームページより)

   昭和大学の二木芳人客員教授(感染症学)は「東京だけ除外するのは極めて中途半端だ」として、こう述べた。

「全国で感染者が増え続け、さまざまなクラスターが発生している。今のタイミングでの全国規模の実施は見送るべきだ。どうしても始めるなら、東京と一体の生活圏で感染者が急増している埼玉、千葉、神奈川各県も最低限対象外にすべきだ。旅行客が首都圏から来たと分かれば、観光地の人も良くは思わないだろう」

と指摘。また、国は宿泊施設での検温実施などの感染対策を求める方針だというが、

「一体誰がどのようにチェックするのか。明らかに準備不足だ。キャンペーンは一度見送り、感染状況が落ち着いた時に仕切り直すべきだ」

と訴えた。

   関西医科大の西山利正教授(公衆衛生学)も、こう警鐘を鳴らした。

   「全国的に若者を中心に感染が拡大するなど、以前と広がり方が変わってきており、『第2波』と考えた方がいい。多くの人が動けば感染者も当然増える。クラスターが依然発生している。業界ごとのガイドラインは策定されたが、利用者側への啓発が十分でない。防止策を取る飲食店やホテルを明示する仕組みも重要になる」と話したのだった。

「東京差別の安倍政権はコロナより先に終息するだろう」

(図表3)感染予防の旅のエチケット(国土交通省のホームページより)
(図表3)感染予防の旅のエチケット(国土交通省のホームページより)

   ネット上では、「GoToトラベルそのものを延期すべきだ」という意見が圧倒的に多い。ヤフーニュースの「みんなの意見」で、「GoToトラベルは東京を除外して7月22日から実施、どう思う?」と聞いたところ、7月17日14時時点(投票数:20万8123票)で、「今はどの地域でも実施するべきではない」(82.0%)、「首都圏や大阪など他の地域も除外するべきだ」(12.1%)、「問題ない」(5.2%)、「わからない・どちらとも言えない」(0.7%)という結果だった。

   ネット上では、こんな批判の声であふれている。

「今日(7月17日)東京は293人になった。きのうの参院予算委員会、参考人の児玉龍彦東大名誉教授の声を震わせながらの訴え。『私は極めて深刻な事態を迎えつつある東京のエピセンター(震源地)化という問題に関して全力をあげての対応をお願いしたく参りました』『ゲノム配列の報告をみると、ウイルスが東京型、埼玉型に変わってきている。つまり東京にエピセンターが発生している。いま国の総力をあげてこれを制圧しないとニューヨークのような事態になります』と。致死率が時間と共に上昇する、今やる対策は1カ月後の百倍の価値がある、政治が信念をもって国民を守ろうとする意志があるかどうかだと言っていた。国と都で争っている場合ではない!」
「苦しんでいるのは観光業界だけではない。国民が危機感、自粛感を抱いているのに呑気にキャンペーンやっている神経を疑う。既に国内の移動は解除されているので、キャンペーンをやらなくても連休に行きたい人は行くし、感染者が多くて行きたくない人は行かない。個人で判断できる」
「兵庫県民です。今日新たに24人が感染したそうです。県が自粛を再要請する基準を超えました。大阪がどんと増えたからだと思います。私はステイホームの気持ちが強くなりました。全国で私のような考え方が増えれば、GoToは逆効果になりますね。そのうち、大阪や兵庫もGoToを外されるのでしょうか」
「また混乱を招いた政府ですね。GoToキャンペーン後に還付請求する方法なので、また還付金についても後手、後手になるのではないかな? 経済的に困っているのは観光業界だけではない。困っているのであれば直接資金援助する方法を考えて、感染拡大を抑える方法をとってほしい」
「東京都だけ除外では不十分ですよ。東京都と周辺県(神奈川県、埼玉県、千葉県)は通勤、通学等生活圏で一つと見たほうがよいです。全国的にじわじわと感染者が増えているのに、なぜ東京都だけを除外するのか理解に苦しむ。明らかに東京差別と捉えられても仕方ない愚策です。政府自らこういうイジメみたいなことを強行するとは...... もう政権末期かもしれません。コロナより安部政権の終息が早いかと思います」
「ふだんから念入りに予防して気をつけているごく普通の都民からしたら、なぜキャバ嬢とホスト、そしてそれらに依存(症)の客によって広められたコロナ感染拡大によって、都民がこんな差別的な扱いを受けないといけないのか憤慨だ。広がり出した時、小池知事も西村大臣も無策だったじゃないか」

   また、「抜け道」だらけの仕組みに疑問の声が。

「東京ディズニーランドに来るために、浦安や成田(ともに千葉県)のホテルに泊まるのは普通にやるんだよね。東京駅を経由してね。原宿や秋葉原とかにも足を伸ばしたりするし。それはいいわけだよね」

   一方で、「東京差別」とは思わないという声もあった。

「別に都民は差別されているから怒っているわけじゃない。外すのは構わないけど、やるなら各自治体の費用でやれよって話。国の財布から行う事業なのに、都民が外されるのはおかしい。国に税金を納めているのはみな平等だろ」
「都民ですが、別に差別とは感じていませんよ。ネットやメディアが『東京問題』で盛り上がるほうがウザったかったので、これで少し落ち着いています。個人的には『小池サン、よくやった』って感じです。年度内であれば何度でも使えるキャンペーンらしいので、時期を見て予定を立てればいいかなと思っています。あえて言うなら、都民は期間延長とかあったら嬉しいかなあ」

(福田和郎)