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銚子電鉄、コロナ禍で絶体絶命「売れるものは何でも売る!」で出てきたモノとは?

   千葉県の北東端、観光名所・犬吠埼を擁する銚子半島で6.4キロメートルの鉄道を運行する銚子電鉄。慢性的な経営難で知られているが、新型コロナウイルスの影響で、頼みの観光客の足が途絶え「創業以来の危機」に見舞われている。

   そこで同社では「売れるものは何でも売る!」と、なりふり構わぬサバイバル作戦の実施を決意。YouTube(ユーチューブ)に公式チャンネル「激辛(げきつら)チャンネル」を開設。その第1弾で、竹本勝紀社長が窮状を切々と訴えながら、意外な?「銚電グッズ」をアピールしている。

  • 銚子電鉄のユーチューブ公式チャンネル「激辛チャンネル」で窮状を訴える竹本社長
    銚子電鉄のユーチューブ公式チャンネル「激辛チャンネル」で窮状を訴える竹本社長
  • 銚子電鉄のユーチューブ公式チャンネル「激辛チャンネル」で窮状を訴える竹本社長

「年度末には... 経営破綻」も

   「激辛チャンネル」(#1)が公開されたのは2020年7月22日。オープニングでいきなり「年度末には... 経営破綻」の文字が浮かび、その横にマスクを着け、鏡越しの目がうつろな感じの竹本勝紀社長が捉えられ、間もなくして社長が「売れるものは何でも売る」と宣言して動画が動き出す。

   「なんといってもお金がない会社。持っているものすべてが古い、というよりおんぼろ」と竹本社長。背景の車両を示しながら「10年前に買った、中古のそのまた、中古...」と説明する。その後に、社員が制服を修理している様子が挿入され「ほつれたら何度でも縫い直して繰り返し使う。ずっと使い続けてます」と、経営努力をアピール。そして、通販番組よろしく「売り物」の紹介へと続く。

   「売れるものは何でも売る」つもりなのだが、どうやら、老朽化した車両の紹介や制服修理のシーン挿入は、売るものがあまりないことの伏線だったらしい。この動画第1弾の「売り物」告知は、線路に敷かれている石を入れた缶詰だ。銚子電鉄のものと、新潟・えちごトキめき鉄道、茨城・筑西市と栃木・茂木町を結ぶ真岡鉄道のものとの詰め合わせ。紹介役を務める車掌の女性は「ワックスかけしてあるのですごくきれいです」とアピール。価格は1650円(税込)で、銚子電鉄の通販サイト「銚子電鉄公式オンラインショップ」で購入できる。

8月公開の映画「電車を止めるな!」に賭ける

   銚子電鉄は1923年に開業し90年以上の歴史を持つ鉄道会社。1990年代後半から2000年代前半にかけて親会社の倒産などで経営危機に陥り、この時は、同社の「ぬれ煎餅」が名物となり、その購入などによる支援で一息つき廃線の危機を脱した。

   しかし、2011年の東日本大震災の影響で利用者数が減少し、また経常状況が悪化。沿線駅のネーミングライツ(命名権)売却などの対策を打ち出し、その後、2018年に「経営がまずい」にかけて開発した駄菓子「まずい棒」や、「サバイバル」にかけた「鯖威張る弁当」がヒットした。

   今回のコロナ禍は、その広がりや終わりが見えないことなどから、その危機は、竹本社長によると「創業以来の経験」。4月のある日には、1日の運賃収入が5000円以下ということがあり、ゴールデンウイーク中には、売り上げが前年比95%減という日もあった。

   こうした状況に竹本社長は、ユーチューブ「激辛チャンネル」の前に、さまざまな記念乗車券などを組み合わせた「廃線危機救済セット」や、銚電グッズとサングラスを組みわせた「お先真っ暗セット」などをオンラインショップで販売。これが好調だったこともあり、さらに通販での攻勢にでた。

   さらに8月には、経営難打開の目玉として取り組んだ映画が公開予定。クラウドファンディングで500万円の製作費を集めた「電車を止めるな!」がそれだ。千葉や東京、函館、新潟の4か所で8月28日から順次、上映される。

   銚子電鉄では、会社の起死回生につながるヒットを期待している。