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【コロナに勝つ!ニッポンの会社】アルコールの代役として注目される「次亜塩素酸水」 業界団体を立ち上げ「活用」を後押し

   新型コロナウイルスの感染が広がる前には、おそらく多くの人が「次亜塩素酸水」の名を聞いたことがなかったのではないか――。

   しかし、一定以上の濃度で新型コロナウイルスに対する有効性が認められた今、他の感染症予防や消毒などの用途も合わせ、正しい使い方や活用方法の普及が必要だ。

   そんな役割を担うべく、消毒剤メーカーなど関係12社が一般社団法人「次亜塩素酸化学工業会」を設立。2020年8月4日に、代表理事を務める石田智洋氏(株式会社ピュアソン専務取締役)や、空間環境事業などの株式会社グリーンウェルの水島昇社長らが「次亜塩素酸水に関するオンライン記者会見」を開いた。

  • 「次亜塩素酸化学工業会」の設立を発表する石田智洋代表理事
    「次亜塩素酸化学工業会」の設立を発表する石田智洋代表理事
  • 「次亜塩素酸化学工業会」の設立を発表する石田智洋代表理事

名称は「次亜塩素酸化学工業会」行政との連携強化

   新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、次亜塩素酸水は品薄になった消毒用アルコールの代替として注目され、広く使用されるようになった。

   次亜塩素酸水は、ウイルスや細菌のほか真菌(カビ)にも有効で、人間にとっては口に入っても皮膚に触れても安全な薬剤。低コストで、アルコールに比べて非常時の需要に対応が容易と「高いポテンシャル」が特徴だ。

   ところが、厚生労働省が3月に「次亜塩素酸を含む消毒薬の噴霧は効果不確実」との内容の事務連絡を出しことで、次亜塩素酸水がコロナには効かないという情報を、さまざまなメディアが報じた。

   また、経済産業省の評価試験をめぐる報道でも、中間報告の段階で「効果なし」と伝わり、次亜塩素酸水は一時「不正確な情報が氾濫」(石田智洋代表理事)する状態になった。

   こうした背景から、消毒剤メーカーなどの関係企業では、正しい情報を伝えるための組織や行政と連携できる企業連合が必要との認識が高まり、「次亜塩素酸化学工業会」設立の運びとなった。

   その後、次亜塩素酸水の感染予防効果については、経産省が独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)に要請して実施した有効性評価で、「塩素濃度が一定以上などを条件に有効」と確認されたことが最終的に発表されている。

   石田代表理事は、次亜塩素酸水が「空間噴霧に対応できる唯一の薬剤」であることから、「コロナ対策を念頭に、同会もその効果などの検証を行っていきたい」と話した。

空間噴霧で飛沫・飛沫核を不活化する

「空間噴霧」の効果について講演する川上裕司氏
「空間噴霧」の効果について講演する川上裕司氏

   これからの新型コロナウイルスの感染防止対策として、次亜塩素酸水が注目されているのは噴霧による効果だ。4日の会見で「次亜塩素酸水の空間噴霧による微生物対策」と題して講演した、国立病院機構相模原病院の客員研究員で、エフシージー総合研究所の暮らしの科学部部長を務める川上裕司氏によると、介護施設などの使用実績では、空間噴霧や直接噴霧と清拭の併用でインフルエンザやノロウイルスの感染抑制効果が顕著に示されたという。

   新型コロナには換気が効果的とされるが、夏はエアコンをつけ、閉めきりにしがち。室内で放たれた飛沫は落下するが、一部は水分が蒸発した飛沫核となって浮遊しエアロゾル感染の可能性が生じ、さらに水分が蒸発した飛沫核は、より高い空中を浮遊するようになり、空気感染につながる。

   川上氏によると、こうした環境の中で、加湿器などで気化した安全な濃度の次亜塩素酸水を常時空気中に存在させると、ウイルス飛沫核や病原となる微生物に接触する確率が高まり、感染リスクを低減する。

   また、噴霧した次亜塩素酸は、天井や床、家具などの備品に付着し、ウイルス飛沫核などに作用し続けることで不活化、殺菌して再感染のリスクを大幅に低減することが見込まれる。

   石田代表理事によると、次亜塩素酸水の空中噴霧について、消費者からは噴霧した瞬間から強い殺菌効果を発揮するなどの誤解も少なくなく、その是正に努めることも工業会の使命と考えている。

ホテルや航空会社で引き合いも 噴霧器の事例を紹介

左から、株式会社ジアグリーンの桑名晶子社長、株式会社グリーンウェルの水野昇社長。桑名社長が手にしているのは「ジアグリーン コアレ」
左から、株式会社ジアグリーンの桑名晶子社長、株式会社グリーンウェルの水野昇社長。桑名社長が手にしているのは「ジアグリーン コアレ」

   さらに会見では、株式会社グリーンウェル(東京都千代田区)が次亜塩素酸水を使用する噴霧器の新製品で、USB電源で動作して持ち運びできるタブレット式のパーソナル噴霧器「ジアグリーン コンフォルト」と、広さ約15畳(20平方メートル)に対応する中型噴霧器「シアグリーン コフレ」を紹介した。

   水野昇社長は「(シアグリーン コフレは)コロナ対策に頭を痛めている飲食店などに最適」と説明。8月初旬から全国で発売する。

   「ジアグリーン」シリーズの最大の特徴は、使用する次亜塩素酸水について、トリクロロイソシアヌル酸を主成分としてタブレット化した生成剤を使うこと。水道水にタブレットを投入して次亜塩素酸水をつくるもので、タブレットは未開封で最大3年間保存できる。

   シリーズを構成するのは、新商品を加えた3モデル。上級モデルの「ジアグリーン ブランシェ」は、約30畳(50平方メートル)の広さの空間に対応。水野社長によると、今後は東京都内の有名ホテルや大手航空会社などで導入の話が進められているという。

   工業会設立の発表で石田代表理事は、加盟社1社による「空間噴霧の実績例」を紹介。それによると、インフルエンザ予防を目的に140棟超(計6500室超)の高齢者施設で6か月~17か月にわたり、次亜塩素酸水の空間噴霧を継続実施しており、これまで、すべての場所でインフルエンザ患者の発生がゼロに抑えられており、健康被害も報告されていないという。