J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「20年前のIT技術で大騒ぎ」 でも、いいんです!「半沢直樹」は「ビジネスエンタメ歌舞伎」で大ヒット街道爆進中(生野あん子)

   みなさん、今季大注目のドラマ「半沢直樹」(TBS系)を、ご覧になっていますか。2013年に放送された前シリーズは、視聴率42%を叩き出した怪物作品。堺雅人さんが演じる主人公の銀行員、半沢直樹のセリフ「倍返しだ!」は流行語となり、日本中を沸かせました。

   7年ぶりとなる今作も、放送前から話題沸騰でした。最近公表されたデータによると、8月2日放送の第3話は、録画視聴を含めた「総合視聴率」が34.4%(参照データ)。日本人の3人に1人が見ていることになり、テレビ離れが著しい現代社会では間違いなく「大ヒット」ですね。

   そんな半沢直樹の第3話では、証券取引等監視委員会が東京セントラル証券に立ち入り検査をするシーンが印象的でした。

  • ドラマ「半沢直樹」はビジネスエンターテインメント歌舞伎だ!(写真は、TBS番組ホームページから)
    ドラマ「半沢直樹」はビジネスエンターテインメント歌舞伎だ!(写真は、TBS番組ホームページから)
  • ドラマ「半沢直樹」はビジネスエンターテインメント歌舞伎だ!(写真は、TBS番組ホームページから)

クラウド上の隠しファイルがバレバレ!?

   第3話では、オネエ口調で華々しく登場する金融庁の黒崎駿一が、半沢たちの逆買収計画書を暴こうと奮闘します。黒崎の執拗な捜索により、半沢が最も隠したいデータが「クラウド上の隠しファイル」に入っていることが判明。危機一髪! と思いきや、半沢はIT社長の瀬名洋介に助けを求めます。

   そして、瀬名のもとで働く天才プログラマーの高坂圭(吉沢亮)が、問題のファイルを無事に削除する......という流れ。

   大切な機密ファイルが、ゴミ箱アイコンの少し下にカーソルを進め、そこからさらに右へカーソルを進めた背景を数回クリックするだけで開けてしまうという設定にもニヤリとさせられましたが(カーソルがたまたま反応するリスクは...?)、わずか数ケタのパスワード(おそらく英小文字数のみ)を破るのに大騒ぎとか、いとも簡単に侵入できてしまう証券会社のシステムとか、IT初心者でも「そんなわけあるか~!」とツッコミたくなるエピソードが満載でした。

   ちなみに、SEとして働く知人に聞いたところ、「あれは20年以上前の技術レベルが前提。懐かしい気持ちになったよ」と、笑って言っていました。

   20年前のIT技術レベルで、現代の金融業界を描く半沢直樹。でも、良いんです。ビジネスの世界を通して、この作品が描くのは、敵と味方に分かれて泥臭い戦いを繰り広げる人間ドラマ。そこには、古いも新しいも超越した魅力があります。

設定が古くて大げさでも、大ヒットする理由

   そもそも半沢が、株価を操作しようと不正に手に入れた企業情報をマスコミにリークしたり、彼がもといた銀行の同期(及川光博演じる渡真利忍)が、銀行の内部事情を半沢に筒抜けにしていたり、ものすごい機密情報を飲食店内でべらべらしゃべっていたり......。

   ところどころ「現代のコンプライアンス的には絶対NG」なエピソードはありますが、それも視聴者にはスッと受け入れられています。

   なぜなら「半沢直樹」は、リアルな金融業界を映し出したドキュメンタリーではなく、金融業界を舞台にした「令和のニュービジネス歌舞伎」だから!

   今作には、前回から引き続き、多くの歌舞伎役者が出演しています。香川照之演じる大和田暁、金融庁の黒崎役の片岡愛之助、半沢を恨み復習しようとする本部の証券部長、伊佐山泰二役の市川猿之助。また、Tシャツにデニムというラフな格好で、尾上松也がIT企業の社長、瀬名洋介役を好演しています。

   こうした歌舞伎役者たちが、「顔芸」ともいわれる濃い演技を繰り広げているおかげで、半沢直樹は現代の「ニュー歌舞伎」として違和感なく受け入れられているのかもしれません。いわば金融ビジネスを扱う、ビジネスエンターテイメント歌舞伎なのです。

   そういえば今作で悪役を演じた市川猿之助さんは、以前、大人気漫画を歌舞伎化した「ONE PIECE歌舞伎」でも話題になりました。自然な流れで、テレビドラマ「半沢直樹」でも「伝統と現代社会の融合」が起きているのです(......本当か!?)。

   とにもかくにも、今後の展開がますます楽しみになってきました。半沢直樹、今作でも視聴率40%超えはあるでしょうか。(生野あん子)

◆ 日曜劇場 半沢直樹 ◆
TBS系。毎週日曜日21時から。主演は堺雅人。第1作は2013年7月7日から9月22日まで。2020年7月19日から、7年ぶりのシリーズ2作目が始まった。原作は池井戸潤。小説「半沢直樹」シリーズの「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」(第1作)、「ロスジェネの逆襲」「銀翼のイカロス」(第2作)がベースになっている。
現在、子会社で出向先ある東京セントラル証券から東京中央銀行本部・営業第二部次長に復帰した半沢直樹(堺雅人)が、経営破たん寸前の帝国航空の再建という難しい大型案件に取り組んでいる。