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【襲来!新型コロナウイルス】「あなたも詐欺の共犯者」持続化給付金支給に名義を貸す人が多すぎ! 全国の警察で摘発相次ぐ

   新型コロナウイルス給付金をめぐる悪徳商法があとを絶たない。2020年6月ごろまでは国民1人当たり一律に支給される現金10万円の特別定額給付金の詐欺が多かったが、7月以降は困窮した事業者に支給される持続化給付金をめぐる詐欺が急増している。

   ただ、持続化給付金の場合は、詐欺師にそそのかれた人物も「うまい汁」を吸う共犯者になるケース多いため、被害が表ざたになる例は少ない。国民生活センターでは「誘いに乗った人間の刑事責任も問われます!」と注意を呼びかけている。

  • あなたも詐欺の共犯です(写真はイメージ)
    あなたも詐欺の共犯です(写真はイメージ)
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1時間のバイトで100万円のうち20万円もらえるなら

   国民生活センターによると、新型コロナ給付金をめぐる相談は、今年5月1日から7月31日までの3か月間で4460件に達した。大部分は現金10万円の特別定額給付金に関する相談だが、7月に入ると、持続化給付金の不正受給を持ち掛ける詐欺が疑われる相談が大多数を占めるようになった。

   持続化給付金は、新型コロナで収入が半減した場合、中小企業には最大200万円、個人事業主には最大100万円を支給する制度。打撃をうけた人に素早く支給するためにネットを通じての申請が一般的で、本人確認も窓口で行なわず、ネットを通じて書類で行なうため特殊詐欺にはもってこいだ。

   たとえば、まず現金10万円給付に関する相談ではこんな事例がある。

【事例1】特別定額給付金の振込完了のハガキが届くとすぐに不審な電話で個人情報を聞かれた。
特別定額給付金の振込完了ハガキが送られてきた。ポストからハガキを取り自宅に入ると、すぐに電話が鳴った。出ると「政府の出向機関の者です。特別定額給付金が届いているかどうかを調査しています。無作為に選ばれたあなたに電話しました。特別定額給付金は受け取られましたか?」と聞かれた。受け取ったと答えると、「報告が必要なので調査しています。キャッシュカードと通帳を持ってすぐに下ろしてください。どこの銀行ですか? 口座番号も教えてください」と言われた。不審だったので電話を切ったが、口座番号を聞き出す詐欺だと思う。(60歳代、女性)

   明らかに詐欺グループが自宅前に張り込み、ハガキを投函して本人が受け取ったのを確認後に電話してきたのだった。最近の現金10万円詐欺の特徴は、すでに受け取った人が大半なので、「公的機関の調査」という名目で給付を受けた人に通帳などの持参を求めて、現金の引き出しを狙うケースが多い。

   さて、7月に入って急増している持続化給付金についてはこんな手口だ。

【事例2】大手プラットフォーム業者から「追加で持続化給付金を提供する」とのメールが届いた。
大手プラットフォーム業者が提供しているフリーメールアドレスを利用している。その業者から「追加で持続化給付金を提供する」という内容のメールが届いた。金額は30万円で最終受付だという。手続きについては添付のURLから行うとのことだった。私は、持続化給付金をもらえるような事業者ではないので、プラットフォーム業者名を騙った詐欺メールだと思う。(40 歳代、女性)

【事例3】携帯電話で持続化給付金を受け取るアルバイトを持ち掛けられた。
携帯電話に知らない事業者名を名乗る男から着信があった。バイトアプリに登録している人を対象にアルバイトの案内とのことだった。男の説明によると、「自宅近くの税務署へ行き電子申告の登録を行い、IDを受け取ったら、電話で IDと報酬の振込先口座を伝える。その後、振込先口座に持続化給付金100万円が振り込まれたら、80万円を手数料として支払い、残りの20万円があなたへの報酬になる。名目上は1か月のアルバイトとして扱われるが、実質1時間程度の作業で済む。定員は100人で残りが20人なので、急いだほうがよい」とのことだった。不審なので自分は断ったが、情報提供したい。(20歳代男性)

氷山の一角、情報提供は「不正」に不安になった人だけ

【事例4】友人から「弁護士が代理で持続化給付金を申請してくれる」と言われた。
友人から「弁護士が代理で持続化給付金を申請してくれる」と言われ、事業者でもないのによいのかと思ったが、収入がない時だったので紹介してもらった。無料通話アプリで、申請に必要な身分証、源泉徴収、確定申告の電子申告に必要な利用者識別番号等を提出した。現在書類作成中で、これから申請が行われるが、不正行為だという記事を見た。まだ受給していないが、どうしたらよいか。相手が本当に弁護士なのかも不明で、連絡先もわからない。(20歳代、男性)

   こうした事例でわかるとおり、持続化給付金の詐欺の場合、詐欺師に名義や個人情報を提供する「共犯者」の見返りとして100万円のうち20万円から30万円を受け取ることができるため、「被害相談」という形はほとんどない。「不正」に不安になった人が情報提供するケースがほとんどで、氷山の一角にとどまる。

   8月に入り、全国の警察で摘発が相次いでいる。日本経済新聞(8月12日付)「持続化給付金詐取疑い 男3人逮捕、100人以上申請か」はこう報じている。

「国の持続化給付金100万円をうその申請でだまし取ったとして、兵庫県警は神戸市東灘区深江本町、会社役員、依田利大容疑者(48)ら男3人を詐欺の疑いで逮捕した。県警は100人以上の名義を使って、中小企業庁がインターネット上に開設した持続化給付金の申請ページで、うその内容を申し込み、申請を繰り返したとみて調べている。県警は詐取した金が暴力団に流れた疑いもあるとみている」
(図表)持続化給付金詐欺を警告するポスター(中小企業庁のホームページより)
(図表)持続化給付金詐欺を警告するポスター(中小企業庁のホームページより)

   100人の名義を使って100万円ずつだまし取ったとすると、1億円以上荒稼ぎしたことになる。このほか、山梨県警や沖縄県警などでも詐欺グループの摘発が行われており、税理士が関与したケースもあった。

   国民生活センターでは、
「持続化給付金の受給資格がない人は、受給できると持ちかけられても絶対に応じないでください。サラリーマンや学生、無職の人が自身を事業者と偽って申請・受給することは犯罪行為(詐欺罪)にあたります。あなた自身も罪に問われます」
と、警告している。

(福田和郎)