J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「半沢直樹」のブラックな世界はウソではなかった? 大手8社の銀行VS証券の働き方を比べると勝者はどっちだ?(1)

   金融界を代表する2つ企業業界...銀行VS証券ではどちらが今、働きやすいのだろうか。

   話題沸騰中のテレビドラマ「半沢直樹」(TBS系)第1~4話では、主人公の半沢直樹が東京中央銀行から出向した子会社の東京セントラル証券を舞台に、大手IT企業によるベンチャー企業の買収案件をめぐり、親会社の銀行と戦う痛快な物語が展開する。

   そして、最後は勝利を収めた半沢直樹が親会社の銀行に返り咲き、銀行のほうが力は強いかに見える結末だった。だが、現実はどうなのか――。

  • 「半沢直樹」の理不尽な人事はウソではなかった!?(TBSの番組ホームページより
    「半沢直樹」の理不尽な人事はウソではなかった!?(TBSの番組ホームページより
  • 「半沢直樹」の理不尽な人事はウソではなかった!?(TBSの番組ホームページより

「オレたちバブル入行組」は昔話、メガバンク凋落

   就職・転職のジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワークが、20代の会員ユーザーの口コミ投稿から調査した「業界分析・銀行・証券業界の働き方レポート 変革期を迎える金融業界を現場の声から分析」を、2020年8月26日に発表した。それによると、証券会社の方が社員の評価が高く、働きやすいという結果が出た。

   「OpenWork」は、社会人の会員ユーザーが自分の勤務している企業の口コミ情報を投稿する国内最大規模のクチコミサイトだ。会員数は約340万人(2020年1月時点)という。「年収・待遇」「職場環境」「社員の士気」「社員の育成」「風通しの良さ」など8つの項目で、自分の会社を評価して投稿する。

   銀行はかつて、世界の時価総額ランキング上位を席巻し、ドラマ「半沢直樹」の原作小説である「オレたちバブル入行組」(池井戸潤、2004年)に代表される大量採用を行っており、就職先として「安定」の代名詞だった。しかし今では、フィンテックの台頭、AI(人工知能)による業務代行などの技術革新によって、旧来の業務モデルが変革を余儀なくされている。メガバンクが揃って新卒採用人数を減らし、就職人気も下がっている。

   そこで調査では、銀行と証券会社に着目し、OpenWorkに投稿された評価スコアと社員クチコミから代表的な会社を分析した。比較にあたり、それぞれの業界平均に加え、銀行はメガバンク3行(三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行)、証券会社は国内5大証券(野村證券、大和証券、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、みずほ証券)をピックアップした。

   その結果、全体的に証券業界のほうが銀行業界に比べて評価スコアが高くなっている。「人材の長期育成」は両業界ともスコアが低く(2点台)、共通の課題があることがうかがえる。ただし、「20代成長環境」では証券業界平均のスコアが3.5であるのに対し、銀行業界平均のスコアは2.8と大きく差が付いた=図表参照

(図表)銀行と証券の働き方の評価(OpenWork作成)
(図表)銀行と証券の働き方の評価(OpenWork作成)

   さて、銀行VS証券で差がついた「20代成長環境」だが、ピックアップした各社の社員クチコミを見ていくと、どちらの業界も資格取得の奨励や研修制度が整っており、若手の教育には力を入れていることがわかる、。ただ、銀行のほうが年功序列のイメージが強いようだ。

「絵に描いたような体育会系。数字が人格」の野村證券

東京証券取引所
東京証券取引所

   まず、20代成長環境スコアが4.4と非常に高い野村證券の社員クチコミを見ると、「数字が人格」といった成果主義の組織風土を挙げる声が多く、厳しいながらも若手のうちから実力を発揮すれば相応の評価を得られるという

野村證券

「絵に描いたような体育会系。数字が人格。働きやすい環境は自分で結果を出して周りを認めさせることでしか作れない。成績も中の中では仕事が出来ない認定を下される。求められているレベルが高くそこにコミットするためにシビアな努力が求められる」(営業、男性)
「若手の育成に力を入れているため、やる気があれば沢山の事を学び教えてもらうことができる。そして若手であっても実績があればいくらでも伸ばしてもらえる環境です」(営業、女性)
「部や部門によるが、年次や役職にかかわらず若手でも重要な意思決定に関わるプロセスに関与できます。そこに一定の説得力や有力な根拠などがあれば若手でもオール野村としての判断を担うことができるほど風通しは良い。もちろんそのプロセスには上司や先輩や関係者へ丁寧に根回ししながら進めることが重要になる」(投資銀行部門、男性) 「独立系証券会社としての誇りを持っており、実際に案件のフローは多く、教育体制もしっかりしていると思う。職業柄、年功序列(経験年数が長い人が重用される)雰囲気ではあるが、やる気があり結果を出せば、若手でも中心的な役割を任される」(投資銀行部門、男性)

   ほかの証券会社も若手の教育が各社とも手厚く、若手に任される裁量も大きいのが特徴。こうした点が銀行と差がついた理由のようだ。

大和証券

「入社時の2か月の研修から、年に2回ほど集合研修、さらには日々動画を視聴してテストをするなど基礎知識から応用知識の習得まで面倒をみてくれます。また、入社後AFP(証券外務員の資格)を取得するようカリキュラムが組まれています。他にも希望者には金融知識の講座やコミュニケーションを円滑にとるための講座等、自身の意欲によって幅広い知識が身につけられると思います」(営業、女性)

SMBC日興証券

「残業は多いものの、日系大手証券ならではの大型案件なども多くあり、ジュニアバンカー(編集部注:投資銀行部門ではバンカーは2種類に分けられる。 収益責任を負うシニアバンカーと、収益責任を負わずに業績だけで評価されるジュニアバンカーだ)育成にも力を入れているため、若いうちから大きな責任のある作業・仕事を任せられる。若手でも積極的に重要案件へのジョインをさせるほか、新卒・中途未経験者向けの基礎研修や海外研修などのプログラムも豊富。スキルアップを短期間で行うのには適した職場」(投資銀行部門、男性)
「半年に一度の定期異動に加え、公募による異動制度もある。かなり多くの部署が公募を行い、具体的にどのような人材がほしいか記載しているため、今後自分が向かいたい方向でどのような研鑽を積めばよいかがわかる。また、各部署の業務紹介資料もイントラに掲載されており、まったく関わりのない部署の業務を知ることができる」(本社スタッフ、女性)

みずほ証券

「若手でも裁量を持たせてくれ、業務や案件を責任持って担当する経験を積めるので、ビジネスマンとしての基礎的なスキルを早期に伸ばせる。研修や専門家を招いての勉強会もあり、専門知識を習得する機会も豊富」(投資銀行部門、男性)
「若手に多様なキャリアを経験させるという人事の方針ができ、リテール営業から本社部署への異動など、チャレンジの機会はある。ジョブ公募制度も充実しており、銀行や信託などのグループ会社への希望も可能。同業他社よりはキャリア開発に関しての取り組みは意欲がある」(リテール事業法人部門、男性)

三菱UFJモルガン・スタンレー証券

「若年次からある程度裁量権のある仕事を任される事がある。お客様に感謝された時はこの上ない達成感を得られる。研修制度に関してはかなり充実しており、会社としても推進しているように思える。海外留学制度や派遣制度、国内での研修も充実している」(営業、男性)

(福田和郎)