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若者に人気「つみたてNISA」が好調! コロナ禍の株価乱高下でも「安定的な収益」が期待できるワケ?

   コロナ禍で経済活動が停滞するなか、株価が異様に元気だ。政府の緊急事態宣言が解除されて以降は、企業業績への回復期待が膨らみ、勢いがついている。

   しかし、一方で新型コロナウイルスの感染拡大は2020年6月末でもなお続いている。個人投資家らが抱く、「期待先行ではないのか」との疑問もうなずける。株式市場への、そんな期待と不安が「乱高下」となって表れているといっていい。

   そうしたなか、株価が乱高下しても、ファンド(投資信託)を一括で買った(投資した)場合より、毎月定額を積み立てて投資したほうが比較的、安定した収益を得られるとの調査結果を、日本証券業協会がまとめた。

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一括投資はマイナス、積立投資はプラス

   2008年9月のリーマン・ショックに匹敵する大暴落となった20年3月の「コロナショック」。景気が後退する実体経済との乖離が指摘され、「二番底」への警戒感がないわけではないが、4月以降の株式市場は、異様な株価の上昇に沸いている。

   その背景には、日米欧がそろって大規模な金融緩和を進めていることがある。それにより、金融不安を封じ込めるとともに、いわゆる「カネ余り」の資金運用先として、結果的に株式市場にお金が流れ込んでいるとされる。

   とはいえ、乱高下する株価に個人投資家は気が気ではない。事実、安倍晋三首相の突然の辞任会見で、8月28日の日経平均株価は一時600円を超えて急落。エコノミストらは「影響は軽微」「すぐに落ち着く」というが、いつまた3月のような暴落が起こるかわからない。

   目先の下落相場による心理的な不安から、保有している株式や投資信託をあわてて手放したり、少しずつでも買い続けていた積立投資をやめてしまったり、そんな人は少なくない。

   日本証券業協会がまとめた「最近における『つみたてNISA』の動向等」(7月15日公表)によると、株価が乱高下しても、毎月定額の積み立て投資を続けた場合、投資信託を一括で購入するよりも比較的、安定的に収益を得られることがわかった。

   積み立て型の非課税投資制度「つみたてNISA」の対象になっている投信について、2018年1月から20年6月末まで2年半の運用成績を分析したところ、積立投資の利回りは平均で1.21%だったのに対して、一括投資の利回りは平均マイナス1.73%で、積立投資の利回りが上回った。

   積立投資の利回りが一括投資のそれを上回った投信は182本(ETF=上場投信7本、インデックス投信157本、アクティブ投信等18本)のうち136本と、じつに74.7%にのぼった。

一括投資はコロナ禍では損が出やすい状況だった

   調査は、対象とした182本の投信について、(1)「2018年1月末に30万円で一括投資した場合」と、(2)「同月末から30か月間、月1万円ずつ積み立てた場合」とを、分配金の再投資なども考慮したうえで、20年6月末時点での収益率を比べた。

   その結果、平均利回りは(1)一括投資のリターン率がマイナス1.73%、(2)積み立て型のリターン率がプラス1.21%だった。

   18年1月は日経平均株価が2万3000円台と比較的高かった一方、今年6月末は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり株価が乱高下していたため、一括投資は損が出やすい状況にあった。

   投信別にみると、対象の75%にあたる136本で、積み立てのほうが、利回りが高かった。たとえば日経平均株価に連動した上場投信(ETF)では、一括投資は1.23%、定額積み立ては4.56%と差が出た。また、MSCI ACWI Indexを対象としたETFでは、一括投資がマイナス0.46%だったのに対し、積立投資は2.56%の利回りだった。

   一方、一括投資のほうが好成績だった投信もゼロではない。米国の大型株500銘柄(S&P500)に投資するETFの利回りは、一括投資が10.49%、定額積み立てが7.02%で、一括投資が積立投資を上回っていた。好調な米国株を反映している。

若者層に人気の「つみたてNISA」口座数は右肩上がり

   「つみたてNISA」は2018年1月、若者に資産形成を促す狙いでスタート。毎月、対象となる投信を、年間40万円を投資の上限に一定額買い続ける(積み立てる)場合、分配金や売却益にかかる税金を20年間免除する。

   積み立て投資のメリットには、価格(株価指数)が下がった時にも投資を継続することで平均購入単価を引き下げる効果が期待できること。「ドルコスト平均法」と呼ばれ、価格変動リスクを小さくする狙いがある。

   たとえば株価が値下がりしたときに、安く多くの株数を買うことで平均購入単価を引き下げて、値上がり時の収益獲得を目指す。積立投資は、長期間に投資するほど、リターン率が上がってくる。「つみたてNISA」は非課税の積立制度なので、若い時から「コツコツ」積み立てることで将来の楽しみがある。少額から投資できるので、投資初心者に向いているのも、メリットといえる。

   こうしたことから、つみたてNISAの口座数も好調に推移している。2020年3月末時点の口座数は114万口座で、前年12月末と比べて約19万口座(20%増)増えた。四半期での口座の増加数では過去最高。増加した口座の4分の3以上(約15万口座増)を20~40代の若者層が占めているという。

   コロナ禍で株価が乱高下しても、やっぱり若いうちから地道に、毎月「コツコツ」がいいらしい。