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【投資の着眼点】安倍首相辞任、「突然」の株価急落でわかった 「ここぞ」で発揮する情報アンテナ高さ!

   2020年8月28日14時ごろ、「アベノミクス」などの金融政策で株式市場に多大な影響力を持っていた安倍晋三首相は、持病の悪化による国政への悪影響懸念などを理由に、「突然」辞意表明した。

   突然の発表を受けて、当日の日経平均株価は乱高下した。発表から東京株式市場の大引けまでの約1時間で、下落幅は一時700円に達している。

   2012年末の日経平均株価は1万395円。一方、20年8月末時点の日経平均株価は2万3139円となった。7年と8か月に、株価は2倍以上に上昇したことになる。第2次安倍内閣が誕生したのは、2012(平成24)年12月26日。当時の民主党からの政権交代となり、それまでの「毎年首相が変わる」混沌とした状況に、終止符が打たれる形となった。

  • 安倍首相の突然の辞任から学ぶことは?(2020年8月28日撮影)
    安倍首相の突然の辞任から学ぶことは?(2020年8月28日撮影)
  • 安倍首相の突然の辞任から学ぶことは?(2020年8月28日撮影)

幾度の株安を乗り切ってきたアベノミクス

   さて、7年と8か月以上にわたって政権を維持した安倍首相だったが、株式市場との関係という視点から時系列順に振り返ってみたい。

   2008年9月の米大手証券のリーマン・ブラザーズの経営破たん、2009年10月のギリシャの政権交代に伴う経済危機の発覚を発端とする欧州金融不安、2011年3月の東日本大震災などを受けて日本の株式市場は長らく停滞していた。

   だが、2012年の後半から日本の株式市場は上昇に転じる。そんな中で、第二次安倍内閣が誕生した。

   アベノミクスの「三本の矢」といった、経済成長のための政策運営方針や、同時期の世界的な株高も手伝って、日経平均株価は2013年に1年で50%以上の上昇をみせた。

   その後は2015年7月のチャイナ・ショックや、2018年10月から12月にかけての米国を発端とする世界同時株安など、幾度となく株価は急落してきたが、そのたびに持ち直してきた。

   そして、2020年1月に2万4000円を超える高値をつけていた日経平均株価は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界的な経済不安から、3月に一時1万6000円台の安値をつけたものの、その後は怒涛の回復相場を見せた。そして、8月末時点の日経平均株価は2万3000円台となっている。

   大規模な金融緩和の実行や、多くの銀行の経営に少なからずダメージを与えたマイナス金利の導入などについては、将来への影響が懸念されるといった声があるものの、現時点で株価は順調に推移してきたといえるだろう。

新聞2社から依頼された「安倍政権の総括」原稿の意味

   安倍首相の辞意表明の当日に日経平均株価が急落したことから、株式市場が安倍首相の辞任を織り込んでいたというわけではなさそうだ。しかし、ある筋から「8月28日に安倍首相が辞意を表明する可能性が高い」とする、一種のリーク情報があったようなのだ。

   文学者である内田樹氏は、首相の辞意表明が発表される2日前の26日の16時47分に、自身のTwitterアカウントで次のように述べている。

「新聞社2社から相次いで『安倍政権の総括』の原稿を頼まれました。28日に辞意表明の確率が高いということでの予定稿です。
村上春樹ノーベル文学賞の予定稿は毎年書いていますけれど、安倍総理辞任の予定稿ははじめてです」

   匿名アカウントではなく、社会的地位のある人物が自身のTwitterに記している時点で、新聞社からアプローチがあったという話は信じるに足りるだろう。むろん、新聞社の情報が正しくない可能性もあるが、「2社から同じ原稿を頼まれていた」という点は興味深い。

   大手マスメディアは取材や記事作成の便宜を図るため、公式発表の前にあらかじめ情報が提供されることがあると言われているが、こうした事例から一般投資家でも事前に情報を察知することができるのかもしれない。

   情報収集を絶えず行っていれば、いずれは投資に役立つような、何らかの手がかりが手に入る可能性もあるだろう。(ブラックスワン)