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マジか? 韓国有力紙が「安倍前首相、3度目の登板も」と報道 いくら「安倍ロス」だからといって...【日韓経済戦争】

   ひょっとして、格好の「敵役」だった安倍晋三前首相の退陣で、「安倍ロス」が広がっているせいだろうか。韓国の有力紙が「安倍氏、3度目の登板か?」と報じている。

   最近、安倍前首相の血色がすっかりよくなり、「右翼的な政治活動」を再開。周囲には保守色が薄くなった菅義偉政権に取って代わらせる動きが進行中というのだ。「マジか?」と思いたくなるが...。韓国紙で読み解くと――。

  • 「3度目登板説」が浮上している安倍晋三前首相
    「3度目登板説」が浮上している安倍晋三前首相
  • 「3度目登板説」が浮上している安倍晋三前首相

安倍氏の悲願の憲法改正にソッポを向く菅首相への反感?

   このトンデモ報道をしたのは、朝鮮日報だ。韓国では最大の発行部数を誇る保守系の有力紙。歴史と伝統のある新聞である。「安倍氏、3度目の登板も? 持病回復... 右翼の集まり主宰し政治的言動」(11月3日付)という見出しで、こう報じたのだった。

「安倍晋三前首相が11月1日、首相辞任後初めて選挙区の山口県に行き、父・安倍晋太郎元外相の墓参りをした。安倍氏は墓参り後、記者団に『憲法論議こそ国会議員が自身の見識を示す機会』と述べ、野党側に改憲論議に出るよう促した。安倍氏は在任中、改憲を推進してきたが、実現できなかったことを心残りとしている。安倍氏は先月(10月)、自身が会長を務める保守系議員グループ『創生日本』の集まりを主宰した。また、右翼性向を持つ『日本の尊厳と国益を護る会』にも出席するなど、ほぼ毎日ニュースになっている」
安倍前首相の「3度目登板説」を報じる朝鮮日報(2020年11月3日付)
安倍前首相の「3度目登板説」を報じる朝鮮日報(2020年11月3日付)

   こうしたなか、中央日報が注目したのが読売新聞(電子版)の11月2日付の「安倍前首相そろり再始動 体調戻ってきた」という見出しの記事だ。記事では「安倍前首相が政治活動をそろりと再始動させている。まずは外国首脳とのパイプを生かして菅首相をサポートするとともに、自身に近い議員らで作る保守系グループを拠点に発信を強めていく」と書いている。

   また、「(『創生日本』や『日本の尊厳と国益を護る会』など)いずれのグループも菅首相になり、政権から保守色が薄れているとして、安倍氏を前面に出して存在感を示したいとの思いがあるようだ」とも書いているのだ。

菅政権のデジタル改革が失敗すると、来年「3度目登板」?

   産経新聞(11月3日付)「安倍氏、保守再興へ再始動 会合出席、独自外交」も同様の動きを書いている。

「安倍氏は憲法改正を宿願とし、歴史や伝統を重んじる国家観を主眼としてきた。一方、菅首相をはじめ岸田文雄前政調会長や河野太郎行政改革担当相ら『ポスト菅』は保守色が薄い。安倍氏は活動を再開することで、保守再興を後押ししたい考えだ」

   というのである。ただ、両紙ともこうした動きは「菅首相をサポート」(読売新聞)であり、「『あくまで周囲に求められればね』と語り、菅首相への配慮をにじませる」と書いており、「3度目の総理の座復帰」を目指すことなど、これっぽっちも匂わせていない。

   しかし、中央日報は「独自取材」でこう書くのだった。

「『安倍再登板説』は、9月に持病悪化を理由に辞任した当時は、可能性のない話と思われていた。しかし、最近日本の政界では同氏の3度目の首相登板説が広がっている。複数の東京消息筋は11月2日、『霞が関には、菅首相のデジタル改革が成功せずに国民の支持を失った場合、来年安倍氏が再登板する可能性もあるという話が出ている』と話した。安倍氏が体調を回復し、派閥のない菅首相が長続きせずに退陣したら、安倍氏が再び自民党総裁と首相に復帰するかもしれないということだ」
「先月(10月)、安倍氏に会った人々は一様に『とても元気で驚いた』と話している。安倍氏が主宰する集まりに出席したある関係者は『血色も良く、健康そうに見えたので、病気で退いたということが信じられなかった』と語った」

と、同紙は結んでいる。

「伊藤博文は4回総理に!」と励ました川淵三郎氏

   マジか? と耳を疑いたくなる話だが、確かに安倍氏の「再再登板」を望む声が、辞任直後から一部であったことは事実だ。日本トップリーグ連携機構の川淵三郎会長(元Jリーグ初代チェアマン)が、ツイッターで「ぜひ3度目の首相にカムバック」を呼び掛けるなどしていた。

   中日スポーツ(8月28日付)「川淵三郎氏が安倍晋三首相の『再再登板』も可能と指摘『元気を取り戻した暁には... 伊藤博文内閣は第4次の歴史がありますよ!』」などスポーツ各紙によると、川淵三郎会長は8月28日にツイッターを更新。この日、持病の悪化を理由に辞任を発表した安倍氏をねぎらうとともに、こうエールを送ったのだった。

   「国のために文字通り命懸けで公務に全力を尽くされた安倍総理に心からお疲れ様でしたと申し上げます。一日も早い回復を願っています。新しい薬が功を奏して元気を取り戻した暁には再再登板も可能ですよね。3年経ってもまだ68歳ですから。桂太郎内閣は第3次、伊藤博文内閣は第4次の歴史がありますよ!」

   桂太郎、伊藤博文とも安倍氏と同じ長州(山口県)の先輩だが、明治・大正の藩閥政治の時代の話だ。さすがに、この川淵三郎氏のエールはネット上で話題になり、スポーツファンを中心にこんなコメントが殺到した。

「川淵さん、ご冗談でしょ。何を寝ぼけたことを言っているのですか? この程度の人が日本のトップに君臨しているのかと思うと情けなくなります」
「励ます言葉を言いたいという、川ちゃんの温かなココロがあふれている。でもまずは、安倍さんにゆっくりさせてあげようか。川ちゃんも健康第一でいってくださいよ。83歳なのだから」
「いや、3度目の登板、ありうる話です。巨人の原監督がよい例だよね。いま3次政権ですよ。他に適任者がいない場合、素晴らしい手腕を発揮したリーダーは、いつの時代でも欲しがられるものだ」
「そういえば、サッカー日本代表監督だって、岡ちゃん(岡田武史)が2度やって、まだ名前が上がってくるのと同じなのかな。トルシエさんに国民的人気はあったけど、2回目はありませんでしたよね」

......などなどと盛り上がったものだった。

   しかし、朝鮮日報の「安倍3度目登板説」は、荒唐無稽すぎるのだろうか――。ネット上の反応は11月4日現在、ほとんど見当たらない。

(福田和郎)