J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

コロナ禍の今こそ、ウチの会社の「一品」を探そう!

   コロナ禍でお客や売り上げの減少に悩んでいる店や企業は多いだろう。その突破口は、「自社の財産」にあると勇気づけてくれるのが、本書「「会社に眠る財産」を掘り起こせ」である。「自社の財産を核に自社ならではの変化」を、自分たちの手で起こす方法論が詳しく書かれている。

   探し出すべき財産がつまった商品、その一品を探し、伸ばし、広げ、磨き続けることにより、あなたの会社は誇り高き「オンリー・ナンバーワン企業」への成長する、と鼓舞している。

「「会社に眠る財産」を掘り起こせ」(岡村衡一郎著)朝日新聞出版
  • 人気のロールケーキに、ますます磨きをかける!(写真はイメージ)
    人気のロールケーキに、ますます磨きをかける!(写真はイメージ)
  • 人気のロールケーキに、ますます磨きをかける!(写真はイメージ)

一品を探し、伸ばし、広げ、磨き続ける

   著者の岡村衡一郎さんは1971年生まれ、亜細亜大学卒。船井総合研究所を経て、2004年スコラ・コンサルタント入社。150社を超える企業変革を支える。支援先の起源や今あるリソースを足場に、「あるもの」から「ないもの」を生み出す一品イノベーションに多くの経営者ファンを持つ。著書に「30代でチームリーダーになったら最初に読む本」「一品で会社を変える」(ともに東洋経済新報社)がある。

   本書は、

(1) 飛躍の糸口になる「自社の財産」の中にある一品の探し方
(2) 「地域で一番」のシェアを目指す一品の伸ばし方
(3) 一品を伸ばすと、次の一手が見えてくる一品の広げ方
(4) 一品を磨き続けること

――。この4章からなる。

   まず、会社のもっとも重要な財産は「商品を生み出す過程で身につけた固有の技能」だとしている。それを知るうえで重要になるのが、「創業から現在までどのような道のりをたどって成長してきたのか」「売るために、お客様の支持を得るためにどんな努力をしてきたのか」をつかんでおくことだという。

   具体的には「創業から現在まで」を6分割し、A3一枚の紙に、「商品の内容、売れ行きや状態」「自社の取り組み」「顧客動向」「市場・他社の動向」について書きこんでいく。この作業は経営者を中心に社内各部署から集めたキーパーソンに加え、特別に招待したオブザーバーを加えた数人であたる。過去の資料を読み込み、議論を尽くす。

   岡村さんは、「タイムマシンに乗って宝物を探しに行こう」と表現している。この作業に早くて10時間、遅くても30時間が必要だそうだ。

   その結果、見つかった一品は、「それがなければ売上がつくれない商品」であり、どんな業種の商品であれ、「価格破壊型」「ディスカウント型」「価値改良型」「価値革新型」のいずれかに分類されるという。

踊り場からの展開

   こうして見つけた宝物の一品を核に、シェア26%で「地域で一番」の会社にするのが第二段階だ。

   「商品→売場→接客→販促」の順番で強化するのがセオリーだと説いている。お客様は最初に「商品力」を見ている。だから、この順番はおろそかに出来ない。また、「全品おすすめ」ではお客様に伝わらない。「一品の価値」をキャッチコピーで、ズバリ伝えることだ。

   一品を探し当てることに成功し、その商品の売上が伸び始めると、ある程度までは伸長する。しかし、伸びが鈍化する。岡村さんの経験によると、自社の一品が含まれる特性(グレード)内でシェアが40~55%ぐらいになり、トータルシェア(ほかの特性も含むマーケット全体でのシェア)が19~26%になったとき、その踊り場にさしかかるという。

   一品からその他の個別商品へと広げていかないと、その道の「オンリー・ナンバーワン企業」にはなれない。商品展開を広げるだけでなく、自分たちの価値観も合わせて広げていく必要があるという。

   そして最後のステップ、一品を「磨き続ける」段階に至る。岡村さんは社内の分業が財産を腐らせてしまう原因だと考えている。それを打ち破るために、日常業務の外で「分業のくびき」を超える仕組み、たとえば「オフサイトミーティング」の効用をあげている。

   その際のキーワードは、「気楽に」「まじめに」「じっくり」「本質的に」だという。子どもの頃に、どんなことを両親や周りの大人から学んだか? 中学校での思い出のワンシーンは何か? などを語り合うことにより、その人の仕事観やそれが形成された要因、プロセスを知り、チームワークをよくしていく上で重要なポイントになる。四半期に1回か、半年に1回くらいの合宿を勧めている。

「一品」経営の革新事例の3例を紹介

   こうして基盤ができたところで、いよいよ真の課題をあぶり出すミーティングに進む。それは「お客様が真に求めていることは何か?」に基づいた課題だ。

「お客様アンケートへの回答からは決して見つからない欲求に思いを馳せる行為の延長線上に、お客様本位のチームはできあがっていくのです」

   巻末付録には3社の「一品」経営の革新事例が載っている。人気のロールケーキで、1日に1000人以上のお客様から支持される店になった、「お菓子の家スワン」(埼玉県春日部市)、6年間の「N倍チャレンジ」で、売り上げは2倍、営業利益は5倍に改善した建材メーカー、アルミック(岐阜市)、起死回生のコンセプトで一品を広げ、売り上げが1.4倍、客単価が1.5倍になったパークホテル東京(東京都港区)の3例だ。本書の流れに従い、具体的に説明している。

   自分たちにないものではなく、「あるもの」を探すという基本的な考え方には、目から鱗が落ちる思いの経営者もいるだろう。本書は2018年の発行だが、新型コロナウイルスの第三波到来かと言われる今こそ、中小企業の経営者に読んでいただきたいと思い、取り上げた次第である。

「「会社に眠る財産」を掘り起こせ」
岡村衡一郎著
朝日新聞出版
1600円(税別)