J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

鬼滅の刃の世界観が独特なのは「色」にある!(入澤有希子)

   映画の盛り上がりが、とどまるところを知らない「鬼滅の刃」。2020年12月には最終巻も発売されるため、ますます盛り上がっていくことでしょう。

   コロナ疲れを吹き飛ばしてくれるニュースがうれしい限りです。今回は、鬼滅の刃の世界観が独特なのは「色」にある理由をお伝えしたいと思います。

  • 大ヒットの劇場版「鬼滅の刃 無限列車編」(画像は、公式ホームページより)
    大ヒットの劇場版「鬼滅の刃 無限列車編」(画像は、公式ホームページより)
  • 大ヒットの劇場版「鬼滅の刃 無限列車編」(画像は、公式ホームページより)

主人公の炭次郎は「緑」妹の禰豆子は「ピンク」

   「鬼滅の刃」は、週刊少年ジャンプで連載された吾峠呼世晴さんによる漫画。舞台は大正時代。主人公の竈門炭次郎 (かまどたんじろう)が、鬼と化した妹の禰豆子(ねずこ)を人間に戻す方法を探すために、鬼と闘う物語です。鬼滅の刃の世界では、鬼と人間の対立が描かれますが、鬼もかつては人間だったという悲しい過去のストーリーも人気を博しています。

   コミックスは現在22巻まで発売中。アニメは2019年に放送され、その続編として映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が2020年10月に公開されました。

   鬼滅の刃でおもしろいのが、色の使い方が独特なことです。従来の漫画と同じような色の使い方をしている部分もあれば、「鬼滅の刃ならでは」という使い方もあります。

   まず独特なのが、主人公の色です。漫画などによく登場する主人公といえば、「赤」が鉄板。ルパン3世、アンパンマン、「ワンピース」のルフィーなど。みんなのヒーローとして活躍する主人公は、赤を身につけています。

   ところが、鬼滅の刃の主人公、炭治郎は、「緑」。髪こそ少し赤みがかっているものの、主人公に緑を着せるのは、とても珍く、新鮮に映ります。炭治郎の性格は、謙虚で礼儀正しくて、鬼に対してさえも優しい。従来のみんなを引っ張っていくリーダー的存在ではなく、ささやかな幸せを守るために戦い、強いリーダーシップを発揮するわけでもない主人公です。

   そして、主人公と行動を共にする、鬼になってしまった妹の禰豆子は、「ピンク」。ピンクといえば、ドラえもんでは、しずかちゃんのように女の子らしいキャラクターをイメージしますが、そうではないのです。兄や人間を守るために闘います。とても強いんです。

   ただ、鬼なので人を襲ってしまわないように竹をくわえています。ピンクの使い方もその姿も独特です。

主人公を助ける役目は「青」だけど、鬼滅の刃では......

   次に、主人公をサポートする友人の色と言えば、青が多く、戦隊モノだと冷静な分析をして主人公を助けるのは、青の役目。ドラえもんでも、主人公ののび太くんを助けてくれるのは、青いドラえもんです。ところが、鬼滅の刃で、仲間として行動するのは、黄色と藍ねず色のキャラクターなんですね。組み合わせが独特です。

   「黄色」のキャラクターは、我妻善逸(あがつまぜんいつ)です。唯一、色とキャラクターがマッチしています。善逸は、すぐに弱音を吐き、自分に自信が持てない少年です。のび太くんをイメージしてもらうとわかりやすいと思いますが、黄色と言えば、少し頼りない色として使われます。または、ミニオンのような場を明るくしてくれるムードメーカーの色でもあります。善逸は、どちらも兼ね備えたハイブリット型です。

   一方、「藍ねず色」は嘴平伊之助 (はしびらいのすけ)というキャラクターです。被り物の猪はねずみ色。隊服や髪、瞳の色は青に近い藍色。そして刀の色が藍ねず色。従来は、ルパン3世に出てくる五右衛門のように、おとなしくて知的な色として使われますが、このキャラクターは、誰彼かまわず勝負を挑む野性的な少年です。

   緑と黄色という組み合わせだけでも珍しいのに、そこに加わるのが、およそ従来の青系キャラの知的さとはかけ離れた存在なんです。

   この個性的なキャラクター達のバランスを取るのが、従来の戦隊物だと緑レンジャーなのですが、鬼滅の刃のおもしろいところは、二人のバランスを、緑の主人公、炭治郎がとっているところです。

   ちなみに、今映画で話題の煉獄杏寿郎 (れんごくきょうじゅろう)が「赤」。主人公らしい色をしています。強くて正義感に溢れ、ヒーローらしい存在です。まさに映画の主役にふさわしいのです。ただ漫画全体の中では、活躍する場面は映画の部分1巻分くらいと少ないです。

   このように、鬼滅の刃の世界では、従来の色使いから少しハズした色の使い方をしています。それがとても新鮮です。そして、これまでの漫画にはない、独特な世界観に繋がっているようです。もちろん、漫画も映画もおもしろいですから、まだまだヒットは続きそうですね。(入澤有希子)