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「勝手なことしやがって」二階派幹部が激怒! 菅首相が「GoToトラベル」停止に踏み切ったわけ(2)

「勝手なことしやがって!」

   観光族のドン、二階俊博派の議員が激怒した。また、所管の国土交通省幹部もテレビにニュース速報が流れる10分前まで「寝耳に水」だった。

   菅義偉首相は2020年12月14日、突然、年末年始の「GoToトラベル」キャンペーンの全国一斉停止を発表したが、それほど電撃的な決断だったようだ。

   「GoToトラベル」に執着していた菅義偉首相はなぜ急に変心したのか。主要メディアの報道から探ると――。

  • 医療専門家が激怒した「ガースー」とチャラけた菅義偉首相(12月11日のTBSテレビ速報)
    医療専門家が激怒した「ガースー」とチャラけた菅義偉首相(12月11日のTBSテレビ速報)
  • 医療専門家が激怒した「ガースー」とチャラけた菅義偉首相(12月11日のTBSテレビ速報)

都医師会長「総理のガースーはふざけすぎだ」

   今回の年末年始のGoToトラベル一時停止、医療の専門家たちはどうみているのか――。

   二木芳人・昭和大学客員教授はこう疑問を呈した(朝日新聞12月15日付「GoTo批判高まり転換 専門家『医療逼迫遅すぎる』」)。

「医療は逼迫した状態になっており、遅きに過ぎた。もう1か月前に立ち止まる必要があった。全国で一斉に停止することは評価するが(12月28日まで待たずに)、すぐに止められないのか」

   堀賢・順天堂大学教授も、同紙でこう指摘した。

「(GoToイートは継続中だが)都市部での感染拡大は主に会食が原因で、『イート』にも制限を加えるべきだ」

   島田真路・山梨大学医学部付属病院院長は、「スピード感がなさ過ぎる」と、こう批判する(東京新聞12月15日付「遅すぎたGoTo停止 政府に緊迫感なさ過ぎ」)。

「(旭川市に自衛隊の看護師が派遣されているが)今の感染状況は本来なら起きてはいけないレベルまで悪化している。GoToトラベルは国民に『まだ大丈夫』という誤ったメッセージを送ることになり、感染拡大が収まらない一因になっていた。菅首相は対策を練り直すべきだ」

   また、菅首相が12月11日、インターネット番組で、「こんにちは、ガースーです」とチャラけた薄笑いで挨拶したことも医療関係者の激怒を買っている。

   東京都医師会の尾崎治夫会長はこう憤った(東京新聞12月15日付「『ガースーです』ふざけすぎでは」)。

「違和感がある。医療関係者も患者も苦しんでいる。一国の総理が笑顔で冗談を言って、一方で分科会の先生が必死で窮状を訴えている。リーダーとして納得できない」

   首都圏の複数の病院で診療にあたっている勤務医の木村知さんも、同紙でこう批判した。

「親しみやすさを演出したのかもしれないが、生活に困る人もいる中、ニヤニヤされても逆効果。人気取りが失敗した。感染がどんどん広がっているのに危機感を感じられない」

「旅行業者ですが、ついに詰みました」

   ネット上でも、こんな批判が相次いでいる。

   千葉千枝子・淑徳大学観光経営学科教授が、こう投稿した。

「年末年始の繁忙期におけるGoToトラベル全国一斉停止で、資金繰りが一層苦しくなる事業者が続出するのは必至です。ホテル・旅館は本来なら宴会シーズンで売上増が見込めた時期、回復傾向にあった客室稼働率が再び下がると打撃ははかりしれません。さらに深刻なのが旅行業。報告書の提出や地域共通クーポンの受け渡しなど、業務過業務過にある中で、年の瀬のキャンセル対応で、中小の旅行会社は悲鳴をあげています。これを乗り切ったとしても廃業を予定する旅行会社が増えることが予想されます」
名古屋城も行きにくくなった?
名古屋城も行きにくくなった?

   実際に、旅行業者からはこんな声が。

「旅行関係者ですが、詰みました。この数時間でほとんどの予約がキャンセル。観光業や弱い飲食はほぼアウト。救済しないとこれからくるのは海外資本、主に中国による本格的な不動産買い漁り。そこら中で海外資本のホテルが建ちまくっています」
「旅行業です。数日おきにこのエリア追加!今度はこっちのエリアも!そして、ついに年末年始の停止!客一人一人から問い合わせ殺到!こんなことしていたら、お金をまったく生まない残業だけが増え続けて地獄です」
「電話鳴る、鳴る、変更、地域クーポン回収、作り直し、年末取り消し。クーポンに日付押すのがしんどい。手作業が多く、入力し直し、再発行。20年働いた。今までありがとう。私は決めた。退職します」

   こんな混乱を招いた菅首相に怒りの声があふれている。

「ガースーさん、とりあえずGoToが感染拡大を招いているエビデンスはないと仰って、止めるつもりはないとのお考えが、このタイミングで一時停止にシフトした理由をお聞かせ願いたい。そして勝負の3週間で歴史的大敗をして、結局、全ての事業者に対して1番しんどい思いをさせる事になっている責任についてどうお考えなのかもお聞かせください」
「どういう政策だろうと、まずは自分の口で国民に説明するのが筋だ。ついこないだまでネットでヘラヘラして『GoToが悪いものみたいになっちゃった』と言っていたのに全国一斉の一時停止。なぜ考えを変えたのか。感染が広がったヨーロッパでも国のトップの支持率が落ちるどころか上がっているのは、国民に対して真摯に向き合う姿勢を見せているからだと思う」

   その一方で、菅首相を擁護する意見もある。

「本当に判断が遅かったのだろうか?なんとかクリスマス、年末年始を普通に過ごせるよう『最後の3週間』と国民に訴えた。国民に期待した。結局、国民は自粛せず、街は混雑したまま。高齢者もウロウロ。その結果として年末年始の強い自粛要請になった。国民に期待した政府も悪いが、自粛しなかった国民が多かったことが理由。政府を責めても感染拡大は止まらない」

「GoTo停止でも自腹を切って旅行に行けばいい話」

年末の札幌のイルミネーションも見られない
年末の札幌のイルミネーションも見られない

   また、「GoToトラベルの全国停止」と言っても、旅行に行きたい人は、自腹を切って行けばいいではないか、という意見も多かった。

「GoToの一時停止と言っただけで、旅行や帰省をするなとは言われていない。こういうお値引き施策のマイナス点は補助がなくなった際に割高感が出てしまうこと。行かないと損だから行くという気持ちだったのだろう。そんなに経済が心配な人は、正規の値段で行ってあげてよ。感染症対策してね。観光業や飲食店も大変だけど、ほかの業種も大変なんだよ。観光業と飲食店は政府から恩恵受けているだけ、まだまし」
「GoTo 一時中止で困った、困ったと観光業者は言っているのが、緊急事態宣言と違い、GoTo が使えないだけで宿泊は規制されていないのだから、文句を言うのはおかしな話。旅行に行きたい人は割引がなくても行くのだから騒ぎすぎ。もっと医療に目を向けるべきでは」
「そうですよ。旅行したかった皆さんは冷静になってください。おそらく大量のキャンセルが発生するので、予約が難しかった安くて良質な宿も空いてくるでしょう。GoTo割引がなくても良い宿はいっぱいあるので、今回はワンランク上の宿はやめましょう」
「厳しいのは、普通の小売店や理容店も同じ。客が減っている。友人の印刷もやっているハンコ屋さんでは、大きな得意先がポイントカードを作らなくなったので、売り上げが落ちていると言っていた。飲食店については、複雑で使いにくいGoToなんかなくても、おいしい店には行ってあげていますよ。その店が潰れたら困るから。おいしい料理をリーズナブルな料金で出す努力を怠ってきた店が潰れるのは、もう仕方ないと思う」

(福田和郎)