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旅行業者の倒産、3年ぶりの増加 事業撤退の鉄道会社、大手も縮小

   新型コロナウイルスによる感染拡大の直撃を受けた観光産業。その救済策である「GoToトラベル」キャンペーンも、感染再拡大で不透明になっている。

   帝国データバンクの旅行業者の経営実態・倒産動向調査によると、2020年1~11月の倒産件数は24件と、すでに2019年の20件を上回っており、通年では3年ぶりの増加に転じた。

  • 東京の観光名所の一つ、スカイツリー
    東京の観光名所の一つ、スカイツリー
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大型倒産も発生

   2020年1~11月の旅行業者の倒産件数は、24件だった。

   リーマン・ショックがあった2008年と翌09年、東日本大震災が発生した2011年に、いずれも49件を記録するなど高水準が続いたが、その後は小幅な増減を繰り返しながら減少傾向だったが一変。3年ぶりに増えた。

   近年の旅行業者の倒産では、2017年のてるみくらぶ(東京都)のケースが、負債額(約151億1300万円)が大きかったことで知られる。格安旅行の事業を展開。破たんする直前まで積極的な宣伝広告活動を行っていたことから、大きな社会問題となった。

   コロナ禍の2020年は、ホワイト・ベアーファミリー(大阪府)による、負債約278億円の大型倒産が発生している。

   2000年1月から11月までの746件にのぼる旅行業者の倒産で、もっとも倒産が多かった地域は「関東」。2000年以降の累計では356件(構成比47.7%)発生しており、2020年も9件(同37.5%)と、「近畿」の7件(同29.2%)を上回り最多。「近畿」は2000年1月から2020年11月まででは161件(同21.6%)。「北海道」は2016年以降、旅行業者の倒産が1件も発生していない。

   コロナ禍による苦境で、旅行業からの撤退や大手企業の事業縮小も続いている。静岡市内で鉄道を運営している静岡鉄道の子会社、静鉄観光サービスは2020年11月5日に、2021年3月末で営業を終了すると発表。同社は1965年に創立され、主に地域住民向けの旅行サービス事業を行ってきたが、インターネットの普及に伴い旅行手配の仕方が変化し旅行代理店事業の取扱高が減少していた。厳しい経営環境の中、コロナ禍に見舞われ「この先事業を継続していくことは大変難しいと判断」し、営業を終えることにした。

   大手ではJTBが11月20日に発表した4~9月期の連結決算で、店舗の25%の閉鎖やグループ人員6500人の削減などを内容とする事業構造改革を明らかにした。

   ネットの予約システムの進化で個人客を奪われていたことに加え、新型コロナの影響で強みを持つ団体・法人向け需要が急減し、業態を縮小することにした。大手ではまた、エイチ・アイ・エスが12月11日に20年10月期連結決算を発表した際に、海外拠点の95か所削減や海外子会社再編などの見直しを行うことを明らかにした。

   なお調査は、帝国データバンクの企業データベース(147万社収録)の中から、経営実態が判明している2924社の売り上げ動向などのほか、2000年1月から2020年11月までに746件発生した旅行業者の倒産について分析した。