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マジやる気? 小池都知事の「人々は希望を求めて東京五輪開催を望む」発言が総スカン(1)

「都民のみなさんは現在を見ていますが、私たちは将来を考えています」

   小池百合子都知事がAFP通信のインタビューに応じ、こんな「上から目線」発言で「東京五輪を断固開催する」と発言したことがネット上で総スカンをくっている。

   それしても、これだけ新型コロナウイルスが猛威を振るっているのに、政府や東京都は「マジ東京五輪をやる気?」という疑問の声が起こっている。

  • 小池百合子都知事、東京五輪はマジやる気ですか?
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NHK世論調査では「開催反対」が6割以上

   AFP通信(日本語版オンライン)は2020年12月15日21時10分「小池都知事、五輪開催を強調」というインタビュー記事を配信した。国内で新型コロナウイルスの感染者が増え、国民が開催に懐疑的になっている中で、小池都知事の発言を次のように紹介した。

「小池知事は、中止を考えざるを得ない状況にはどのようなことが考えられるかとの質問に対し、『それはありません』と答えた。また来年(2021年)に延期された東京五輪の開催に、今では国民の多くが反対していることは認識しているものの、そのような懸念は払拭できるとの考えを示し、『国民や都民のみなさんは現在を見ています。私たちは将来に備えてのことを考えています』と述べた」

   国民や都民は目先のことしか考えないが、私たち政治家は将来を見据えているとして、こう強調したのだった。

「小池知事は、東京五輪の行方が2022年の北京冬季五輪や2024年のパリ五輪をはじめ、未来の五輪にも影響するだろうと指摘。『世界の方々は、この新型コロナウイルスに打ち勝つ、その証しとしての東京大会(と受け止める)。そしてその後、冬季の北京大会、さらにはパリ大会につながっている』と話した。『東京のコロナ対策がしっかり行われないと、では4年後のパリはどうなるのでしょうか』『まずは東京で成功させていかなければ、パリにも大きな影響を与えることになります』と訴えた」

というのだ。

   AFP通信は小池都知事のインタビュー記事の中に、12月15日にNHKが発表した「東京五輪開催の是非を問う」最新の世論調査の結果も取り上げた。

   来年の東京五輪について「開催すべき」が27%、「中止すべき」が32%、そして「さらに延期すべき」が31%となり、合計62%が開催に反対した。10月に同じ調査をした際には、「開催すべき」が40%、「中止すべき」が23%、「さらに延期すべき」が25%だったから、「開催反対」の意見が14ポイントも上昇し、「開催賛成」を上回ってしまったのだ。

   このことに対して、小池知事はこう述べた。

「小池知事は、政府や都、大会組織委員会が多岐にわたる感染対策を講じる予定であり、世論は変わると信じていると述べた。『人々は、このコロナ対策がしっかり行われていくと、むしろ希望を求めると、そう確信を持っています』」

   また、東京五輪の最終経費については、激しい議論が交わされているが、小池知事はさまざまな機械や設備をリースしていることに触れ、こう説明した。

「小池知事は『その期間が1年延びている。これは必然的にコスト高になってしまう』と説明。『しかしそのコストを払うのか、もしくは全部をやめるのか、というチョイスにはしたくないと思っています』と話した」

   AFP通信は、やや不安げに記事をこうまとめている。

「新型コロナのワクチンが間もなく入手可能になるにもかかわらず、来年の開催を支持する日本国民は少数にとどまっている。東京五輪について、東京五輪・パラリンピック組織委員会はさらなる延期の可能性を否定しており、たとえパンデミックが収束していなくても2021年7月23日に開幕するという立場を維持している。世界の一部地域ではワクチン接種が開始され、主催者は大会開催に向けて自信をみせているが、出場選手や観客への予防接種は義務付けられていない」

スポンサー企業も「降りる」と言い出せずに苦慮

   いったい、東京五輪は開けるのだろうか?

   それは東京五輪のスポンサー企業の葛藤も同じだ。というのは、12月末にスポンサー契約を延長するか、それとも降りるか、選択を迫られているからだ。時事通信(12月12日付)「追加負担で対応苦慮 スポンサー契約延長交渉大詰め― 東京五輪」が、企業の苦悩をこう伝える。

「来年に延期となった東京五輪・パラリンピックのスポンサー企業の契約期間が12月末で切れるのを受け、大会組織委員会とスポンサー契約の延長交渉が大詰めを迎えた。政府は五輪開催を『人類が新型コロナを克服した証し』にしたい意向で、経済界も『感染防止と経済活動の両立を大きなプロジェクトで仕上げる』(三村明夫日本商工会議所会頭)と実現を後押しする。ただ、コロナが企業業績に影響を及ぼすなか、延長に伴う追加負担を求められる企業は、大会成功を望みつつも対応に苦慮している」
小池百合子都知事のインタビューを掲載したAFPオンライン版(12月15日付)
小池百合子都知事のインタビューを掲載したAFPオンライン版(12月15日付)

   東京五輪の国内スポンサーは、トヨタ自動車やブリヂストン、NTT、キヤノンなど81社で構成する。従来の予算計画では、国内スポンサー収入は組織委の総収入の55%を占める3480億円だった。だが、大会延期に伴う追加費用としてさらに約260億円をスポンサーに求める方針だ。

   スポンサー各社は条件を精査し、契約延長の可否を判断する。だが、現時点で自分から「降りる」と言い出す企業は見当たらず、模様眺めの状態だ。

「NECの新野隆社長は11月末の記者会見で『基本的に延長する方向で考えている』と表明。ある企業首脳は『いまさらスポンサーをやらないわけにもいかない。訪日外国人観光客を呼び戻す意味でも五輪は開催したほうがいい』と追加負担を前向きに検討中だ」(時事通信)
「コロナ収束の見通しが立たないなか、どういう形での開催になるか依然不透明だ。企業からは『無観客開催の場合どこまで効果があるのか』と、負担に見合う広告宣伝効果が得られるのか心配する声が漏れる。コロナ下での追加出費となるため、他社の対応をにらみつつ『ギリギリまで悩む』『足並みがそろうのを待っている状況』といった企業も少なくない」

   時事通信は、

「『五輪に向けた機運醸成のため大会の簡素化など国、東京都一丸となった対策に期待したい』(三井不動産)との要望も聞かれ、組織委や東京都には企業の懸念を取り除くための丁寧な対応が求められそうだ」

と結んでいる。

(福田和郎)