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育休取得も進まないのに「男の産休」ってアリ? 厚労省に「ありがた迷惑」という女性が多いワケ(1)

「男性の育休さえ満足に取る人がいないのに、男の産休ってアリ?」

   厚生労働省が実施を目指す「男性の産休」新設と、企業に育休取得促進を義務付ける制度の動きが加速している。

   しかし、女性たちの間では、

「家でゴロゴロしているだけの、育休だってありがた迷惑なのに」
「まず、夫の家事・育児のスキルを磨く研修から始めてほしい」

という批判の声が多いのだ。いったい、どういうことか?

  • 育休中に子どもとの触れ合いを楽しむ男性(写真はイメージ)
    育休中に子どもとの触れ合いを楽しむ男性(写真はイメージ)
  • 育休中に子どもとの触れ合いを楽しむ男性(写真はイメージ)

「男性産休」は生後8週以内に、最大で計4週間

   「男性産休」の新設と、企業に「男性育休」の取得を義務付ける制度導入については、労働政策審議会で議論を進めてきたが、2020年12月24日、厚生労働省が最終案を審議会に示した。

   「男性産休」を新設して分割取得も認めるほか、企業には育休対象者に取得を個別に働きかけることを義務づける。大企業には育休取得率の公表も義務化する。

   厚生労働省は、来年の通常国会に育児・介護休業法など関連法案を提出。2022年度からの実施を目指すという。

   男性の育休でさえ、現在の取得率が7.48%(2019年度)と非常に低いのに、「産休」を新設するのは、なぜか――。朝日新聞(12月15日付)「『男性産休』新設、分割もOK 育休促進メニュー固まる」によると、

「厚労省が今回、『男性産休』などで男性の育休取得を後押しするのは、男性の育休取得率が低迷しているからだ。特に、子どもの出生直後は母体が不安定で、まずはその時期に限定した形でも、より取得しやすい仕組みを作ることにした」

というわけなのだ。

   出産直後の妻と赤ちゃんに寄り添うことで、男性が休みたいと言いづらい職場の雰囲気を変える狙いがある。まずは「取るのが当たり前」という環境づくりから始めようというのである。

   同紙によると、新設される「男性産休」のポイントはこうだ。

(1)男性が対象。子どもの出産後8週以内に、最大で計4週間。
(2)2回に分割も可能で、たとえば出産時と退院後に分けて取得できる。通常の育休とは別枠。
(3)原則、出産の2週間前までに申し出ればOK。
(4)事前に見込まれた仕事なら休業中も就労OK。

などだ。

   この厚生労働省が実施を目指している「男性産休」と「男性育休の義務化」の動き、意外にも働く女性の間では、

「男の産休?育休? いらないよー、ありがた迷惑、というのが率直な感想」

という声が多いのだ。

育休取得者の4人に1人が妻の「イライラ」の元

   「取るだけ育休」という言葉がある。まだまだひとケタ(7.48%=2019年度)という低い男性の育児休暇取得率にあって、育休を取った勇気ある「イクメン」の中に、ただ家でゴロゴロしているだけで妻に「大迷惑」をかけている人が少なからずいるというのだ。その割合が、なんと4人に1人という調査が今年1月に発表された。

   調査をまとめたのは公益財団法人・日本財団と、ママ向けの生活支援アプリ「ママリ」を提供している「コネヒト」の共同チーム「イクメン育成プロジェクトチーム」だ。男性の「とるだけ育休」を防ぐための「7つの提言」をアドバイスしている。

(図表)育休中の夫が一日に家事・育児をする時間(「コネヒト」の調査資料より)
(図表)育休中の夫が一日に家事・育児をする時間(「コネヒト」の調査資料より)

   夫が育休をとった508人のママたちに、夫の育児・家事協力に対する満足度を聞くと、「とても満足」と「まあまあ満足」が合わせて76.0%、逆に「あまり満足できない」と「不満だ」が計24.0%、つまり4人に1人もいた。

   驚くのは、育児中のママの場合は、ほぼ起きている時間の大半を赤ちゃんの面倒や家事にとられるが、育休中の夫がどのくらい育児と家事に協力したかを一日あたりの時間で聞くと、とんでもない結果が出た。「2時間以内」(32.3%)が3割以上に達し、ママとほぼ同じ程度の「8時間超」(20.1%)が5人に1人しかいなかった=上図参照

   1~2時間といえば、ぐずる赤ちゃんをちょっとあやし、洗濯物を干すくらいであっという間にすぎてしまう。あとはゴロゴロしているのだろうか。

(福田和郎)