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タワマン、これだけ危ない! コロナ禍で生じたリスクを解き明かす

   便利な立地や豪華な設備、そして何よりも高層階から見晴らす眺望――。成功者のステータスとして人気を得てきたタワーマンションは、なお需要が見込まれ、都市を中心にプロジェクトが進められている。

   しかし、新型コロナウイルスによる感染症の拡大で、そのステータスとブランド価値が揺らいでいるという。 本書「『タワマン』ブランドの崩壊 価格暴落とゴーストタウン化が始まる! 」が、その理由や背景を解説している。コロナ禍という「先が見えない状況」のなかで、タワマンばかりでなく、不動産のこれからを読むための参考書として最適な一冊。

「『タワマン』ブランドの崩壊 価格暴落とゴーストタウン化が始まる! 」(小島拓著)小学館
  • 誰もが予期しなかったコロナ禍で、タワマンのステータスやブランドも予期せぬ方向に……(写真は、イメージ)
    誰もが予期しなかったコロナ禍で、タワマンのステータスやブランドも予期せぬ方向に……(写真は、イメージ)
  • 誰もが予期しなかったコロナ禍で、タワマンのステータスやブランドも予期せぬ方向に……(写真は、イメージ)

「3密」が回避できない?

   災害時の停電でエレベーターが止まり、高層階に住むことの不便さが指摘されたタワーマンション。そうしことは一時的なことで、復旧すればまた穏やかで優雅な生活を取り戻すことができた。ところが、コロナ禍で明らかになった「弱点」はそうはいかないという。

   弱点が明らかになったのは、緊急事態宣言時を中心として要請された「自粛」による「ステイホーム」でだ。コロナ対策としてなお呼びかけられている3密回避。密閉・密集・密接を避けることは、どの家にも1日中家族が在宅していると、タワマンでは物理的にほぼ不可能なのだ。

   1棟内の戸数は相当あり、住人が多く人口密度が高い。エレベーターが3密状態になりやすく、かといって、乗る人数を制限することは容易ではない。眺望のための窓はハメゴロシになっており換気のための開閉ができないなどが指摘される。

   また、急速の導入が進んだテレワークにも、従来のタワマンは不向きだ。多くの場合、都心部や駅近くなど立地を優先して建設され、間取りには余裕がなく、後から書斎用のスペースを確保することは困難。今後考えられる「ウィズコロナ」の時代では、「通勤圏」は物件選びの条件ではなくなり、広くてゆったり過ごせる住環境が求められるようになるという。

「爆買い」一転、投げ売り懸念も

   コロナ禍で顕在化してきたタワマンのステータスの陰りのもう一つの要因は、中国人投資家の撤退だ。ひと頃騒がれていた中国人投資家が都心部のタワマン上層部を買い占める「タワマン投資ブーム」は、すでに終焉を迎えている。

   中国人が日本の不動産を買うのかというと、中国人が中国国内で不動産を資産として保有できないから。日本には外資による不動産取得の規制がないため、購入は容易だ。

   中国人投資家のあいだで東京での不動産の「爆買い」が始ったのは2012年ごろ。2013年に東京でのオリンピック開催が決まると、物件の値上がりを見込んだタワマン投資ブームに火が付いた。

   ところが新型コロナウイルスの感染拡大が発生し、オリンピックが延期になったこともあり、投資熱は冷却化。また、購入から5年以上経過した不動産は、売却の際に「長期譲渡所得」として税率が下がるが、爆買いブームで購入された物件がその時期を迎え、売却される動きが目立っているという。

   中国の投資家たちが東京の不動産を売却する理由には、譲渡時期による税率の差に加えて、一時に比べて進んだ円高の事情もある。また、少子高齢化による賃貸ニーズの減少、2018年に法整備され民泊規制の厳格化も、売却ステージへの移動を促す材料になった。

   中国人投資家の所有するタワマン物件は上層階が多い。本来であれば価値の高いそうした物件が、次の投資の見込み次第では、その原資の確保のために投げ売りされる可能性がある。そうなると、マンション全体の相場が下がりかねない。

2020年以降、258棟が完成見込み

   2019年に全国で完成した超高層マンション(20階建て以上)は63棟、1万7039戸。その主な内訳は首都圏28棟・8547戸、近畿圏18棟・5239戸、その他17棟・3253戸。2020年以降では、258棟・10万3100戸の超高層マンションが順次完成予定見込み。こちらの内訳は、首都圏177棟・8万1525戸と、圧倒的に首都圏の竣工数が多い。

   今後の超高層マンションは東京都心部や湾岸エリアを中心に大規模開発や複合再開発プロジェクトなどが数多く控えている。しかし、コロナ禍の影響で多くの案件で工期が延び、完成遅れが懸念されているという。「今後、地価がどうなっていくのか。タワーマンションの資産価値がどうなっていくのか、未来は誰にも分かりません。しかし、最悪の事態は想定すべきだと考えます」と著者。

   本書では、タワマンにどんな不安要素があるのか、そのリスクと暴落前に売り抜けるにはどうしたらいいかを詳しく解説している。

   著者の小島拓さんは、大学卒業後、不動産投資会社勤務を経て2012年に独立し起業。「悪意ある業者や無知な個人投資家によって不動産投資が不正のオンパレードになり業界全体のイメージが悪化していることに問題意識を感じ」著書やウェブで情報を発信している。

   著書に「不動産会社が書けない『有名大家』の裏話」「融資地獄」(いずれも幻冬舎)。近年はタワーマンションオーナーの多くが物件購入後に後悔している現状を憂い、豊富な物件取引実績に基づいた知見から、購入していい物件の見分け方や賃貸経営のコツ、今後の市場推測を踏まえた売り抜けのノウハウを指南している。

「『タワマン』ブランドの崩壊 価格暴落とゴーストタウン化が始まる! 」
小島拓著
小学館
税別1200円