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究極の後出しジャンケン!? 楽天の携帯料金「0円」サプライズにエールと不安が交錯(1)

   これが極めつけの「最後の後出しジャンケン!」というべきか――。

   携帯電話料金値下げ戦争で、大手3社、格安スマホが次々と新料金プランを発表するなか、「第4のキャリア」を目指す楽天モバイルが2021年1月29日、「0円」もあるという究極の新料金プランを発表した。

   毎月のデータの使用量に応じて、段階的に価格を下げていくという内容。

   ネットでは、

「やっと魅力的な価格が出てきた」

と称賛の声が多いが、

「楽天は最大の弱点を解決するのが先だよ」

という指摘も多い。それはいったい何か?

  • 「0円勝負」に出た楽天モバイルの三木谷浩史会長(同社公式サイトより)
    「0円勝負」に出た楽天モバイルの三木谷浩史会長(同社公式サイトより)
  • 「0円勝負」に出た楽天モバイルの三木谷浩史会長(同社公式サイトより)

マー君が楽天に復帰した日に合わせたサプライズ

   楽天モバイルは2021年1月29日、データ使用量20GB(ギガバイト)までで月額1980円の新プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」を発表した。サービスは4月1日からスタートする。

   20GB(ギガバイト)で月額2980円(税別)という基本設定は、NTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクの大手3社と同じだが、月額料金はデータ使用量に応じて変動するのが特徴で、「0円」になる場合もある思い切ったプランだ。

   同社の公式サイトによると、内容はこうだ(金額は税別)。

(1)20GBを超えた場合はデータ使用量を無制限として、引き続き月額2980円とする。
(2)データ使用量が3GB以上20GB未満までは月額1980円に引き下げる。
(3)1GB以上3GB未満までは月額980円にする。
(4)ゼロから1GB未満までは無料(0円)とする。
楽天モバイルの新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」(同社公式サイトより)
楽天モバイルの新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」(同社公式サイトより)

   ただし、いずれも端末代、オプション料、通話料などは別費用。さらに、これまで300万人までの契約を対象にした料金が1年間無料となるキャンペーンは継続する。また、SIM再発行の手数料やMNP(電話番号そのままで携帯電話会社を乗り換えるサービス)手数料なども0円となる「ZERO宣言」を出した。

   楽天モバイルの三木谷浩史会長は、記者会見で、

「当初はたくさん使う人に向けて、シンプルな形で、通話込みで2980円ということを目標にした。この1年、すごく使うけど、あまり使っていない、関西弁で言うと『むっちゃ高い』という人がたくさんいる。でも5G時代で、データの使用量は増えている。全国民に最適なワンプランを提供することが楽天モバイルのミッション、心意気です」

と語った。

   昨年(2020年)2月から今年1月にかけて、携帯大手3社のNTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクが「5分間かけ放題」の条件のもと、20GBで月額2980円(税別)という横並びの料金プランを出してきた。

   楽天は昨年4月、「第4のキャリア」を目指して本格参入。当時としては破格のデータ無制限で2980円の料金で提示、「最安」をうたったが、すっかり色あせてしまった感があり、どう出るか注目されてきた。

   それがちょうど、プロ野球の楽天が米大リーグのヤンキースからFA(フリーエージェント)となっていた田中将大(32)の復帰を発表し、世間を驚かせたタイミングを狙って「0円」というサプライズを発表した形だ。

ソフトバンクとの「基地局情報漏洩」事件も影を落とす

「Rakuten UN-LIMIT VI」の料金表(同社公式サイトより)
「Rakuten UN-LIMIT VI」の料金表(同社公式サイトより)

   ただ、「無料」は今回が初めてではない。楽天は、今回の新プランの前身の「Rakuten UN-LIMIT V」プランで無料キャンペーンを続けている。300万人が契約するまで無料にするとし、昨年中に300万人突破を目指したが、現在、約200万人前後とみられている。

   楽天モバイルが、「0円」作戦に打って出ているのは、基地局の整備が遅れてカバーするエリアが広がらないことがネックになり、苦戦しているからだ。

   参入直後から、

「つながりが悪く、話が聞き取れない」

などの苦情が多く出ていた。

   三木谷浩史会長は昨年8月の決算説明会で「基地局整備を5年前倒しにする」と宣言するありさまだった。携帯電話関連専門のニュースサイト「ケイタイWatch」(2020年8月11日付)「三木谷氏、楽天モバイルの基地局整備を『来夏には5年、前倒し』」によると、基地局不足はこんな状態だった。

「楽天モバイル会長兼CEOである三木谷浩史氏は、基地局整備計画について、来夏(2021年)には5年分、前倒しできる見通しであることを明らかにした。『2021年3月末までに人口カバー率70%達成』を紹介。基地局建設自体は1万か所以上でおおむね完成しているものの、NTTとの回線接続を待つ場所が多いとのことで、6月末時点で5739局となっている。三木谷氏は『一番難しい都市部を乗り切ったのは大きいかなと思う。当初、建設が遅れているとご心配をおかけした件だが、爆発的なスピードで進んでいる』と胸を張った」

ということは、2021年1月現在、まだ30%以上の人口をカバーしていないことになる。

   こうした基地局建設の無理がたたったのか、それとも関係ないのか。今年1月、ソフトバンク(SB)の元社員が楽天モバイルに引き抜かれて転職後、SBの機密情報を楽天に漏洩、警視庁に逮捕される事件が起こった。

   朝日新聞(1月12日付)「SB元社員逮捕、5G情報漏洩か 楽天モバ『誠に遺憾』」が、こう伝える。

「ソフトバンクの高速移動通信方式『5G』サービスに関する秘密情報を社外に持ち出したとして、警視庁は1月12日、元社員を不正競争防止法違反(営業秘密の領得)容疑で逮捕した。元社員は技術職で、情報にアクセスする権限を持っていた。漏出したとされる翌日にライバル社の楽天モバイルに転職しており、同庁が関連を調べている」
「警視庁によると、元社員はソフトバンクでネットワーク構築を担っており、5Gを含む無線基地局の配置情報などを無断で社外に漏出した疑いがある。ソフトバンクは今後、楽天モバイルに漏出情報の利用停止と廃棄を求める訴訟を検討する。一方、楽天モバイルは12日、山田善久社長名で『現時点までに従業員が前職で得た営業情報を弊社業務に利用した事実は確認されておりません。捜査に全面的に協力するとともに、厳正に対処して参ります』とするコメントを出した」

   楽天モバイルは、基地局問題では、とんだミソを付けたうえでの今回の発表だったのだ。

(福田和郎)