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2020年の出版物、減少幅縮まる やっぱり「鬼滅の刃」は凄かった!

   2020年(1~12月期)の紙の出版物(書籍と雑誌の合計)における推定販売金額が、1兆2237億円だったことが、出版科学研究所(東京都新宿区)の調査でわかった。2021年1月25日の発表。前年(19年)と比べて1.0%減ったものの、19年の減少幅(4.3%減)よりも3.3ポイント縮小した。

   一方、紙と電子書籍を合算した出版物の推定販売金額は、1兆6168億円。紙の出版物の減少幅が縮小したうえ、電子書籍が好調に伸びたことで前年比4.8%増のプラス成長となった=下のグラフ参照

  • 2020年、出版界もやっぱり「鬼滅の刃」様々だった(写真は、「鬼滅の刃」公式サイトから)
    2020年、出版界もやっぱり「鬼滅の刃」様々だった(写真は、「鬼滅の刃」公式サイトから)
  • 2020年、出版界もやっぱり「鬼滅の刃」様々だった(写真は、「鬼滅の刃」公式サイトから)

コミックスがケタ違いの伸び

   出版科学研究所によると、紙の出版物は2004年に前年比0.7%増えて以降、「前年比マイナス」で推移しているという。近年、スマートフォンの登場でインターネットやSNSが幅広く使われるようになり、「紙」から電子書籍へと流れが変わった影響が大きい。

   ダウントレンドは変わらないものの、2020年は1.0%減に踏みとどまった。これは、05年以降の減少幅では、最も小さかった。

   同研究所は、

「雑誌はコミックス(単行本)が前年比で約24%増の大幅増となり、月刊誌(コミックス、ムック含む)が0.5%増と1997年以来の前年超えとなりました。コミックスは『鬼滅の刃』のケタ違いの伸びに加え、そのほかのヒット作品に恵まれたことで2割超の伸びを示しました」

と、人気漫画「鬼滅の刃」効果のスゴさに驚いている。

「結果的には、16年連続の減少でしたが、昨年末に最終巻が発売された『鬼滅の刃』効果などで、減少幅が縮小したと考えています。加えて、コロナ禍で『巣ごもり』生活だった方が多くなったことで、需要減に若干の歯止めがかかったと思います」

   2020年の売り上げについて、そう分析している。

   コロナ禍での生活様式の大きな変化(外出自粛による在宅時間の増加、娯楽の制限など)で読書の需要が高まったことと、コミックス「鬼滅の刃」(集英社)の爆発的ヒット。さらに、「鬼滅の刃」は書籍のノベライズ作品や関連付録を添付した雑誌など、その販売効果が出版物全体に波及したことが、2020年の市場を大きく底上げしたとしている。

有名作家が「デジタル」に切り替えたことも要因

   一方、電子書籍市場も好調だった。出版市場全体における電子書籍のシェアは24.3%となり、出版科学研究所が統計を取り始めてから、初めて2割を超えた。

   同研究所は、

「紙の出版物が前年から1.0%減と小幅なマイナスにとどまり、電子出版市場が28.0%増と大きく伸長したことで、出版市場全体では2年連続で増えました。電子出版のシェア(24.3%)は前年の19.9%から4.4ポイント上昇して、3割近くの規模にまで拡大しています」

という。

   電子書籍が好調な要因について、出版科学研究所の担当者は、有名作家が書籍から電子出版にシフトしたところも大きいとみている。

「2020年には、推理小説やミステリーなどの大御所である東野圭吾氏が電子書籍を解禁しました。このほか村上春樹氏、宮部みゆき氏、百田尚樹氏、湊かなえ氏といった日本を代表する作家も、過去の解禁作品に加え、続々と電子書籍化を進めているところが、現在のニーズにマッチしているのでは」

と話している。

   「紙の本離れ」はあるものの、世間でいわれているような「活字離れ」ではなく、電子書籍になっても、おもしろい作品は読み続けられていくということのようだ。