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2020年の「休廃業」は過去最多 じつはコロナ禍が最大要因ではなかった?

   コロナ禍の2020年(1~12月)に、全国で「休廃業・解散した企業」は4万9698件で、これまで最多だった2018年の4万6724件を抜いて過去最多を記録した=表1参照。東京商工リサーチが2021年1月18日に発表した。前年と比べて14.6%増えた。

   一方で同年の「企業倒産」は、コロナ禍での政府や自治体、金融機関の資金繰り支援策が奏功し、7773件(前年比7.2%減)と2年ぶりに減少。対照的な結果となった。

  • 2020年の休業・廃業は過去最多だった
    2020年の休業・廃業は過去最多だった
  • 2020年の休業・廃業は過去最多だった

「日本再興戦略」のフォローのなさが要因

   2020年はコロナ禍で、緊急事態宣言の発出やそれに伴う外出や移動の自粛、休業要請などで経済活動が大幅に制限され、企業の経営は厳しくなった。休業や廃業を選ばざるをえなかった経営者は少なくなかったが、東京商工リサーチの担当者は、「コロナは2次的要素でしょう」と話す。

   理由を聞くと、

「2013年に、政府が経済政策として『日本再興戦略』を掲げました。これは『新規企業が創業しやすい環境を作って、日本経済のGDP(国内総生産)を底上げしようと考えた施策でした」

と、切り出した。国内の「開廃業率」を上げることで、日本経済の新陳代謝を活性化していこうという施策だが、担当者はこう続ける。

「戦略は良かったのですが、その後のフォローが良くなかったんだと思います。当初は『新規参入の企業に寄り添いながらやる』とは言っていたものの、果たしてそれが十分だったのか......。そこに追い討ちをかけたのがコロナ禍だと考えています」

   つまり、コロナ禍は2次的要因で、休廃業企業の「芽」は、それ以前からあったというのが、東京商工リサーチの分析だ。

(表1)過去5年の「休廃業・解散、倒産の推移」
(表1)過去5年の「休廃業・解散、倒産の推移」

社歴の浅い企業の「休廃業」が目立つ

   このデータを裏付けるように、「休廃業企業」を業歴別で比較すると、「10年以上20年未満」が21.6%で最多だった。次いで「20年以上30年未満」が「15.5%」。逆に「100年以上」という長寿企業は0.03%にとどまった。

   「業歴20年」未満は49.4%で、前年の48.2%より1.2ポイント増加。100年以上の比率が減少し、業歴の浅い企業の比率が相対的に高まっている。このため、開業支援だけでなく、スタートアップ間もない企業への支援強化も必要になっているようだ。

   一方、「休廃業」した企業の代表者の年齢別(判明分)をみると、70代が最多で41.7%だった。次いで、60代の24.5%、80代以上の17.9%と続き、60代以上が84.2%を占めた。 60代の構成比は前年比3.0ポイント減少したが、60歳以上の構成比が前年より0.7ポイント増加した=下表参照

   担当者は、

「高齢者の休廃業は、ある意味で『国全体の病み』とも言える」

と分析。引き続き、深刻な後継者不足の状況に変わりはない。

   ただ、承継支援への取り組み強化もあり、60代の事業承継が進んでいる。その半面、経営者が70歳以上の企業への支援が行き届かず、効果に差が生じている可能性がある。

   産業別でみると、コロナ禍の影響はくっきり。最も多かったのは飲食業や宿泊業、非営利的団体などを含むサービス業他の1万5624件で、前年比17.9%増えた。全体の約3割を占めた。

   また、休廃業・解散した企業の従業員数(判明分)は、12万6550人で前年比26.4%増。2年ぶりに増加した。事業譲渡に伴う休廃業や解散もあり、すべての従業員が失業したわけではないが、休廃業・解散で12万人超が勤務先の変更や離職を余儀なくされたことになる。

   なお調査は、東京商工リサーチが保有する企業データベースから「休廃業・解散」が判明した企業を抽出した。