J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

緊急事態宣言延長、頼みの東京五輪が混迷 ワクチン接種も混乱? 菅政権「背水の1か月」(1)

   菅義偉首相が10都府県を対象に、緊急事態宣言の1か月延長を決めた。

   しかし、新型コロナウイルス感染拡大が改善し、3月7日までに宣言を解除できなければ、「菅おろし」は避けられない状況だ。

   そのためには、「国民の協力」「ワクチン接種」が必須条件だが、お先真っ暗の状態だという。

   追い込まれた菅政権の「背水の1か月」が始まった。

  • 緊急事態宣言の延長を発表した菅義偉首相
    緊急事態宣言の延長を発表した菅義偉首相
  • 緊急事態宣言の延長を発表した菅義偉首相

自民幹部「東京五輪開けなければ首相交代だな」

   菅義偉首相にとって、緊急事態宣言の延長は「背水の1か月」になりそうだ。菅首相は1月7日に緊急事態宣言を出した際の記者会見で、隣にいた政府対策会議分科会の尾身茂会長が、

「1か月で宣言を解除するのは至難の業だ」

と語ったにも関わらず、

「1か月後に必ず事態を改善させ、解除してみせる」

と豪語したのだった。

   結局、延長に追い込まれる羽目になった2月2日。参院議院運営委員会で野党議員からその発言の総括を問われると、菅首相は、

「結果としてさらに1か月延ばさせていただくことは大変申し訳なく思っています。1か月で(宣言を解除)できなかった責任はすべて私が背負うわけです」

と述べたのだった。これはもし1か月後の3月7日に解除できなければ、「総理大臣の座から降りる」というに等しい。

   そうでなくても菅首相に後がないことを、朝日新聞(2月3日付)「さらに1か月、出口は 宣言延長、乏しい新施策 『これが最後』政権背水」が、こう伝える。

「官邸幹部らは次の1か月が『最後の延長』と口をそろえる。政権中枢が危機感を強めるのは、感染状況の推移が東京五輪・パラリンピックの開催に影響するためだ。3月25日には聖火リレーが始まる。春ごろには観客の受け入れをどうするかの判断も下さなければならない。官邸幹部は『もう1回、宣言を出すことになれば五輪の開催は難しくなる』。自民党関係者は『コロナに負けて五輪ができなければ、首相も交代という流れになりかねない』と語る」
再選を目指すために東京五輪を開催したいバッハIOC会長
再選を目指すために東京五輪を開催したいバッハIOC会長

   その「運命の東京五輪」は、いったいどうなるのか――。緊急事態宣言の再延長で、東京五輪の開催はますます厳しくなった。そんななか、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長は2月2日、自民党本部で開かれた党スポーツ関連部会の合同会議に出席、こう発言した。

「一番大きな問題は、世論がどういうふうに見ているかということだ。新型コロナがどういう形であろうと、私たちは必ずやり抜く。やるかやらないか議論するのではなく、どうやるかだ。困難な時期に日本が五輪をやり遂げたということが、世界に向けた大きなメッセージになる」

と悲壮な決意を述べた。

   毎日新聞(2月3日付)「五輪開催へ正念場」は、次の緊急事態宣言の期限となる3月7日がIOC(国際オリンピック委員会)の総会と重なることが、東京五輪開催の運命に大きな影響を与えるという。

「3月7日からIOCは6日間の日程で理事会、総会を開く。昨年3月に延期の決断をしたのは聖火リレーが始める2日前だった。今年も最終準備に入る前に重要な決断をする可能性がある」

   その理由は、この総会でバッハ会長が再選を目指すからだ。バッハ氏は総会の場で「安全で安心な大会を開催する根拠」の説明を求められる。「人類が新型コロナに打ち勝った証し」などと、これまでメディアに語ってきた精神論は、現実主義者の集まりである理事会・総会では通用しない。それだけに、3月上旬の日本の感染状況が命運を握る。

   毎日新聞がこう結ぶ。

「組織委幹部は首都圏の感染者が減少傾向なことから『よほどのことがない限り、中止という選択肢はない。最悪、無観客なら準備が軽減され、判断を先延ばしできる』と強気だが、ある政府関係者は『仮に緊急事態宣言を再延長するような事態なら中止論が高まり、もう終わりだ』とつぶやく」

「銀座クラブ」追及が甘い野党はブーメランが怖い

東京五輪が開けないと菅首相はアウトだが(新国立競技場)
東京五輪が開けないと菅首相はアウトだが(新国立競技場)

   さて、コロナの感染状況の改善には国民の協力が欠かせない。しかし、最悪の事態が飛び込んで来た。国民に自粛を迫る緊急事態宣言下で、与党・自民党の松本純、大塚高司、田野瀬太道の3衆院議員と、公明党の遠山清彦衆院議員が銀座のクラブで豪遊していたのである。

   朝日新聞(2月3日付)「深夜クラブ問題『国民の協力得られるのか』首相、批判受け陳謝」が国会で、みじめに頭を下げる菅首相の姿をこう報じる。

「立憲民主党の青柳陽一郎氏は『多くの国民が、怒りを越えて呆れてしまっている』、また共産党の塩川鉄也氏は、首相自身が昨年12月に二階俊博幹事長ら8人と銀座で会食したことを踏まえ、『自身の会食への処分はなく、おわびだけだ』と迫った。首相は『緊急事態宣言ではなく、当時は午後10時まで許された』と弁明する一方、『大いに反省している』と陳謝した」

   ところで、「銀座クラブ問題」では公明党は遠山清彦氏を議員辞職させたが、自民党は3人の衆院議員を離党処分にしただけだった。なぜ甘い処分になったのか。読売新聞(2月3日付)「首相『夜の銀座』謝罪 自民、離党で幕引き狙う」がこう明かしている。

「(3議員の不祥事には)自民党内でも『論外だ』(二階幹事長)と厳しい声が多いが、議員辞職は避けたいのが本音だ。3人が辞職すれば、4月25日に補選が行われる。苦戦が予想される参院長野選挙区と、与党が不戦敗を選んだ衆院北海道2区の両補選と重なれば、『政権へのダメージがさらに大きくなる』(党関係者)との懸念があるからだ」

というわけだ。

   そして共産党を除き、野党側からも特に3人に辞職を求める動きがなかったことを、読売新聞はこう説明する。

「一方で、野党側でも議員辞職を求める雰囲気は高まっていない。『野党議員にも同様の問題が発覚した時、ブーメランとして返ってくるのが心配だ』(立憲民主党中堅)との声も漏れてくる」

というのだ。野党にも銀座クラブの常連が少なくないということか。

(福田和郎)